昨日のクローズアップ現代プラス「電通 働き方改革」を見て暗澹たる気持ちになりました。
高橋まつりさんの悲劇を受けての働き方改革の特集でしたが、社長のインタビューを聞いて、ダメだこりゃ、と思いました。
「残業を少なくしたいがそのために生産性が下がることはあってはならない。働き方改革を推し進めながら同時に業務を拡大していくのが大事」みたいなことを言ってましたが、はたしてそんなことが可能なのでしょうか?
戦後日本経済はずっと右肩上がりで推移してきましたが、このところその上がり方も鈍化し、ゼロ成長とかマイナス成長とかがあたかも絶対悪みたいに言われています。しかしながら、別にゼロやマイナスで何が悪いの?
だって人口が減少してるし、少子高齢化は進む一方だし、成長なんて無理でしょう。
内田樹先生は「イギリスは世界帝国から小さな島国へのソフトランディングに成功した世界史上稀有な例」と戦後イギリス政府のやり方を絶賛していますが、日本も「経済大国から極東の小さな島国」に縮小していったほうがいいと思います。
「一企業の問題ではない」という言葉がありましたが、電通が変わるよりも前に、まず経済成長という幻想に取りつかれた日本政府が変わらなきゃ、ということもあるのではないでしょうか。
コメンテーターの人が、「リーディングカンパニーとして」と言ってましたが、確かにそれはそうですが、リーディングカンパニーをリードする政府が考え方を変えないと結局何も変わらない。
内田樹先生や柄谷行人氏が言うような「贈与」を主体にした経済体制に変わることができれば先は明るいと思いますが、はたして可能かどうか。
さて、働き方改革が失敗に終わると思うもうひとつのもっと大きな理由。
「顧客のためなら徹夜をいとわないのが当たり前だと思っていた」という36歳の男性従業員がいました。
「机の上で仮眠していた」とか「徹夜明けに築地で食べる海鮮丼がうまかった」とか、まるで社畜である自分が大好きみたいな、完全に自分自身に陶酔している語り方でしたが、こういう人、日本にはどこにでもいますよね。
「寝てない自慢」や「サービス残業自慢」する人たち。アホかいなと思ってしまいますが、彼らはどう考えてもマゾヒストです。
「顧客が急に納期を早めてくることがあって、その対応のためには深夜まで残業せざるをえない」という場面があって、これは顧客の立場からするとサディズムですよね。
電通ではありませんが、他のネット広告業を営む会社では21時に消灯と決めたのに従業員の強い希望で取りやめになったと。メール1通で簡単に発注できるから、受注する側は対応に追われまくる。受注側のマゾヒズムと発注側のサディズムのコラボといって過言じゃないと思います。
日本人って「お客様は神様です」を金科玉条のように言いたがりますが、あれってマゾヒズムの発露ですよね。客からやいのやいの「言われたい」みたいなのです。そして自分が客になったときはあれこれ無理難題を押しつける。でも、それって受注側のときに無理難題を押しつけられたいから発注側にいるとき逆の言動をするような気がしてなりません。逆じゃなくて。
つまり、客から好き勝手言われるストレスを発散するために客になったとき好き勝手言うんじゃなくて、好き勝手言われたいために好き勝手言う。マゾヒズムとしての快感をマックスにもっていくためのサディズムという気がするのです。
「一企業の問題ではない」というのは、一人の日本人のうちに「客」にまつわるマゾヒズムとサディズムが混在しているという人間の心性のことだと思います。(それは電通というひとつの企業体が、顧客に対してはマゾヒストで下請会社に対してはサディストというのと完全に相似形です)
この日本人特有の心性を根本から変えないかぎり何も変わらない気がします。
「マゾヒズムのためのサディズム」を演じているわけだから、まず、自分が客のときにわがまま言うのをやめるのが成功への第一歩じゃないでしょうか。
休日にお出かけしたら、どこの店でも丁寧な言葉遣いをして、店員が無理しようとしたらこちらから遠慮する。
働き方改革は、まず何よりも「消費者としてのあり方改革」でなければ、というのが私の主張です。
だから企業体としては、残業時間を減らすとか小手先の手を弄さずに、下請会社に偉そうな物言いをするのをやめることから始めるのがいいように思うのです。
高橋まつりさんの悲劇を受けての働き方改革の特集でしたが、社長のインタビューを聞いて、ダメだこりゃ、と思いました。
「残業を少なくしたいがそのために生産性が下がることはあってはならない。働き方改革を推し進めながら同時に業務を拡大していくのが大事」みたいなことを言ってましたが、はたしてそんなことが可能なのでしょうか?
戦後日本経済はずっと右肩上がりで推移してきましたが、このところその上がり方も鈍化し、ゼロ成長とかマイナス成長とかがあたかも絶対悪みたいに言われています。しかしながら、別にゼロやマイナスで何が悪いの?
だって人口が減少してるし、少子高齢化は進む一方だし、成長なんて無理でしょう。
内田樹先生は「イギリスは世界帝国から小さな島国へのソフトランディングに成功した世界史上稀有な例」と戦後イギリス政府のやり方を絶賛していますが、日本も「経済大国から極東の小さな島国」に縮小していったほうがいいと思います。
「一企業の問題ではない」という言葉がありましたが、電通が変わるよりも前に、まず経済成長という幻想に取りつかれた日本政府が変わらなきゃ、ということもあるのではないでしょうか。
コメンテーターの人が、「リーディングカンパニーとして」と言ってましたが、確かにそれはそうですが、リーディングカンパニーをリードする政府が考え方を変えないと結局何も変わらない。
内田樹先生や柄谷行人氏が言うような「贈与」を主体にした経済体制に変わることができれば先は明るいと思いますが、はたして可能かどうか。
さて、働き方改革が失敗に終わると思うもうひとつのもっと大きな理由。
「顧客のためなら徹夜をいとわないのが当たり前だと思っていた」という36歳の男性従業員がいました。
「机の上で仮眠していた」とか「徹夜明けに築地で食べる海鮮丼がうまかった」とか、まるで社畜である自分が大好きみたいな、完全に自分自身に陶酔している語り方でしたが、こういう人、日本にはどこにでもいますよね。
「寝てない自慢」や「サービス残業自慢」する人たち。アホかいなと思ってしまいますが、彼らはどう考えてもマゾヒストです。
「顧客が急に納期を早めてくることがあって、その対応のためには深夜まで残業せざるをえない」という場面があって、これは顧客の立場からするとサディズムですよね。
電通ではありませんが、他のネット広告業を営む会社では21時に消灯と決めたのに従業員の強い希望で取りやめになったと。メール1通で簡単に発注できるから、受注する側は対応に追われまくる。受注側のマゾヒズムと発注側のサディズムのコラボといって過言じゃないと思います。
日本人って「お客様は神様です」を金科玉条のように言いたがりますが、あれってマゾヒズムの発露ですよね。客からやいのやいの「言われたい」みたいなのです。そして自分が客になったときはあれこれ無理難題を押しつける。でも、それって受注側のときに無理難題を押しつけられたいから発注側にいるとき逆の言動をするような気がしてなりません。逆じゃなくて。
つまり、客から好き勝手言われるストレスを発散するために客になったとき好き勝手言うんじゃなくて、好き勝手言われたいために好き勝手言う。マゾヒズムとしての快感をマックスにもっていくためのサディズムという気がするのです。
「一企業の問題ではない」というのは、一人の日本人のうちに「客」にまつわるマゾヒズムとサディズムが混在しているという人間の心性のことだと思います。(それは電通というひとつの企業体が、顧客に対してはマゾヒストで下請会社に対してはサディストというのと完全に相似形です)
この日本人特有の心性を根本から変えないかぎり何も変わらない気がします。
「マゾヒズムのためのサディズム」を演じているわけだから、まず、自分が客のときにわがまま言うのをやめるのが成功への第一歩じゃないでしょうか。
休日にお出かけしたら、どこの店でも丁寧な言葉遣いをして、店員が無理しようとしたらこちらから遠慮する。
働き方改革は、まず何よりも「消費者としてのあり方改革」でなければ、というのが私の主張です。
だから企業体としては、残業時間を減らすとか小手先の手を弄さずに、下請会社に偉そうな物言いをするのをやめることから始めるのがいいように思うのです。
コメント
コメント一覧 (2)
絶対バブルよもう一度、と思っているのでしょうね。
あの狂っていた時代に逆戻りなんて絶対いやですが。
誰も彼もが金を右から左に移すだけで儲けることを考えていたんですから。
二度とごめんですね。
この件に関しては僕もほとんど同じようなことを考えておりました。
安倍総理が経済成長、経済成長と言うたびに一体この国のどこに成長する余地があるのだろうか?とね。
いくら日本がアメリカや中国を追い越したいと思っても土台国力差が根本から違いすぎるのでそれは実質的に不可能に近いでしょう。
おそらく現自民党や大企業のお偉いさんはバブルの旨みが忘れきれずあの頃の日本を取り戻したいと思っているのです。
でも日本お得意の製造業の分野では今や中国や東南アジアというライバルがいますし日本単独でどうこうできる相手ではないでしょう。アメリカを買えるとまで言われたような異様な好景気はあの時代だからできただけのことです。だったら国力に合わせてスケールダウンさせたほうがいいというブレッソンさんの主張には一理あります。
あと日本のお客様精神云々についても全くの同感です。
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