聳え立つ地平線

ありえないものを発見すること、それを写し撮ること、そしてきちんと見せること。

アメリカ文学

パトリシア・ハイスミス『キャロル』(心が風邪を引いたら…)

パトリシア・ハイスミスが1952年にクリス・モーガンという別名義で上梓した『キャロル』(当時は『ザ・プライス・オブ・ソルト』というタイトルだったとか)を読了しました。

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さすがハイスミスですねぇ。やたらめったら面白い。

主人公テレーズが美しい人妻キャロルと出会い恋に落ちる物語なんですが、ハイスミスらしく全編に常に不穏な空気が漂っていて、読んでる間ずっと宙吊りにされてる感じ。ミステリ作家の歴代1位に選ばれたのも納得の、一大サスペンスですね、これは。

主筋はラブストーリーなんですけど、この先この二人の関係はどうなるのかハラハラしまくり。拳銃が出てきたときなんかはもう「ああ、どちらかが殺されるのか。どっちが殺すのか。やはりテレーズなのか。それだけはダメ!」と架空の人物に心配してしまうほど感情移入しまくり。

そして、ラストは…

これは書かないでおきましょう。

ただ、心が風邪をひいたときは、読み返さないまでも、この『キャロル』の結末を思い出すだけで復活できるんじゃないか。そんな気さえするエンディングでした。もうお腹いっぱい。

トッド・ヘインズ監督によって映画化され、テレーズを演じるのがルーニー・マーラ、キャロル役はケイト・ブランシェットということでおそらくベストキャスティング。賞レースでも堅実な結果を残しており、これは期待できそうです。

本棚には、積読状態のハイスミス本が数冊あります。貪り読みたい気分です。


ヴァン・ダイン『僧正殺人事件』(創元推理文庫)

本職は美術評論家らしいS・S・ヴァン・ダインの『僧正殺人事件』を読みました。
すごい名作、あの乱歩も大絶賛したと聞いていたので、かなり期待して読んだんですが…


51tFwX462nL__SY344_BO1,204,203,200_うーん、これのどこが名作なんでしょうか。

確かに、マザー・グースの童謡の内容をなぞって連続殺人が起こる、という「見立て殺人」というアイデアは面白いと思うんですけども、犯人がこういう遊び心満載の殺人に手を染めた動機に無理があると思うのは私だけでしょうか?

アイデアは面白いけれど、そのアイデアを活かそうとするあまり、人物の内面というか心理描写が疎かになってる気がします。登場人物のうち誰一人として好きになれなかったし。

ここ十数年で読んだ本のうち最もつまらなかった小説は、『金融腐蝕列島』とその続編『金融腐蝕列島 呪縛』なんですけど、あれも銀行業界や財界の内幕情報としての面白さはあったものの、肝腎要の人物描写がものすごくおざなりで、読んでて疲れるだけでした。

事件の謎を解く探偵ヴァンスが読む本として、数学や物理や哲学の本のタイトルがたくさん出てきますが、これはやはり作者ヴァン・ダインの好きな本なんでしょうか。それはいいんですけど、ああいう本ばかり読んでいたら人間の心理に疎くなるんじゃないのかなぁ、とこれは邪推ですかね。

実は、推理小説ってあんまり読んだことないんです。最後の最後だけに興味が集中する読書というのがどうも性に合わなくて。

逆に、犯人の側から描く、いわゆる倒叙型のミステリなんかは好きなんですが。もっと言えば、犯罪者たちの悪戦苦闘を描く犯罪小説は好きなんですよ。ジム・トンプスンとか、パトリシア・ハイスミスとか、ハドリー・チェイスとか。

ヴァン・ダイン。この『僧正殺人事件』が面白いと踏んで他のも2冊買っちゃってるんですが、もう読む気がなくなってしまいました。だってこんなつまらないのが一番の代表作らしいですから。

他に買ってある推理物は、ディクスン・カー(カーター・ディクスン)のが2冊。これにはまだ期待したいです。

しかし、ほんとこれのどこが名作なんだか…



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