聳え立つ地平線

ありえないものを発見すること、それを写し撮ること、そしてきちんと見せること。

音楽

五輪真弓『煙草のけむり』

五輪真弓といえば大方の人は『恋人よ』を挙げると思うんですが、あれもまさしく昭和を代表する名曲だとは思います。

でも私はこの『煙草のけむり』をこそ称揚したい。

哀しい歌です。具体的に何を歌っているのかは聴く人の解釈にゆだねられていますが、とにかく旋律が哀しい。

なぜか五輪真弓単独で歌っている動画がないので(あることはあるんですけど、やたら変なふうにアレンジされていて好きになれない)河合奈保子と歌っているこの動画を。




歌詞:五輪真弓

煙草のけむりの中に
隠れて見えない
あなたはどんな顔で
私を見てるの
初めて会ったときも
あなたは煙草をくわえ
そして言った

火を貸してください
僕の暗い心に
火を灯してください
あなたの赤いマッチで

煙草のけむりの中で
あなたは笑って
どうして君はそんなに
いい人なんだと
何も話してはいない
何も見えやしないの
なぜわかるの

火を貸してくれたよ
僕の暗い心に
火を灯してくれたよ
あなたの赤いマッチで

でも私には見えない
あなたの顔が見たい
煙草を吸わないで

煙草のけむりは
いつか消えてしまって
あなたもいつの間にか
いなくなっていた
なぜだかわからない
あれから口癖に
なってしまった

火を貸してください
僕の暗い心に
火を灯してください
あなたの赤いマッチで

火を貸してください
僕の暗い心に
火を灯してください
あなたの赤いマッチで



うーん、切ない。心に沁みます。

煙草やマッチは何かのメタファーなんでしょうか。よくわからないけど、わかる気がする。

最近はメタファーのない歌詞が多いですね。それは「詩」ではなくただの散文。散文=小説が文学の代表として大きな顔をしているのは由々しきことです。

何か話が趣旨と違う方向へそれてきたので、このへんで。



煙草のけむり
Sony Music Direct(Japan)Inc.
2017-08-30


寺尾聰『渚のカンパリ・ソーダ』

寺尾聰が『ザ・ベストテン』に最初に登場したときのことはよく憶えています。
曲はたぶん『ルビーの指環』だったはずですが(違ったか)久米宏と黒柳徹子に「ファンに一言」と催促されて照れくさそうに言った言葉は、

「いつもは俳優ですが、今日は歌手です」

言葉よりもあの照れくさそうな表情がとても印象的でした。

『ルビーの指環』『出航 SASURAI』『シャドーシティ』の3曲が同時にベストテン入りするという快挙もありました。

もちろん『ルビーの指環』は大好きですし、昭和歌謡を語るうえで絶対はずせない名曲であることは論を俟ちませんが、私はあえて『渚のカンパリ・ソーダ』という名の知られていない曲を称揚したい。

これは『ルビーの指環』と共通点があるんですよ。寺尾聰の歌はほとんどすべて彼自身が作曲してるんですが、作詞は有川正沙子という人がやってる場合がほとんど。でも『ルビーの指環』と『渚のカンパリ・ソーダ』』はあの松本隆が作詞しています。

私がもっているベストアルバムは15曲収録されていますが、松本隆&寺尾聰のコンビはこの2曲だけです。

だからかもしれません。これは哀しい歌なのです。



少しは愛してくれ
夏の風も照れちまうほどに
八月は出逢う人を
恋人に変えちまうよ

ジリジリ焦げた肌に
ひとしずくの水を投げてくれ
渚から光る君は
サングラスも眩みそう

心を軽く乱され
いつもの俺じゃないのさ
カンパリのグラスあけてしまおう
君に酔ってしまう前に

若さを弾くように
笑いかける小麦色の夢
もてあます無邪気さなら
瞳閉じてしまおうか

ラジオは浮かれる音
あれは古いツイストのリズム
こみ上げる懐かしさに
時はいつも移り気さ

真夏のシャワー浴びると
景色も揺れてくるのさ
カンパリのグラス空けてしまおう
君に酔ってしまう前に

少しは愛してくれ
夏の風も照れちまうほどに
八月は出逢う人を
恋人に変えちまうよ


『ルビーの指環』の哀しさには遠く及ばない気もしますが、でもこれはこれでやはり哀しい。

ところで、京都の撮影所で働いていた頃、会社近くの王将で寺尾聰本人をお見かけしました。

持ち帰りの餃子を待って椅子に腰かけてました。店員からサインをねだられて快く応じていましたが、そのへんにいるしょぼくれたオジサンと何も変わらなくて唖然となりました。ベストテンに初登場したときの初々しさもなければ、含羞に満ちた表情があるわけでもなく、生活という桎梏のなかで疲弊した男の横顔だけがありました。『ルビーの指環』や『渚のカンパリ・ソーダ』の哀しさはそういうものとは違うもっとロマンティックなものだっただけにショックでした。

来月から「令和」とか。昭和はさらに遠くなりにけり。


REFLECTIONS
寺尾聰
ユニバーサル ミュージック
2018-09-19


欧陽菲菲「恋の追跡<ラブ・チェイス>」

欧陽菲菲を初めて聴いたのはもう20年ぐらい前でしょうか。

「雨の御堂筋」「ラヴ・イズ・オーヴァー」などが有名ですが、私が代表曲を選ぶなら断然「恋の追跡<ラブ・チェイス>」なんですね~。曲がノリノリなうえに歌詞もよく、歌い方がこれまたいい。

これを友人の結婚式の二次会で歌ってえらく盛り上がったことがまるで昨日のことのように思い出されます。




「恋の追跡<ラブ・チェイス>」
作詞:橋本淳 作曲:筒美京平

逃げるあなたを止めて
恋の終わりを止めて
何があなたを変えた
いまは捨てないで アアッ!

他の誰かに
よそ見しないで
恋は渡せないのよ

急ぐあなたを止めて
募る想いを止めて
私以外の人に
いまは生きないで アアッ!

恋のしずくを止めて
濡れたまつげを拭いて
誰があなたを変えた
ひざまずきたいわ アアッ!

望みどおりに
変えてほしいの
すべてあなたのものよ

つれないことはやめて
捨てたふりならやめて
憎めないのよ、いまは
すがりつきたいの アアッ!

他の誰かに
よそ見しないで
恋は渡せないのよ

急ぐあなたを止めて
募る想いを止めて
私以外の人に
いまは生きないで アアッ!


どうでしょう、この狂った歌。狂おしいほど愛してるという感じでしょうか。
何度も繰り返される「アアッ!」がいいんですよね。カラオケで歌うとここで異常にウケます。

一度試してみては?


エッセンシャル・ベスト 1200 欧陽菲菲
欧陽菲菲
ユニバーサル ミュージック
2018-03-21



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