政治

2019年06月30日

ちょっと前から話題の絶えない吉本芸人の「闇営業問題」。

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このことについて、「選挙前なのに何で芸人が事務所を通さず営業していたことばかり取り上げるんだ」という声があり、それはそれで理解できるものの、これは日本社会全体の問題だと思うため、やはり取り上げるべきだろうというのが私の考えです。

闇営業というとそれだけで何か問題があるみたいですけど、別の言葉で言えば「直営業」らしく、要は所属している会社を通さなかった、というだけの話。だから闇営業と反社会的勢力との接触とは分けて考えないといけないはず。ただ、事務所を通さなかったとなると脱税のおそれもあるわけですが。(吉本は常に10%の源泉徴収を取るとロザン宇治原とピース又吉が言ってました)

さて、ここへきて、スリムクラブの二人が暴力団関係者の誕生会に出席していたことが明るみになり、無期限の契約解除と相成りました。ただ、この二人は直接営業して取ってきた仕事というより、他の芸人仲間の紹介で、ということらしい。紹介ならいいわけじゃないし、その筋の人ならすぐわかるはずだけど、ただ、はたしてその筋の人から仕事を頼まれて断れるのか、どうか。

ホリエモンは、飲みの席などでその筋の人から呼ばれそうになったらすぐ逃げるそうです。芸人なんかより自分のほうがもっと金になるからウハウハだろう、と。逃げ方をいろんな人に教えてあげたらどうでしょう。

それはともかく、宮迫や田村亮など「金銭の授受はなかった」とウソを言った人たちや、金銭を受け取っていたといきなり報じられたスリムクラブなど、みんな断ろうと思えば断れた状況だったんでしょうか。

まぁ、カラテカの入江などは、目の前に現金で100万円ポンと置かれて、それで引き受けたというのだから、「おいしい仕事」という認識しかなかった可能性のほうが高いですが、問題はなぜこういう問題が起こったか、です。


1992年の暴力団対策法、通称「暴対法」
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さんまは、「もし入江から頼まれてたら絶対行ってたと思う」と話したそうです。「世話になってるから」と。「若い奴らはギャラが安くて困ってんねん。もっと俺が会社と交渉してやらなあかんかった」みたいなことも言ってるらしい。
それはビートたけしも同じで、「闇営業をしないと食えないというのがそもそもおかしい」と。

じゃあ、吉本興業という会社だけの問題かというとそうではなく、それもありますが、やはり1992年施行の暴力団対策法がここにきてかなり社会をシロアリのように崩してきているような気がします。

↓元検事の人が書いたこんな記事を読みました。↓

「スリムクラブら闇営業で処分の訳 骨までしゃぶり尽くす反社会的勢力の恐ろしさ」
 
テレビではしきりと「反社会的勢力」と言ってますが、要はやくざでしょ? やくざとの付き合いは絶て、と。やくざを社会から完全に排除しなきゃ、という主張は筋が通っているように見えて、かなり危険じゃないかと思います。


昔のやくざは……
かつて撮影所で働いていたころ、大先輩からこんな話を聞きました。

「喫茶店でやくざと喧嘩になった。俺らが勝った」
「勝ったって下手したら殺されてたでしょう」
「いやいや、昔のやくざは堅気の人間にドスを抜くような真似は絶対しなかった」

まだまだ昭和の中頃の話なので、牧歌的ですね。ただ、そういうもんだったらしいです。でも、いまのやくざは平気で堅気の人間を殺したり、生かさぬように殺さぬように利用したりする。

それはやはり暴対法と、2011年までにすべての都道府県で施行されたという暴力団排除条例のせいじゃないでしょうか。

ちょっと前に市役所でバイトをしていた時期があって、役所は何でもかんでも金の使い道は入札で決めないといけないのですが、入札希望の企業からの申込書類が一通りそろっているかを審査する仕事でした。

その中に「うちの会社は反社会的勢力との付き合いはいっさいありません」という宣誓書みたいなのがあって、これがなかったら入札させてもらえない。だからいろんな企業がやくざとの関係を絶った。社会から排除した。


やくざと芸人の相似形
普通のしのぎでは食っていけない。そのへんのことは『ヤクザと憲法』という映画にも詳しいですし、やくざを辞めた人たち、いわゆる「ヤメ暴」の人たちの苦労は、去年テレビドキュメンタリーとして放映されました。その番組の感想はこちら⇒「『ヤメ暴 ~漂流する暴力団離脱者たち~』を見て思ったこと」

排除するだけで受け容れないから、いわゆる半グレ集団と化し、やくざの手足となって稼いでいる。いま知ったんですが、半グレ集団は暴対法の規制を受けずにすむらしく、だからやくざは彼らを頼っている、と。

食うに困って、年寄りを騙す振り込め詐欺に精を出す。
食うに困って、闇営業で反社会的勢力からの依頼を受ける。


この二つは完全に相似形をなしています。そして、世間の要請を受けた警察がやくざを排除したのと同じく、現在、これまた世間体を鑑みた吉本興業が芸人たちの契約解除や無期限謹慎など「排除」の方向に突っ走ろうとしている。

同じことの繰り返しというか、排除された入江や宮迫などが、もう自分自身が反社会的勢力になるしか道がないとなったら、やくざの勢力が拡大してしまいます。(もしかすると、金以外にそれも狙いにあるんじゃないですかね? まだまだネタをもっていると笑っているらしいし)

上記の『ヤメ暴』の感想にも書いたように、排除するだけで再び社会に受け容れることをしなければ、どんどん地下に潜って悪行のかぎりを尽くすだけ。判断能力が低下した年寄りから金を巻き上げるより、商店街がみかじめ料払ったり会社が総会屋に金払ってたときのほうがよっぽどよかったのでは?

まだあのときはやくざが自分の体を張っていたけど、いまは表に出てこない。振り込め詐欺でも逮捕されるのは末端のバイト感覚でやってる若い人たちばかり。

少なくとも、別の事務所などが手を差し伸べてセカンドチャンスを与えてあげてほしいし、世間もそれを許容すべきと考えます。




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2019年06月17日

映画評論家・町山智浩さんの『アメリカの今を知るTV』が2時間スペシャルでプライムタイムに登場! というわけで見てみました。

いつもの本放送はたまにしか見てないので初めて触れる情報がたくさんありました。特に仰天した3点について書きます。


①メキシコとの国境に壁は作れない⁉
トランプが公約に掲げていた「メキシコとの国境に壁を作って不法移民を根絶する」というアレ。アレは絶対不可能なんですって。

なぜなら、メキシコとの国境はリオ・グランデ川で、あまりに蛇行しているために川の上に橋を作れない。(仮に作ったとしても橋があるところでは住民は自由にアメリカとメキシコを行き来している)


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現実には、このように川の手前の部分に壁は存在しているんですが、そこは何と農家の私有地。農家の人も壁の向こうとこっちを行き来するため、どうしてもビッチリした壁を作れず、ところどころ穴が開いてしまう。すべての私有地を買い取れば完全な壁を作ることはできるけど、莫大な金がかかるから現実的には不可能。

さらに仰天するのが、アメリカ人ですらこの事実をほとんど知らないということ。なぜか報道されてないと。日本でも安倍に都合の悪いことは伏せられることが多いし、あちらでも「忖度」がまかり通っているということでしょうか。


②銃社会アメリカの現実
衝撃の事実が語られました。
昨年、銃乱射事件が起こった高校の生徒が自殺したというのです。10何人もの人が死んだのに自分は生き残ってしまったという罪悪感=サバイバーズ・ギルトのせいで。

今年の5月末までで全米で発生した銃事件の件数が何と21686件。死者は5705人。今年のたった5か月間でですよ。

これだけの事件が起き、莫大な人数の被害者がいまも出ているなか、なぜアメリカでは銃規制が進まないのか。それは何と「憲法」にあるというから仰天しました。

合衆国憲法修正第2条
「規律ある民兵は、自由な国家安全にとって必要であるから、人民が武器を所有し、また携帯する権利はこれを侵してはならない」


町山さんの解説によると、「規律ある民兵」とは「反政府ゲリラ」のことだそうです。反政府ゲリラがいないと独裁国家になってしまう。それを防ぐために銃所持を認めているそうです。

ボストン茶会事件を発端に、イギリスはアメリカの民兵から銃を取り上げようとした。それに逆らって独立戦争を起こして勝利し、アメリカ合衆国ができあがった。民兵=反政府ゲリラこそが建国の父だった。父たちがもっていた銃は合衆国国民全員が所持・携帯する権利がある、という理屈だそうです。

昔懐かしい岸田秀さんの『ものぐさ精神分析』の冒頭、「アメリカを精神分析する」みたいな論考がありました。先住民を制圧して建国した国だから、世界の警察ヅラをして内政干渉したがるのだ、みたいな内容でした。(←かなりうろ憶え)

先住民の虐殺が外交問題を生み、旧宗主国イギリスとの独立戦争が内政問題を生んでいる。

ただ、かつてグァムで銃を撃ったことのある人間としては、やはりアレはもっているだけで「止まっている的を撃つだけではつまらない」「猫でも撃ってやろうか」「いやいや、人間を……」とどんどんエスカレートしていく魔性を秘めていると思う。だから規制したほうがいいに決まっているけど、建国の礎が理由だからこの病根はかなり深いというか、もう治癒不能では? と思わされました。


③コメディアンが政治を茶化す伝統
これはちょっとうらやましいというか、アメリカの健全なところ。

日本よりもよっぽどお笑いが人気でコメディのライブハウスがたくさんある。そして政治を風刺しないコメディアンはコメディアンじゃないとまで言われるとか。

戦慄したのは、2006年に開かれたホワイトハウスの晩餐会。当時の子ブッシュ大統領の前で、登壇したコメディアンがこんなことを言ったのです。


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「私はブッシュ大統領を支持します。なぜなら、彼はアメリカが攻撃されたときちゃんと反撃してくれるからです。世界一わざとらしいヤラセ写真によって」

ゲボッ! すげーー!

こういう懐の深いところはアメリカ独自の伝統というより、ヨーロッパの宮中の伝統らしいです。

シェイクスピア劇にもよく出てくる宮中道化師。国王に向かってたった一人だけタメ口を利いてもいい人物。王様を茶化すことで相対化し、諭す役割があった。

ちょうどいま読んでいる赤坂憲雄さんの『王と天皇』でも、道化は「王であって王でない者」「王の分身として王の支配を裏側からシンボリックに支えるもう一人の王であった」と書かれています。だからタメ口で直言することが許されているんですね。(その代わり何かあったらスケープゴートとして殺される)

その伝統がいまも残っているのはいいと思いましたが、トランプは一昨年、昨年と続けてこの晩餐会を欠席しているとか。なるほど、建国以来、もっとも懐の深くない人物が大統領になってしまったのですね。

というわけで、かなり盛りだくさんな2時間でありました。またやってほしいです。




関連記事
町山智浩さんの『市民ケーン』解釈への反論




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2019年05月27日

MBSの映像’19『壊憲 ~この国の憲法は、どこへ~』をとても興味深く見ました。

安倍自民党が推し進める改憲運動を「壊憲」と断じる慶応大学名誉教授・小林節さんを主軸にしたドキュメンタリー。やはり「映像’19」は力のある番組が多いですね。


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憲法遵守義務は誰にある?
小林節さんは恥ずかしながら何となく名前を聞いたことがある程度でしたが、なかなか骨のある人だと思いました。もともと改憲派だったらしいですが、自民党の改憲草案を見て護憲派に鞍替え。転向のそしりを恐れない。

知らない人が多いですが、「自白に証拠にならない」ことは憲法に明記されています。なぜ刑事訴訟法とかでなく憲法なのか。それは憲法と法律が権力者と一般大衆のどちらに軸足を置いているかが違うからです。

憲法は何よりも権力者の暴走を防ぐのが目的で制定され、一般大衆を守るのがその役目。
対して、その憲法の枠組みの中で権力者が一般大衆を縛るのが個々の法律(何々の罪を犯したら刑務所に入らねばならないなど)。

なので「自白は証拠にならない」(現実の司法はそうなっていませんが)というのは、だから憲法に明記されていないとおかしいわけです。

小林節さんが護憲派に鞍替えしたのは、自民党の改憲草案が「国民に憲法遵守義務を謳っている」から。権力者の暴走を防ぐのが憲法なのだから本来は政治家や官僚に憲法遵守義務があるのに、国民にその義務を負わせる。それはおかしいだろう、と。


国民投票時はCM規制なし⁉
これも恥ずかしながら知らなかったんですが、選挙のときは規制があるCMが、国民投票ではまったく制限なしだそうです。

だから、改憲派が物量作戦でCMなどを投下するのは目に見えている。立憲民主党の枝野幹事長も危機感を抱いているらしく、昨日こんな記事がすでに出ているそうです。いま知りました。⇒枝野氏「CM規制優先を!」

番組では、例えばAKB48などの人気グループが「古い時代よ、さようなら。新しい時代の風が吹く」みたいな歌詞を歌えば改憲派に風が吹く。憲法とか改憲とか9条とかそんな言葉を出さなくとも自分たちに有利な風を吹かせることができることに危機感を滲ませていました。


アダルトビデオ製作者たちへの講習会
小林節さんがとても素晴らしいと思ったのは、アダルトビデオ製作者たちを招いて表現規制と闘おうという集会を開いていることですね。

「国民の自由を規制するには、まずエロ規制というのが一番やりやすい。エロ規制から始まって、いつの間にかすべてを規制されるんです」

確かに、エロ規制となると大っぴらに反対しにくい。そういうところから入ってくるだろうから先手を打ってAV製作者たちに講習会を開くというのは蒙を啓かれるというか、なるほど、本当に偉い学者というのはそういうところもちゃんとケアするんだなと感心しきりでした。

とにかく、改憲そのものは否定しませんが、やはり憲法遵守義務を国民に負わせる安倍自民党憲法草案には真っ向から反対せねば、と決意を新たにした次第です。





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