いやぁ~、前回からがぜん面白くなってきた『ゆとりですがなにか』。
昨日の第9話もやたら面白かったですね。7話目までその凄さに気づけなかった自分を恥じます。

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①『ゆとりですがなにか』の問題点とは何か
②第8話を振り返って(チャイ! チャイチャイ!)

に続く第9話を見ての感想です。

前回の最後では、柳楽優弥が逮捕され、安藤サクラと結婚して会社を辞め実家の造り酒屋を継ごうと決めた岡田将生に試練が訪れます。

岡田将生の試練はともかく、柳楽の逮捕にはちょっと違和感があったんですよね。このドラマにはたして国家権力の介入って必要なんだろうかと。

しかも、柳楽の中国人妻も不法滞在のために警察に追われ行方をくらます。おいおい、そんなのゆとり世代という主題と何の関係もないじゃないかと。

でも関係あったんですね。いや、不法滞在は関係ないにしても国家権力の登場は必要だった。

このドラマがユニークなのは、そして並大抵の才能では絶対無理なのは、ゆとり世代を否定することなく世代間闘争せよというメッセージを打ち出しているところだと昨日初めてわかったんです。

普通、世代間闘争といえば、上の世代が下の世代を否定するところから始まりますが、上の世代は少しもゆとり世代を否定しない。いや否定してるんだけど面と向かって否定しない。そこから始めろよ、とクドカンは言ってるんだと思います。

大人たち世代はLINEで辞めると言ってきたり、仕事を頼むといやだとタメ口で返事するといったエピソードを聞くと、「ゆとり世代っていったい何なんだ? 少しもわからね~」とどうしても匙を投げてしまう。彼らは自分たちとは違う別の日本人なんだと。私もつい最近までそういう人間でした。

それって、ゆとり世代を否定しながらも最初から闘争を拒否してるんだとこのドラマを見て気づかされました。なぜなら面と向かって非難しないから。わからない生き物だから関わり合いにならないでおこうと距離を置く。世代間闘争ではなくもっと深刻な「世代間断絶」が起こってしまっている。

クドカンは「それでいいのか大人たち!」と疑問を投げかけます。

ゆとり世代にも上の世代と下の世代があり、第一世代の岡田将生は第二世代の後輩・太賀を叱り飛ばしたり妹の島崎遥香に説教したりする。
ここで大事なのは、第一世代と第二世代はちゃんと世代間闘争できてるってことなんですよね。太賀を叱ったら逆にパワハラで訴えられたり、島崎遥香に説教したら、反発した彼女が内緒でガールズバーで働くことになったり。

でも、第一世代は上の世代から叱られることがない。「これだからゆとりは…」というセリフが象徴的ですが、呆れられることはあっても叱られることはない。

そのために吉田鋼太郎が女癖が悪く妻に逃げられた情けない男という設定が必要だったわけですね。
吉田鋼太郎は「自業自得」という言葉が一番嫌いと言いながら、逮捕された息子・柳楽に「自業自得」と言いかけて自分にはそう言える資格がないと謝る。柳楽は「何で謝るんだよ。俺を叱るのはあんたしかいねーじゃねーか!」と怒り、吉田は叱り飛ばします。なるほど!と唸りましたね。

しかも、叱られた柳楽がすぐに「おまえにそんなこと言えんのか!!!」と逆上して殴るんですね。世代間闘争ですね。本物の。こういうことが現実社会ではできてないことにクドカンは苛立ってるんだと思います。大人たちはもっとゆとり世代とちゃんと向き合えよと。面と向かって否定しろと。

そして、クドカンのゆとり世代をめぐる想いはもっと深い。

島崎遥香の名前が「ゆとり」なのはなぜだろうとずっと不思議だったんですが、ついに昨日の第9話でその理由が明かされました。


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兄二人がどういう名前にしようかと決めるとき、「かば」「ばか」などの変な名前とともに「ゆとり」も交えて、「どれにしようかな、神様のゆうとおり」で決めちゃうんですが、「ゆうとおり」と言いながら幼い日の岡田将生は強引に「ゆとり」を選ぶ。それで決まったと。

でも名づけたからには責任をもたなくては。生んだからには責任をもたなくては。というのがこのドラマの最も大事なメッセージ。

第6話だったか7話だったか、松坂桃李が小学生たちに「ゆとり世代とは何ぞや」という授業をしますが、そこで「先生たちゆとり第一世代は勝手に国がゆとり教育をして勝手にゆとり世代って名づけられただけなんだ」といいます。

なるほど、だから国家権力の登場が必要だったのかと。しかも柳楽の妻が不法滞在の外国人という設定もこのためだったのかと。
柳楽の恐喝容疑は主題と関係ないですが、不法滞在で登場する日本政府の手先たちは「なぜ在留許可を出さなかった」と柳楽を責めます。そんなこと知らねーもん、そっちが先に教えてくれなきゃと柳楽は反発。中国人をはじめ経済成長のためにビザの発給要件を緩和しておきながら、どうすれば在留期間を長くできるかということを少しも教えない日本政府に対する非難ですね。

そのエピソードと、島崎遥香の役名「ゆとり」の由来とが相俟って、ゆとり世代を生んだ国家に対し「名づけたからには責任もてよ。生んだからには責任もてよ」という激烈な主張へと発展する。うーん、深い! 隅々までよく考えぬかれています。

さて、来週は最終回ですが、どうなるんでしょうか。

予告編によると結婚式の場面があるようですが、結婚はゴールではなく人生の墓場だと頻繁に言われるようになった今日において、最終回に結婚式をもってくるクドカンはどのようなG難度を見せてくれるのでしょうか。着地はピタリと決まるのか。

楽しみでなりません。


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