聳え立つ地平線

ありえないものを発見すること、それを写し撮ること、そしてきちんと見せること。

プチ情報

『究極の疲れないカラダ』を読んで思ったこと

話題沸騰中の、スポーツカイロプラクター仲野広倫さんの『世界の最新医学が証明した 究極の疲れないカラダ』(アチーブメント出版)を読みました。




完全同意する点
まずは完全同意する点を箇条書きしてみます。

①本書のエクササイズをしていて「おかしいな」と思ったらすぐ中止して医師に相談する。
②どんな治療もそのうちの2割は「プラシーボ効果」と言われている。
③医師から「筋肉をつけなさい」と言われたら、まず自宅で地道にスクワットをすること。
④普通の腹筋運動、背筋運動は腰を痛める。
⑤足腰を強くするためには、一日一万歩歩くより週に2回のスクワットのほうが効果的。
⑥自分の体を治すのは自分自身。医師はその手助けをするだけ。

ざっとあげるとこんな感じでしょうか。

①について補足をすると、間違ったフォームでエクササイズをしていると痛みの原因になります。高校時代バドミントン部で一日1000回素振りさせられていたんですが、間違ったフォームでやっていた友人は肩と肘を痛めてしまいました。鉄は熱いうちに打て。初期の時点でフォームを正すのは大事ですね。

②のプラシーボ効果(偽薬効果)に関しては、私などはもっと割合が大きい気がします。ほとんど気分で生きているので。ただ、この著者は「気分」というものをあまりに過小評価しすぎのような気がします。(これについてはあとで詳述します)


目から鱗だった点
「長年、運動してなかった人が骨粗鬆症の予防として始める運動は何か」という問題の答えが、「負荷の軽い水泳」ではなく「おもりを使った筋トレ」だということ。

この本の最大のキーワードは「機能運動性」で、寝ている状態が最も機能運動性が低い。機能運動性は筋肉を鍛えることによって得られると何度も説かれます。水中では体重が軽くなるので全身の筋肉に負荷がかからなくなり、筋肉が衰える、つまり機能運動性が低くなってしまうとか。これには驚きました。

が……


まったく納得できなかった点
rei28-5

開脚や前屈ができることのメリットは、ズバリ「開脚や前屈ができる」ということだけ。

ん? ほんとに???

確かに、機能運動性という観点からはそうなんでしょうけど、人間の体ってそれだけじゃないでしょ。

以前読んだ本に、股関節を柔らかくすると、一番太い血管のある腰から大腿部にかけての血行がとてもよくなる。リンパ節の働きもよくなるから免疫力も上がる。疲れが取れやすくなる。って書いてありましたけどね。(その本に書いてあることが間違いという人もいるかもしれませんが、それを言ったらこの本に書いてることも……ということになってしまいますよ)

この本は「疲れないカラダ」と銘打っているのに「免疫力」という言葉がまったく出てこないのには異議申し立てせずにはいられません。

それに前述の「気分」。

著者はアメリカで開業していて、患者さんはみんな超高額の医療費を払っているから、各自レントゲン写真やMRIなどの画像を持参してきて、「あんたに治せるか」と迫り、原因は何か、どういう治療が効果的か、その理由は、などなど根掘り葉掘り聞いてくるそうです。でも日本の患者はそこまでの意識がないと嘆いてますが、何でもかんでも「アメリカが一番」みたいに言うのは日本人の悪い癖だと思う。

著者の、骨のずれを治すと謳っている整骨院や鍼灸院は意味がないという主張にはほぼ同意します。骨がずれてるんじゃなくて関節がずれてるだけ、そのずれを治しても筋肉の使い方が間違っていたらまたすぐずれてしまう。それもそうでしょうし、闇雲にもみほぐして終わりなんて「医療」じゃないというのもそのとおりでしょう。

でも、「気持ちいい」「楽になった」は意味がないというのはどうなんでしょうか。

私はもう1年以上前から整骨院に行かなくなりました。その整骨院では、この本に書かれているのと同じような「正しい筋肉の使い方」を教えてくれたので、それを実践してきたことがまず一つ目の理由。二つ目は、テレビで筋膜ストレッチや骨ストレッチなどのやり方を見て、それも実践すると整骨院に行かなくても簡単に肩こりが治るとわかったことです。

著者に言わせれば、筋膜ストレッチなんかも対症療法に過ぎないということなんでしょうか。ストレッチにはあまり意味がないって何度も書かれてますしね。もっと根本から治さないといけないということ? 確かにそれはその通りでしょうが、ストレッチをして感じる気持ちよさを私は捨てたくない。そして正しい筋肉の使い方では同じ快感は得られない。

著者はプラシーボ効果をネガティブなものと捉えていますが、なぜでしょう? プラシーボ効果って偽の薬でほんとに治っちゃうんでしょ? 仮に治った気がするだけでも別にいいと思う。何でもかんでもアメリカ人のように合理的に考えることだけがすべてではないでしょう。

というか、この著者は「考えすぎ」じゃないですかね。肉体の専門家なのに体で感じる気持ちよさを否定するというのがまったくわからない。体で感じずに頭だけで考えている。

少なくとも、私はこの人に診てもらいたいなんて少しも思いません。
それから、『究極の疲れないカラダ』という題名は「看板に偽りあり」だと思います。『機能運動性にすぐれたカラダ』とでもすべきではなかったでしょうか。


ホットヨガ初体験!

いやぁ~、今日は大変な目に遭ってきました。

ホットヨガなるものに初めて行ってきたんですがね。LAVAという全国津々浦々に教室をもつ結構有名なホットヨガ教室での体験入学。


ホットヨガ体験レッスnn

予約から受付まで
新聞の折り込み広告が入っていましてね。税込1000円で体験入学できると。しかも、上下のウェアにフェイスタオル、バスタオル、ヨガマット、水素水1リットルのレンタルも込みで。これはいい!
去年のいまごろも入っていて予約使用しようと思っているうちに期限が過ぎてしまって行けなかったんです。で、今回満を持して行ってきたというわけです。
膝の半月板を損傷しているので飛んだり跳ねたりするんだったらやめとこうと思うも、とりあえずホームページを覗いてみたらば、一口にホットヨガといってもいろんなのがあるんですね。「初級ホットヨガ」「パワーバランスホットヨガ」とか。知らなんだ。

で、私はもともと基礎体温が低くて免疫力が弱いからか疲れやすいので、「リンパリラックスヨガ」なるものを受講してみようと思ったわけです。 もちろん、あくまでも「体験入学だけのつもり」でした。だって実際は月にたった4回でも8300円もかかるんですよ。通い放題だと16300円。でかでかと「月額2870円のみ」と書いてあるので「こりゃずっと行こう!」と最初は思ったんですが、小さく本当の値段が書いてあるんですね。もう少しで騙されるところだったわい。へへへ、そんな小賢しい手には乗らないよ。と意気揚々と出かけたのでした。

「初めての方は30分前までにお越しください」と書いてあるので早めに行くと、今日のリンパリラックスヨガの体験入学は私以外では女性が一人だけ。あとはもともとの受講生らしく、もっといるのかと思ったらベテランさんばかりなのがちょっと意外でした。

受付の人も新規顧客開拓のために必死なのか、笑顔を絶やさずめちゃ親切に案内してくれる。更衣室で着替える時にすぐ隣のロッカーを使っていた男性までがやたら親切で、「ここは受講生と一体になって顧客獲得をしているのだろうか」と疑ってしまうほど。
誓約書にサインをとタブレットを差し出され、どうせ一日だけなのだからと内容はほとんど読んでません。ふっふっふ。どうせ一日だけなのだよ。と、ほくそ笑んでおりました。

タブレットを渡すと詳しく受講の案内があり、「水を飲むタイミングはその都度言いますが、飲みたいときは遠慮せず自由に飲んでください」 「ホットヨガはデトックス効果が絶大なのでお帰りになるときにすでに体内が浄化されたことをお感じになれるはずです。これを半年ほど続けていただけたらかなり体質改善になりますよ」
新規顧客開拓のためにあなたも必死なのね。でも俺は今日だけでオサラバするつもりだよ。やり方だけ憶えさせてもらってあとは自宅でやるのら~。と独り↓このように↓腹の中で笑っておりました。


15fdd0804aa45c42073a7e40ac858c28

すぐ目の前に落とし穴があるとも知らずに。


大誤算!
「では中にお入りください」と入った瞬間、すべてを後悔しました。


005

あまりに暑いのです。修造みたいに入った瞬間に汗だくになったのです。
ホットヨガのホットって、体を柔軟にすることで血行が良くなり体が温かくなることだと思っていたんですよ。いや、それ自体は間違いじゃないんでしょうが、とにかく部屋の中が異様に暑い。室内の四方八方からものすごい勢いでスチームが噴き出しています。 私は暑いのが大の苦手で毎年のように夏バテしているんですが、たった1時間とはいえこれはちょっと待ってくれ。と、このときすでに帰りたくなっていました。心の中はすでに↓こんな感じに折れてしまっていました。↓


00004

といっても1000円払っての参加だし帰るわけにはいかない。何よりホットヨガのやり方を少しでも憶えて帰らねば。との使命感から何とか気を落ち着かせながらインストラクターの言うとおりに体を動かしていましたが、もう半分ぐらいたっただろうかと時計を見ると、何とまだ5分しかたっていない。こりゃほとんど拷問じゃ!   

とにかくいくら喉が渇いてもできるだけセーブしないと1時間ももたんぞ、と指示があったときだけ飲んでたんですが、もう15分もたつ頃には心が折れそうでした。
それでも、初めて来て「気分が悪い」とか申し出るのも何かかっこ悪いというか言い出しにくくて我慢してやっていたんですが、気がつけば指示があるとき以外でも水素水をがぶ飲みしていて、残り15分のときには↓こうなってしまいました。

b4bd7e31

ヨガマットの上で寝転がってグロッキー状態。気分が悪くなったら座ったり寝転がっていただいてかまいませんので、と事前に言われていたので、もうそうさせてもらいました。

終わってホッとして外に出て頭を冷やしているとインストラクターが近寄ってきて「大丈夫ですか」と。ここまで暑いと思っていなかったこと。とにかく気分が悪くてしょうがないことを訴え、 もう今日で結構です! とお断りしました。

当初から「断るつもり」で予約したんですが、そんなの関係なしに「断らざるをえない」展開になるとは思ってもみませんでした。

というわけで、ホットヨガをやってみようかな、と思う方は、まず暑さに強いかどうかをよ~く考えてみてください。夏バテしやすい体質ならやめておいたほうが無難かもしれません。

ただし、リンパリラックスヨガはホットヨガの中でも一番温度と湿度を高めてやるものらしく、他のヨガならどうかはわかりません。心配な方は聞いてみるといいでしょう。

しかしながら、LAVAという教室自体はとてもいいところだと思いますよ。とても気遣ってくれたので。

  ただねぇ・・・ リンパリラックスヨガのやり方を憶えて帰るつもりが、グロッキー状態でやっていたのでほとんど何も憶えてない・・・。 嗚呼、1000円も払っていったい何やってんだか。。。



私の風邪予防法&撃退法

まだまだ寒いですね。
正月早々「あなたの風邪予防法」という懸賞に応募したんですが、300字以内とのことであまり詳しく書けなかったので、こちらで補足を。

ほとんどが「ちょっと前まで風邪によくないとされていたこと」です。


目次



カレーライスを食べる
21d2f942
よく間違えられるんですが、「風邪予防にはカレーがいい」というと、「かれい?」と魚かと思われるんです。昔、水谷豊の『熱中時代』でもありました。校長先生の家に一緒に住んでいる美人教師が風邪で寝込んでしまい水谷豊が夕飯を作ることになる。何が食べたいかと訊くと「かれい」と魚を頼んだのに「カレー」と勘違いしてしまい、作ってから「風邪ひいてるときにカレーライスなんて」と文句を言われる。

それぐらい、カレーライスは香辛料の塊で刺激物だから風邪で胃腸が弱っているときには食べないほうがいいとされてきたんですよね。

でも、これは間違いなんです。

カレールーの主成分であるウコンが風邪にめちゃ効くんです。無性にカレーが食べたくなるときってありますよね? あれは、脳はカレーが風邪に効くと知っているから、風邪を引き始めたときに「カレーを食え」と必死で指令を出しているんです。無性にカレーが食べたいときは食べたほうがいいですよ。体の声には素直に耳を傾けましょう。


お粥は食べない
614cb774
これはカレーとは逆で、胃腸が弱っているときは消化にいいお粥を食べるというのが長らく常識でした。 

でも、間違いなんですね。

お粥って噛まずに飲み込むでしょ。だから唾液が消化活動にまったく参加できないんです。そのため胃腸に負担がかかってしまって逆効果なのです。

ご飯でもパンでも、普通の固さのものをよく噛んで食べる。これが大事なんです。よく噛めば唾液がたくさん出て胃腸にかかる負担は減りますから。


呼吸器系を強くするストレッチ
肩甲骨背伸びストレッチ

これは人に話すと決まって「そんなの初めて聞いた」と言われるんですが、私は生まれつき風邪をひきやすい骨格なんです。

え、骨格!? なぜ骨格で風邪になるの???

はい。ある整体師さんが言うには、肩の骨や背骨が内側に曲がっているから呼吸器系が圧迫されて弱くなっている、ということです。

手術して直せばいいのでは? という人もたくさんいますが、それは無理です。手術してもすぐ元に戻るんだそうです。それぐらい生まれもった骨格というのは根強い。あのブラックジャックだって「いくら俺でも遺伝病は治せない」とあっさり言うでしょ。

この生まれついた骨格から来る体質を少しでも解消するのが画像のようなストレッチです。

まず、両手をまっすぐ上に挙げて手を組み、胸に大きく息を吸ってその状態で状態を反らせ、そこで息を止めたまま体の動きも止めます。同様に胸に(お腹じゃダメですよ)大きく息を吸い込んだ状態で左右、斜め45度もやります。 これで呼吸器系が強くなります。普通の骨格の人がやったらさらに強くなるはずですから、今日からでもやりましょう!

入浴
4351a5b0
これはいまや常識だと思いますが、入浴です。 入浴も昔は「風邪をひいたときは入ってはダメ」という迷信がありましたが、体温を上げて免疫力を高める入浴は風邪の治癒にうってつけです。それでなくても冬の夜に入浴なしで布団に入っても眠れませんし。


紅茶うがい
9b01ed9e
これもだいぶ知られるようになりましたが、本当に効きます。

もともとイギリスに紅茶文化はなかったって知ってました? インドを植民地にしたとき、大量の紅茶を本国で売って大儲けしようと企んだ王室と政府が、当時流行していたコレラの予防にいいと宣伝したら大当たりして紅茶文化が根づいたそうです。

コレラ菌を殺してくれるくらいだから風邪にいいのも当たり前ですよね。 緑茶でうがいするのもいいらしいです。紅茶も緑茶もついでに烏龍茶も原料は同じですから(これも知らない人が多いです)効くと思いますよ。(私はやったことありませんが)

上記5つの予防法と撃退法、ぜひお試しください!



生涯最高の飯はこれだ!



もう何か仕事でへばってばかりでヘロヘロ状態ですが、こんなときこそブログでも書いてストレス発散しましょう。

今日は、これまでの40年以上の生涯で最高にうまかった料理の紹介です。


8262e170361ddf09dd4df2160730c5cf


え、おまえの生涯最高の飯ってこれ??? と笑われそうですが、本当にこれなんです。シチリアの州都パレルモで食べた「イカとセロリをオリーブオイルで炒めて塩コショウしただけの料理」。

これはもちろん前菜で、このあとにパスタが来て、魚料理が続いたんですが、この最初のイカとセロリが抜群にうまかったんですよ。

これにはいろいろと伏線があってですね、まず、ミラノの兄貴の家から一人飛行機でシチリアに行き、そのときはいまほどシチリア旅行がポピュラーじゃなかったから、兄貴は会社の人に「何でシチリアなんかに行きたいのか」とさんざん聞かれたそうです。「『ゴッドファーザー』で見た風景を見たいと本人は言っている」というと、「その筋の人なのか⁉」と本気で驚いた北イタリア人たち。何しろ彼らにとってローマより南はすべてアフリカなんだそうです。(ついでにいうと、ドイツ人にとってはアルプス山脈より南はすべてアフリカなんですって)

でですね、その日は一人でパレルモを観光してたんですが、東洋人そのものが珍しいのかジロジロ見られてばかりでした。でも、みんなとても親切でした。(ミラノでは「あっち行け、シッシ!」なんてやられたもんですがね)

しかしいくら周りが親切でも地球の反対側まで来て本当に帰れるんだろうか、と途方に暮れていたんですよ。何とかホテルは英語が通じたからよかったですが、そのホテルで地図をもらってレストランの場所を教えてもらったらアーラびっくり! ぜんぜん違うではないですか。

あっちへ行ったりこっちへ行ったり、ただでさえ腹が減ってるのに歩き疲れてやっとこさ辿り着いたらば、マフィアの準構成員みたいな顔をしたウェイター(シチリアではみんなそういう顔に見えるのです)が「ほんの少しだけ英語しゃべれる」というからお互い片言の英語でやり取りしたんです。

そこから二人でアーデモナイコーデモナイと、さんざん20分くらいしゃべくった末に「日替わり定食」を頼むことに成功しまして、そこからさらに15分くらい待って、やっとこさイカとセロリの前菜が運ばれてきたわけなんです。だから最高にうまくないわけがないんです!


 

日本語でネットを使えるのはノルウェー系アメリカ人のおかげ

水村美苗『日本語が亡びるとき ~英語の世紀の中で~』(ちくま文庫)読了。


t02200293_0480064013278512526

 
2008年に単行本が出たときにも読みましたが、文庫化にあたって大幅増補という惹句に惹かれて読み直しました。

インターネットの登場によって英語が「普遍語」の地位を確立し、日本人が学問や文学をやるには、英語で書かれたものを読み、しかも英語で書かなければならない時代になりつつある。というのが主旨。

そして、叡智を求める人が英語で読み書きするうちに日本語は痩せ細っていく。日本語で書かれた文学は読むに堪えないものになっていく。実際、いま書かれている小説のほとんどは読むに堪えないと。

しかも、その読むに堪えない小説ばかりを載せた国語教科書のあまりの薄っぺらさにも著者は牙を剥いていて、そうなのか、私が子どものころは漱石とか小林秀雄とか石川啄木とかその他もろもろ著者が「奇跡」と呼んではばからない「日本近代文学」のあれやこれやが載っていたんですが、いまは2割ほどなんですって。それはよくない。(とはいえ、私が子どものころでも国語の教科書に載っている文学作品というのはどれもこれも抜粋だった。外国では本を丸ごと一冊読むらしい。そのほうが絶対いい)

著者がもっと毒づくのは、「日本人にとって日本語を普通に漢字・平仮名・片仮名の3種類混じった言葉で書き、読むことが自明のことであること」に対して。

明治維新から戦後まで、英語を公用語にしようとか、話し言葉はそのままで書くときはローマ字でとか、そういう日本語排斥論が絶えず、漢字なんか使っていたら文明開化が遅れるとか、民主主義が根付かないとかの議論があったそうで、この本を読むかぎりでは、漢字・平仮名・片仮名まじり文で日本語を綴れるいまの状況はほとんど偶然に偶然が重なった奇跡に近いことだということ。

ほんのちょっとした神様の匙加減で、この文章もローマ字で書かなければならなかったかもしれないのです。

いや、そもそも仮に英語公用語化運動とかローマ字運動とかがなくても、「日本語は”読まれるべき言葉”である」という認識をもつ人がいなければ、こうやってネットに文章を書くときはローマ字を使う、あるいは英語で書かなければいけない可能性があったというから恐ろしい。

最近、たまたまちょっとした手元不如意のためにウィンドウズ・アップデートができなくなるという困ったことになって検索したらば、マイクロソフト社のページが出てきて、そこに、日本語はこちら、英語はこちら、フランス語はこちら、中国語は、朝鮮語は、ベトナム語は、ドイツ語は、スペイン語は、ポルトガル語は、アラビア語は、ペルシャ語は…と様々な言語でヘルプ画面が読めるようになっていて、「なるほど、世界中の人に対してフォロー体制ができてるのね」と呑気に思ったんですけど、よく考えれば、上から下まで全部スクロールするのに数秒で事足りるほどの言語で「世界中」をフォローできるわけがない。世界にはインドみたいに一国の中で何百、何千という言語をもつ国があったりするわけで、インドでも高学歴の人ならみんな英語ができるんだろうけど、そうじゃない人は自分たちの「現地語」ではネットを使えないということを初めて知ったのでした。

そして、日本語ソフトと端末さえあれば世界のどこにいてもネットに接続できるのが日本人にとっては当たり前のことになっているけれど、ではその日本語ソフトはいったい誰が開発したのか、ということには誰もかれもが無頓着です。

私はこの本の末尾50ページに及ぶ「文庫に寄せて」というあとがきを読んで初めて知りました。

何と漢字・平仮名・片仮名、つまり日本語の文字をアルファベットと同じような普通の文字として認識するソフトを開発したのはノルウェー系アメリカ人らしいのです。

この人がどういう出自、思想の持ち主かは明らかにされてませんが、この本の主旨から推せば、「日本語が亡びてはいけない」と思っている人なのでしょう。「日本語は読まれるべき言葉だ」と信じている人。

それが外国人だったという事実に驚愕しました。彼がいなければ私たちはこうやって日本語で文章を書いたり、日本語で検索して買い物したり、という当たり前と思っていることができなかったのです。この事実にもっと日本人は驚かねばなりません。

誰もが日本語は未来永劫存在しているだろうという楽天的な考えに浸っていることに著者は苛立ちを感じているのですね。私もちょっと恥ずかしくなりました。こうやって日本語で書くことが特権的なことだということを少しも考えたことがありませんでした。

一年の最後のブログが「言葉」に関するものになったという事実を偶然と思ってはいけないでしょう。これは神様のお計らい。

感謝と畏敬の念をもって来年からも精進していきたいと思います。



最新コメント
お問い合わせ
お問い合わせは、こちらまでお願いします。