8年前に公開された『イット・フォローズ』を久しぶりに再見しました。何度見ても面白いですね。(以下ネタバレあり)


『イット・フォローズ』(2014、アメリカ)
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脚本・監督:デビッド・ロバート・ミッチェル
出演:マイカ・モンロー、キーア・ギルクリスト、ダニエル・ゾバット、ジェイク・ウィアリー


これ、元ネタというか、霊感源はもちろんジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』シリーズですよね。ゾンビじゃなくて、怪物というか何なのかよくわからりませんが。もしかしたらゾンビかもしれないですが、まぁ「イット」としか言えないものなんでしょう。でも、走らずのろのろ歩くだけだし頭を撃ちぬいたら死ぬからやっぱりゾンビ?

それはともかく、かつて「純粋映画」とか「絶対映画」ってありましたよね。大阪のシネマテークでそういう特集やってて見に行ったことありますが、いまだに言葉の定義を知らないんですが、この『イット・フォローズ』は純粋映画と言っていいんじゃないかと思いました。

まず、字幕がなくても充分楽しめる。

もちろんセリフはあります。が、何を喋ってるかわからなくても面白いと思います。セックスしてイットを移さないとダメとかそういう細かい設定はわからなくなりますけど、そんなのこの映画の本質じゃないし。

それと、ヒロインはじめ少年少女たちはどうもみんな親との関係が悪いらしいんですが、そのへんの詳しい説明もまったくなく、とにかく親に頼るのは絶対いやみたいな表情だけですべて描写できてるんですよね。うまい演出だと思いました。

クライマックスでも、プールにイットたちをおびき寄せて感電死させる作戦を立てるんですが、どういう作戦かという説明セリフも一切なし。アクションだけで描写してしまう。脚本と演出の協働作業が素晴らしいと思いました。

では、この映画の「本質」に話を移しますと、やはり「見える/見えない」から生じる恐怖じゃないでしょうか。(当たり前すぎてすいません

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こういういかにもゾンビみたいな人が襲ってくるわけですが、これがイットを移された者にしか見えないというのが「発明」なんですよね。

いままでのゾンビ映画はすべての人間に見えてましたけど、この映画では一人か二人にしか見えない。で、最初はヒロインの目線で撮ってるから、ボーイフレンドの目に見えるイットが最初は映らない。が、セックスして感染すると見えるんですね。それからはずっと見えてる。見えてるというのは観客に見せている、映しているということ。

しかし、それはヒロインの目線に作り手が立っているからそうなだけであって、いつ何どきヒロインではなく他の友人たちの目線に切り替わるかわかりません。


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だからこういうシーンでもめちゃ恐いんですよね。もしかしたら見せてないだけで後ろにいるんじゃないの、みたいな。

そうすると、やっぱりクライマックスでは、観客にイットを見せなくなる。つまりヒロインには見えてるけど友人たちには見えない。彼らと観客を同化させるためにそういう作劇&演出になってるんですね。

で、どうやってイットを可視化するかというと、

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布をかぶせて、というものすごく古典的な手法。大枠は『ゾンビ』という古典だし、細かい芸も古典的。でも、だからこそ「ヒロインにだけ見えるゾンビ」という新しい発明が生きるのでしょう。

あとは「セックス」ですね。

通常ホラー映画では、セックスしてる男女が殺されたりしますよね。エロスとタナトスということなのか、だいたいそういうことになっています。

この映画ではそこをうまく利用しています。セックスすればイットを移すことができる、と。

だから、セックスシーンがとても痛々しいんです。


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このシーンは好きな男からキスされそうになって拒否するところ。うれしいけどいやなんですよね。移したくないから。

でも、他の男が「俺が何とかしてやる」とヒロインとやって、で、その男がすぐ殺される。殺されるとイットは元の人間に戻ってくるという設定なので、またヒロインが苦しむ。で、先のプールのシーンになるんですが、そういうわけでもう誰かに移すしかないとなって、上の画像の好きな男とセックスしちゃう。


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これはラストシーンですが、二人の間に小さく誰か歩いてきてますよね。あれがイットなのかどうか、これが「見える/見えない」の恐怖で押してきたこの映画の最大の見せ場ですね。

あれが、二人には見えるのか見えないのか。それがわからない。観客には見えるけど、作り手がイットに感染した側に立っているのか、それとも感染してない側に立ってるのか、一切わからないので。

なるほど、クライマックスのプールシーンで視点を切り替えたのは単に恐怖演出を盛り上げるためではなくて、このラストシーンのためだったのかと膝を打ちました。

やっぱりアメリカ映画は面白い! 





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