いやぁ~、実に素晴らしい試合でしたね。最後のほうは一方的でしたが、1-3になるまではかなり引き締まった決勝にふさわしい好ゲームでした。

「すべてをねじ伏せてきた攻撃」と「すべてを封じ込めてきた守備」のどちらが勝つか、と言われてきたこの決勝ですが、結果的に前者に軍配が上がりました。

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私は、センターバックのオーバーラップに両チームの違いが如実に表れていたと見ます。

レアルは予想通り怪我明けのベイルをベンチに置き、イスコをトップ下に置いた4-3-1-2。
ユベントスはバルザーリ、ボヌッチ、キエッリーニという「もうひとつのBBC」を最終ラインに置いた3-4-1-2。

システムのことはともかく、キックオフ直後は驚きの連続でした。どうしてもユベントスは堅守のイメージがあるのであそこまで最初から攻勢に打って出てくるとは思ってなかったので。

それはピッチ上の選手たちが一番感じていたはずで、かなりバタバタしていました。ピャニッチの素晴らしいミドルシュートがありましたが、あれが入っていたら3-0ぐらいで負けていたかもしれません。

でも、戦前はブッフォンばかりが取り沙汰されてましたけど、ケイロル・ナバスだって同等といっていいGKで、右手一本でファインセーブ。

あのあたりからユベントスはあまり前がかりになりませんでしたよね。

ってことは、最初のどんどん前へというプレスは「奇策」だったのですね。

だって、後半の10分くらいでしたか、キエッリーニだったかボヌッチだったか忘れましたが、ボールを奪ったセンターバックがドリブルで駆け上がって絶好のチャンスを迎えながらも、そこで横パスをして自分は後ろへ下がるという自らチャンスの芽をつぶしてしまう愚を犯していました。あの直後ですよ、カゼミーロのミドルシュートが決まったのは。

逆に、レアルのセンターバック二人、セルヒオ・ラモスとバランは90分通して行けるときはどんどん前へ行ってましたよね。

セルヒオ・ラモスが前半30分くらいにイエローカードを受けたのはハーフラインをだいぶ越えた位置でしたし、バランはチャンスと見ればゴール前までオーバーラップしてました。

ユベントスのセンターバックは守備をケアしすぎで「勝負どころ」がわかってなかったというか、あれは監督の指示なんですかね、「前へ行くな」という。

だからやっぱり最初の10分くらいのどんどん前へという激しいプレスの掛け方が「奇策」にすぎなかったと思うわけです。

「おそらく我々がしっかり守ると相手は思っているだろう。その裏をかいて最初から攻勢をかける!」という。それで点を取れていればよかったんでしょうが、いかんせん、ナバスもワールドクラスのGKということを忘れていたのでは?

奇策が即悪いとは言いませんが、どんどん前へ、という作戦はやはりどこが相手でも90分通してやらなきゃいけない作戦でしょう。
それに、レアルは自陣深くでボールを奪ってからのカウンターが18番なんだから、ボールをもたせたほうがよかったのでは?

実際、ユベントスがあまり前へ出てこなくなってからも、サイドは破れないし中央は完全にパスコースを消されてるし、いったいどうやって崩せばいいの? とハラハラしてましたが、結果的にはあまりにあっけなく先制点。あの場面はうれしいというより、ユベントスがあんなザル守備を? と目を疑いました。

結局、前へ行くのか、後ろで守るのか、はっきりしないアッレグリ監督の戦術が裏目に出てしまったという感じです。
逆にレアルは、変な奇策を弄さずに、11人全員が「自分の役目をしっかり務める」ということに徹しただけ。奇策に対して正攻法が勝ったという、考えてみれば当たり前の結果に。

「勝因というものはない。あるのは敗因だけだ」

とは、故米長邦雄ですが、ジダンの采配は勝因でも何でもなく、アッレグリの奇策が敗因だと思います。
だって、ジダンは何も特別なことをしていません。交代選手もすべて攻撃の選手。コバチッチを入れて守備固めなどせず「俺たちの長所は攻撃なのだ」という姿勢を貫いただけ。
逆に、アッレグリは「自分たちの長所は守備だ」ということを信じきれなかったんじゃないか。だからあんな奇策を弄したんじゃないでしょうか。
それがセンターバックの動きに象徴的に表れたんだと思います。

蛇足ながら、2得点のクリスティアーノ・ロナウドではなく、ゲームの流れを的確に読んで攻守に存在感を発揮したモドリッチを私はマン・オブ・ザ・マッチに選びます。

とにかく、ここ4年で3回目の優勝。笑いが止まりません。




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