昔、レンタルビデオ屋が隆盛になって間もない頃、映画館へ行く私に向けて友人が嘲りをこめて言いました。

「ビデオで見たって話は一緒なのに」


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はあああああああ!!!!!??????? ってな感じでしたねぇ、あのときはほんとに。

ビデオで見ても内容が一緒? チャンチャラおかしいですよ。

私は彼に説明しました。
大画面大音響で見たほうが楽しいとか、暗闇で映像と向かい合ったほうが印象が強いとか言ったところで彼には通じなかったでしょうから、最大にして最強の理由を突きつけてやりました。

「あるシーンで主人公が呆然と佇みながらハラハラと涙を流してその涙が物語の決定的な分岐点になるとする。アップならテレビ画面でも涙は見えるだろうが、もし引いた画だったら涙を流したと把握できない。するとどうなるか。同じ物語なのに理解できていないことになる。映画館で見た人と同じものを見たことにはならないのさ」

友人は言葉に詰まったままでした。

画質さえきれいならいい?
家のテレビのほうが気楽に見れていい?


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あなたがいままでDVDで見た映画で物語をちゃんと把握できてない映画が何本か必ずあるはずですよ。(それは私にも言えることではありますがね)


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加藤 幹郎
中央公論新社
2006-07-01




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