MBSの映像’19『壊憲 ~この国の憲法は、どこへ~』をとても興味深く見ました。

安倍自民党が推し進める改憲運動を「壊憲」と断じる慶応大学名誉教授・小林節さんを主軸にしたドキュメンタリー。やはり「映像’19」は力のある番組が多いですね。


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憲法遵守義務は誰にある?
小林節さんは恥ずかしながら何となく名前を聞いたことがある程度でしたが、なかなか骨のある人だと思いました。もともと改憲派だったらしいですが、自民党の改憲草案を見て護憲派に鞍替え。転向のそしりを恐れない。

知らない人が多いですが、「自白に証拠にならない」ことは憲法に明記されています。なぜ刑事訴訟法とかでなく憲法なのか。それは憲法と法律が権力者と一般大衆のどちらに軸足を置いているかが違うからです。

憲法は何よりも権力者の暴走を防ぐのが目的で制定され、一般大衆を守るのがその役目。

対して、その憲法の枠組みの中で権力者が一般大衆を縛るのが個々の法律(何々の罪を犯したら刑務所に入らねばならないなど)。

なので「自白は証拠にならない」(現実の司法はそうなっていませんが)というのは憲法に明記されていないとおかしいわけです。

小林節さんが護憲派に鞍替えしたのは、自民党の改憲草案が「国民に憲法遵守義務を謳っている」から。権力者の暴走を防ぐのが憲法なのだから本来は政治家や官僚に憲法遵守義務があるのに、国民にその義務を負わせる。それはおかしいだろう、と。


国民投票時はCM規制なし⁉
これも恥ずかしながら知らなかったんですが、選挙のときは規制があるCMが、国民投票ではまったく制限なしだそうです。

だから、改憲派が物量作戦でCMなどを投下するのは目に見えている。立憲民主党の枝野幹事長も危機感を抱いているらしく、昨日こんな記事がすでに出ているそうです。いま知りました。⇒枝野氏「CM規制優先を!」

番組では、例えばAKB48などの人気グループが「古い時代よ、さようなら。新しい時代の風が吹く」みたいな歌詞を歌えば改憲派に風が吹く。憲法とか改憲とか9条とかそんな言葉を出さなくとも自分たちに有利な風を吹かせることができることに危機感を滲ませていました。


アダルトビデオ製作者たちへの講習会
小林節さんがとても素晴らしいと思ったのは、アダルトビデオ製作者たちを招いて表現規制と闘おうという集会を開いていることですね。

「国民の自由を規制するには、まずエロ規制というのが一番やりやすい。エロ規制から始まって、いつの間にかすべてを規制されるんです」

確かに、エロ規制となると大っぴらに反対しにくい。そういうところから入ってくるだろうから先手を打ってAV製作者たちに講習会を開くというのは蒙を啓かれるというか、なるほど、本当に偉い学者というのはそういうところもちゃんとケアするんだな、と感心しきりでした。

とにかく、改憲そのものは否定しませんが、やはり憲法遵守義務を国民に負わせる安倍自民党憲法草案には真っ向から反対せねば、と決意を新たにした次第です。


憲法の無意識 (岩波新書)
柄谷 行人
岩波書店
2016-04-21



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