ガス・ヴァン・サント監督、マット・デイモン主演による2012年作品『プロミスト・ランド』を見ました。

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うーん、これってどうなんでしょう。

物語は、デイモン演じる田舎育ちでありながら大学を出て大企業に勤めるキャリア志向の男が、シェールガス採掘のために農場を地上げする過程を通して、自分の過ちに気づく、というもの。

ガス・ヴァン・サント監督、いったいどうしたんでしょうか。これは決定的に古いです。

かつて、キャメロン・クロウ監督、トム・クルーズ主演による『ザ・エージェント』という傑作がありました。1996年作品です。

金のことしか頭にないスポーツエージェントが、自分の過ちに気づく物語。『プロミスト・ランド』と同じです。

ですが、決定的に違うのは、『ザ・エージェント』の場合、その物語が最初の10分で終わってしまうということです。自分の過ちに気づいた主人公が自ら会社を辞めて自分の会社を興し、そこで七転八倒しながら選手と心から理解しあえる関係を築く、というのがすべてのあらましです。

『プロミスト・ランド』は『ザ・エージェント』の16年もあとに作られていながら、あの映画があったことなんてまるでなかったかのように作られています。これはいけません。

確かに、田舎育ちの男が田舎育ちであるがゆえに田舎を蔑視している、という視点は新しいしとても重要なものでしょう。

でも、それは主人公のダークサイドとして設定されているだけで、最後に自分の過ちに気づいたとき、田舎蔑視の感情もすべてリセットされて、おしまい。これではあまりにつまらないです。この時代に作る意義を感じません。シェールガスというのは新しい素材なんでしょうけど、昔の石油とか鉄道とかと役割は同じ。

やっぱり『ザ・エージェント』は偉大です。
翻訳家の芝山幹郎さんは、あの映画を評して「紋切型をうっちゃるスゴ技」とおっしゃってましたが、言い得て妙ですね。まさしくその通りです。

逆に、この『プロミスト・ランド』は完全に紋切型の枠に納まってしまっています。とても残念です。





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