さっき東京の友人(といってももうすぐ70歳になる人)から電話がかかってきて、挨拶もそこそこに沢尻エリカの話になった。

前々から私が「沢尻エリカが好き」と言っていたから電話してきたらしく、「何で彼女は麻薬なんかやったのかね」と訊いてきた。

「別に麻薬くらいいいんじゃないですか?」と私は答えた。

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だって殺人や強盗はいつの時代、どの国でも重罪だけれど、薬物は時代や国によって違う。戦中の日本では覚醒剤が合法的に作られていた。戦艦や戦闘機を毎日徹夜で作らせるために軍部が覚醒剤を量産して労働者に打ちまくっていた。敗戦して大量の在庫を一掃するために、「この薬物はヤバい」という認識がありながら「ヒロポン」と称して合法的に売り続けた。在庫がなくなると途端に違法化した。

国の都合で変わるようなものは「悪」でも「罪」でもないと思う。そりゃ、ま、大麻やヘロイン、コカインなどの植物由来の薬物と違って覚醒剤は合成薬物なので精神錯乱して誰かを殺す可能性があるからダメだという意見には反対しません。が、別に麻薬くらいいいじゃないか、というのが私のスタンス。

その人も同じ考えをもってるはずだし、そうじゃなかったら友だち付き合いなんかしないのにおかしいなと思ったら、

「いや、そうじゃないんだ。そういう倫理的なことはどうでもいい。いまの時代、麻薬やってるのがばれたら女優業は完全アウトでしょ。それがわかっていながらなぜ渋谷のクラブなんてすぐ目のつくところで買ってたんだろう」

なるほど、そういうことか。それは私も同感。『パッチギ!』の井筒和幸監督も「アホンダラ!」と言ってましたが、あの人も同じでしょう。別に倫理的にダメだと言ってるんじゃなくて、女優としてありあまる才がありながらなぜばれたら即アウトの麻薬に手を染めたのか、と。しかもすぐばれるやり方で。

私も「もう沢尻エリカを映画やテレビで見ることはできないのか」と暗澹たる気持ちになったし。

でも、友人は別にファンではないので残念という気持ちから言っているのではなく、「なぜ女優が続けられなくなるようなことをやっていたのか」という素朴な疑問とのことだった。


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友人は言った。

「沢尻エリカは女優を辞めたかったんじゃないか。そのためのきっかけがほしかったんじゃないか」

「それは違うでしょう。それなら『別に』で何年か干されたときに辞めてるはずだし」
「いや、でもあれは計画的犯行じゃないじゃない。虫の居所が悪くてポロっと言っちゃっただけでしょ。そういうのがきっかけで辞めるっていうのはエリカ様はできなかったんじゃないか。自分の意思でで辞めたかったんじゃないかと」

なるほど。一理ある。一理あると頭ではわかっても体が拒絶していた。腑に落ちないというやつ。


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そういえば、沢尻エリカが好きだというと、決まって「あの『別に』はいいの?」と訊かれる。

そりゃ褒められたことではないし、映画関係者や事務所の社長からこっぴどく叱られてしかるべきでしょう。しかし、日本中が寄ってたかって叩くことではない。

だから別に「別に」はいいではないか、というのが私のこの12年間変わらないスタンスだけど、エリカ様はやはり「別に」程度のことで叩かれまくる日本の芸能界に嫌気が差していたのは事実だと思う。

でも、それって芸能界にかぎらない。いまはどんな業界でも品行方正であることが尊ばれる。昔のようにアウトローが喝采を浴びるなんてことはなくなった。

沢尻エリカはそれに反旗を翻したかったんじゃないか。

「いつか絶対ばれることを承知のうえでやっていたというのには同意します。ただ、理由は女優を辞めるきっかけがほしくて、ではないと思う。やってはいけないこと、イリーガルなことに手を染めていたかったんじゃないですか。それが自分の生き方だという」

今朝読んだ記事で、『ヘルタースケルター』に出演したとき、週刊文春で「大麻疑惑」と書かれたらしく、近しい友人がやめるよういくら説得しても「これが私の生き方だから」と固辞したとか。警察の家宅捜索でも潔く「ここにあります」と自分から教えてたらしいし。悪あがきをしないところはさすが肝が据わっている。

それもあってそう言ったんですが、友人は、

「そうか、君は麻薬を『原因』だと捉えるわけね。俺は『結果』だと思うんだけどな」

うーん、ここはちょいとわからなかった。「男が長話をするのもナンだから」と友人は電話を切ったのでそこで話は終わったけれど、「原因」「結果」という言葉は違うんじゃないか。

「手段」と「目的」でしょう。

友人は、麻薬を手段として女優を辞めるという目的を達成した、と主張。

逆に、麻薬そのものが目的だというのが私の主張。やってはいけないことにいつまで手を染め続けられるか、そのゲームを楽しんでいたような気がする。


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「桜を見る会」の目くらましのための逮捕。それはそうでしょう。他にも逮捕候補者はいるだろうに、嫌われ者の沢尻エリカというとっておきの切り札をもってきたのは、「桜を見る会」が相当ヤバい案件であることの何よりの証左に違いない。でも、そういうことが一切話題に出ない「沢尻エリカはなぜ薬物に手を染めたのか」という会話。とても有意義だった。


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erikaー沢尻エリカ写真集
橋本 雅司
学習研究社
2004-04-08



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