マーティン・スコセッシ監督
レオナルド・ディカプリオ主演
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』

去年、封切で見たんですがあまり楽しめなくて、最近のスコセッシはやっぱり落ちてると思ったものの、その後、大絶賛の嵐だと知り、ちょいとバイアスがかかってたんじゃないかと今回見直してみました。

うん、劇場で見たときよりは楽しめました。やはりバイアスがかかってたんですかね。証券マンの実録モノなのにウォール街でどういう仕事をしてたかなんてちょっと触れる程度で、あとはセックスとドラッグのオンパレード。ヤッてヤッてキメまくる登場人物たちがとにかく可笑しい。面白い映画です。

しかし…

物語構造としては『グッドフェローズ』などの実録モノと同じじゃないですか。放蕩のかぎりをつくした主人公が捕まって仲間を売って延命を図る、という。スコセッシってこういう話型がよっぽど好きなんだなと思いました。しかも決して改心はしないという。『レイジング・ブル』なんかは改心するんですけど、違いはそこだけで愚か者の言動を愛情をもって描くのはスコセッシの真骨頂かな、とは思います。

でも、多くの人が言ってるような「テンション上がりっぱなしで面白すぎる!」とか「あのテンションを最後まで維持できるって70超えた爺さんがほんとに作ったのか!?」というような言説には同意できません。

テンション上がりっぱなしなのは認めますが、上がりっぱなしということは何の緩急もないということであって、見ていてちょいと退屈なのです。しかも180分もありますから途中何度か眠くなりました。

『グッドフェローズ』もテンションがずっと高いですが、ゆったりと落ち着いて見れる場面が多々あったし、短いカットの積み重ねで見せるシーンもあれば、驚異の長回しで見せるシーンもあった。既成楽曲の使い方が素晴らしく、何から何まで「多彩」だったんですよね。でも、この『ウルフ・オブ・ウォールストリート』は多彩ではなく「単彩」で、ちょっと単調でした。見終わって心地いい疲れを感じるのではなく、あぁやっと終わったか、という、どっと疲れた感じでした。(この映画では音楽の使い方に工夫がなく、「スコセッシ、やはり老いたか」と思ってしまいました)


それでもやっぱり最後まで楽しめてしまったのは、ひとえに主人公を演じたレオナルド・ディカプリオの快演でしょうね。


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巷では、冒頭に出てくるマシュー・マコノヒーの演技を絶賛する声が多いようですが、私はまったく同意できません。あのような変化球の演技は誰にでもできるものだと思います。

でもディカプリオが見せた大熱演は誰にでもできるものではありません。「俺が一人でこの映画の屋台骨を支えてみせる!」という強い意志がなければあのような熱演はできるものではありません。『グラディエーター』のラッセル・クロウ、『ベン・ハー』のチャールトン・ヘストン、『エイリアン2』のシガニー・ウィーバーみたいな感じでしょうか。

マコノヒーは「技術」で演じているだけです。ディカプリオは「気持ち」で演じている。マコノヒーは私に言わせれば小賢しいのです。ディカプリオみたいな爽快さが彼にはありません。

奇しくも、この年のアカデミー賞では、別の映画でほとんど同じ演技を見せたマコノヒーが受賞し、ディカプリオはまたしてもノミネートに終わりました。

ここにハリウッドの、というか、世界全体の演技に対する誤解があるように思われます。

小賢しい演技よりも思わず画面に目が釘付けになってしまう熱演をこそ、と思います。





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