この映画には「逆境」がありませんよね。
宣伝惹句には「職なし、家なし、彼氏なし」とあって、確かにそういうダメダメな設定で始まりますが、すぐに解決していまいますから。

偶然にも旧友の男と出会って、彼の酒場で働くことになり、住む家もある。テレビは男が運び込んでくれるし、着の身着のままのはずなのにパソコンはもっていて無料Wi-Fiもある。(どこまで都合ええねん)

彼氏は最後までできないものの、出会ってすぐにチューしかけてくる男と中盤に一夜を共にしますから、その方面でも不満はなさそう。

つまり、惹句にある逆境はすぐに順境になってしまうんですね。で、次なる逆境がこちら。


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ソウルに突如出現した怪獣が何と主人公とシンクロしていることが判明。なぜか彼女が動いたとおりに怪獣も動き、怪獣が攻撃されると彼女の同部位が痛む、と。これが第2の逆境。

多数の人を殺していると罪の意識にさいなまれる主人公。この逆境をどのように順境にするのかと思ったら・・・

何と、何も解決しないんですね。

なぜ彼女が怪獣とシンクロしているのか何の説明もありません。映画なんだから大ボラでいいから何らかの説明をしないと見てるこちらは納得できません。しかも、彼女と怪獣のシンクロ率100%も最後までそのまんま。


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実は、「第3の逆境」がありました。

彼氏に捨てられた直後に拾ってくれた旧友の男は、こちらは同じソウルに出現したロボットとシンクロしていて、「やっと主役の座が回ってきた」とやりたい放題する始末。なかなかのナイスガイかと思っていたら、とんでもないバッドガイだったという展開自体は悪くないものの、物語全体からすると、この「第3の逆境を解決するために第2に逆境が利用されている」だけなのです。

しかも、彼女を捨てたはずの彼氏が連れ戻しに来たりとか、いったいこの映画は何をやりたいのか少しも見えてきません。


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そういえば、冒頭にも肩すかしがありました。

主人公がパソコンをもっていること自体がよくないと思うのですが(パソコンは彼氏のもので、まとめられた荷物の中にネットに接続できるものが何もないほうがよかったと思います)それはともかく、ネット動画でソウルに怪獣出現を知った彼女がのちのバッドガイに電話をすると「それって9時間前の話だろ」と言われますよね。

あそこまで主人公に感情移入して見ていたこちらとしては冷や水を浴びせられたように興ざめしました。

やはり、男が拾ってくれたとき、車のラジオで「ソウルで怪獣出現!」のニュースを聞くべきだと思うんです。オーソン・ウェルズの「火星人襲来」を引き合いに出して「これはラジオドラマよ」と笑っていたら、酒場に到着してテレビを見るとほんとに出現していた! えええーーーーーーーーっ!!

というように、主人公や作中人物みんなと一緒に驚きたかった。主人公とバッドガイと観客、この三者の情報量を同じにしておくことがこの映画の場合は必要だったんじゃないかと。

だから、私が言う「シンクロ率ゼロ」というのは、決して彼女と怪獣のシンクロ率のことではなく、私とこの映画とのシンクロ率のことです。

少しも乗れなかった。期待していたのにとても残念です。





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