連続ドラマ

2020年03月03日

『コタキ兄弟と四苦八苦』は第1話がとても面白く(感想は⇒こちら)あの感じで押してくれるのかと思ってたら期待とは違ったので、最近見るのが億劫だったんですが、昨日の第8話「五蘊盛苦」がとても面白かったので筆を執りました。


女の悲哀を描くにあたって男の体が入れ替わる?
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今回の主人公は喫茶店「シャバダバ」のアイドル、さっちゃんこと芳根京子。前回出番がなかったので作者が見せ場を作ってあげたんでしょう。

しかしながら、それならそれで芳根京子のほうに何らかの仕掛けをするのが普通でしょうが、野木亜紀子さんはそんな凡庸なことはせず、古館寛治と滝藤賢一の体を入れ替えるという奇策に打って出ました。

これはすごいことです。

だって芳根京子の話なんですよ。なのに主役とはいえ兄弟のほうに仕掛けをするというのはなかなか思いつきません。

で、Y字路で流れ星を見たのが入れ替わりのきっかけだと判明し、その結果、芳根京子も交えて三人でどんどん体が入れ替わる乱打戦になる。芳根京子の体になった滝藤賢一が「お約束だろう」と胸を揉もうとしたりするんですが、その過程で、芳根京子が同性愛者で「男になりたい」という願望をもっていることが明らかになります。

なるほど、そのための体の入れ替わりだったのか。それで「五蘊盛苦」だったのか。

私も御多分にもれず仏教用語には詳しくないんですが、番組では「肉体と心がうまくいかない苦しみ」(でしたっけ?)というような簡単な説明でしたが、実際はいろいろと複雑な意味のようです。

私は同性愛者ではないからよくわからないが、もしそうだったら「女になりたい」と思うものなのかしらん。ぜんぜんわからない。でも、芳根京子が「男になりたい」と思うということは、同棲していた恋人は「女のままでいたい」と思ってたってことですよね。違うか?

ただ、野木亜紀子さんがすごいのは「五蘊盛苦」に苦しむ一人の女性を解放する言葉として「すべての道はローマに通ず」をもってきたことですね。


すべての道はローマに通ず!
作品内でこの言葉は、

「どれだけ遠回りをしても、最後はあるべき場所にだどり着く」

というような意味だと古館寛治が滝藤賢一に教えますが、その前にクドカンが芳根京子に言う言葉が秀逸です。

「五蘊は空です。あなたはあなたがあなたをあなただと思うからあなたなのであり、他の誰かがあなたをあなただと思うからあなたなのです」

芳根京子は理解できないと言いますが、そんな彼女にクドカンは「すべての道はローマに通ず!」と指差します。

その先にあるのは……

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この少女はかつての芳根京子であり、二人の男は古館寛治と滝藤賢一であることが明らかとなります。

これはどういうことなんでしょう?

芳根京子は紆余曲折を経て「あるべき場所」へ帰ってきた。その「あるべき場所」がコタキ兄弟のいる喫茶店「シャバダバ」ということのなのでしょうか。

確かに彼女はそこで爆睡していた。その間、客の兄弟が店を切り盛りしてくれていた。彼女にとってあの店は「ふるさと」なのかもしれません。

が、かつて恋人と同棲していた部屋は「もうない」とも言っていた。あの部屋は、つまりあの恋人は一緒にいるべき人間ではなく、芳根京子にとっての「運命の人」とはコタキ兄弟のことなのでしょうか。

そこらへんはよくわかりません。

私が感服したのは、一人の女性の「五蘊盛苦」を描くにあたって「男の体が入れ替わる手」を使ったということ。しかもそれが夢だと判明したあとに仏教用語とはまったく関係ない「すべての道はローマに通ず」がすべてを解決に導いてしまうアクロバティックな作劇!


芳根京子
ただ、惜しむらくは、芳根京子がそのような複雑な情感を表現するにはまだ役者として未熟であるというところでしょうか。監督の演出も役者の想像力もぜんぜん足りない気がします。シナリオがまずかったらすべてが台無しになっていたかも。


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とか言いながら、私はこの女優が好きになってきたのでありました。「変な顔」だと思っていたけど、すごくかわいくなってきたと思う。





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2020年01月16日

2020年1月期に見始めたドラマとアニメは全部で6本。

見始めた順に簡単な感想を。


『贋作 男はつらいよ』
これはきつかったですね。桂雀々はまだ芸達者なほうでいいんですが(でも渥美清のほうが百万倍は上)常盤貴子の芝居とか見てられない。どうしても倍賞千恵子と比較してしまう。他の面子も同様。
お話がどうとかいう以前に、というか、同じ話じゃないですか。同じ話だからこそ役者の芝居で魅せてくれないと見てられない。第1話でリタイア。


『映像研には手を出すな!』
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『四畳半神話大系』の湯浅政明監督が5年ぶりに手掛けるというテレビアニメ。
第1話では「メタ・アニメ」なのかな、と思ったら、第2話では特別そういうわけでもなく、アニメ好きが自分たちが作ろうとしているアニメの世界で楽しく遊んでいるだけというか。登場人物たちは楽しいんだろうけど、見ているこちらは少しも楽しくない。出演している芸人たちだけが楽しんでて少しも笑えないバラエティと同じようなものか。
次回以降の展開に期待します。


『pet』
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東京時代の恩師である村井さだゆきさんがシリーズ構成をなさっているということで見始めたんですが……うーん、これは面白いとか面白くないとかいう以前に私には合わないです。世界観なのか何なのかはわからないけど。恩師の作品ですが2話の途中でギブアップ。


『知らなくていいコト』
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吉高由里子の作品はすべて見るようにしています。女として魅力があるとは思わないけど、女優としては素敵すぎる。なぜなら「主役しか似合わない」から。あんなに個性豊かな役者が脇にいたら主役の邪魔になってしまう。だからこの子が脇役の作品って私はデビュー作の『紀子の食卓』しか知らない。あの映画でも異彩を放っていました。(もう14年前!)

それはともかく、この『知らなくていいコト』はなかなか大きなテーマを扱っていますね。

母親が死ぬ直前に「あなたはキアヌ・リーヴスの子だ」と言い、まさかとは思いつつも喜んでいたら、実は殺人犯の娘だった。第1話では「殺人犯の遺伝子」を理由に彼氏に振られ、第2話では「DNAマッチング婚活」なるものが取り上げられる。

市川由衣(何でこんな役で出てるんだろうと思ったら、そういうことかという展開でしたね)のセリフがすべてを象徴しています。

「洗脳じゃありません。科学です」

洗脳は宗教の分野だとでも言いたいのでしょうが、いかんせん、科学もまた宗教なんですよね。たいていの科学者(特に数学者や物理学者)は神の存在を信じているらしいですから。

DNAの魔力を信じて吉高を振った重岡大毅と、そんなものなどどこ吹く風と彼女が殺人犯の娘と知りながらプロポーズした元カレの柄本佑。一人の女をめぐる二人の男の対立がこの物語を貫くメインの葛藤ということになりましょう。

そこに「科学」と「宗教」がどう関わってくるのか。いや、科学など私にはどうでもいい。「宗教」の領域に踏み込んでくれなくては意味がない。

「好き」という気持ちだって「宗教」ですから。


『彼らを見ればわかること』
耐えきれず20分ももたずにリタイア。なぜ小説家に脚本を書かせたんでしょうか? 脚本家に小説は書けても小説家に脚本が書けるとはかぎらないのに。戯曲>シナリオ>小説の順に難しいのは常識です。


『コタキ兄弟と四苦八苦』
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前作『獣になれない私たち』は好きになれなかったけど、『逃げ恥』の野木亜紀子さんの新作ということで見始めました。開巻早々「監督:山下敦弘」と出たので不安になりましたが、テレビドラマは映画ほど監督の色が出ないのか、あまり間延びしてなくてホッと一安心。

常識的な兄と非常識な弟という鉄板設定。しかも未婚の兄に対して弟のほうが人情味があってモテそう(既婚)というこれまた鉄板設定。

この二人は『第三の男』のジョゼフ・コットンとオーソン・ウェルズですよね。人情よりも社会正義を重んじるジョゼフ・コットンが古館寛治で、不正を犯したオーソン・ウェルズが滝藤賢一。女=アリダ・ヴァリ=市川実日子は、違法だけどやさしさを見せる滝藤賢一を選び、社会正義を貫いた古館寛治は決して選ばれない。

それだけなら名作を焼き直しただけですが、滝藤賢一も妻から離婚を迫られているのにサインできない。「他人の離婚届なら簡単にサインできるのに」というセリフがこのキャラクターをより深いものにしていると感じました。

この作品も二人の男がメインの対立軸ですね。

『知らなくていいコト』と『コタキ兄弟と四苦八苦』、どちらに軍配が上がるか。

どっちも頑張れ!!!





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2019年12月28日

今年もいつの間にやらあと3日となりました。

毎年のように、映画ベストテンは最後に発表することにして、テレビドラマや本のベストを発表していきたいと思います。

今年は新作ドラマにそれほど実りが少なったのと、旧作に見るべきものが多かったこともあり、新旧織り交ぜて、さらには実写もアニメも一緒くたにしたベストテンです。太字が新作。


全裸監督
②半沢直樹
③ヴァイオレット・エヴァーガーデン
④逃亡花(のがればな)
⑤響け! ユーフォニアム
⑥響け! ユーフォニアム2
俺の話は長い
⑧四畳半神話大系
詐欺の子
⑩沿線地図



新作が少ない。まぁ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』と『逃亡花』は去年のだし、『ユーフォ』2作もつい最近ではあるけど、『半沢直樹』や『四畳半神話大系』をつい最近まで見ていなかったのは不覚としか言いようがない。

以下、簡単なコメントを。


①全裸監督
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やはり今年はこれでしょう。テレビドラマじゃなくて配信ドラマじゃないかという声が聞こえてきそうですが堅いこと言うのはやめましょうよ。そもそも私はNetflixに9月しか入ってないので他に見た配信ドラマは一本もなし。配信ドラマのベストテンなんか選べやしない。

三谷幸喜は配信で作るにふさわしいドラマは何か勉強中と語っていたし、これからは配信が主流になるのか。ただ先日書いた押井守の言葉がずっと引っかかっている。配信作品を見る側は安い金額で見放題で利点が多いけれど、作り手はほとんど手応えを感じられないという。

この大傑作『全裸監督』の作り手たちは、おそらく「『全裸監督』のおかげでNetflix加入者が大幅に増えた」ということでそれなりの手応えを感じているとは思うのだけれど、全視聴者のうち何割が最後まで見たのか、という情報をまったく教えてもらえないのはつらいと思う。

潤沢な資金で80年代歌舞伎町のセットを作り、アメリカロケまで敢行したこの作品の面白さにはケチのつけようがないけれど、視聴する側の思いばかり尊重していると作り手からそっぽを向かれますよ、とだけは申し上げておきたい。


②半沢直樹
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銀行マンの兄から見ろ見ろと言われていた作品。6年たって初めて見た。そして釘付けになった。

「やられたらやり返す。倍返しだ!」

がなぜ流行語になったのかよくわかる。『家政婦のミタ』ともども最終回視聴率40%ごえは伊達じゃないということ。ヒットするにはそれなりの理由がある。緻密な脚本、適材適所の配役、編集のうまさ、そして「情報」としての面白さ。

かつて大島渚は「映画は娯楽でもあるだろうし芸術でもあるだろう。でもそれ以上に『情報』だと俺は思う」と言っていたけど、この『半沢直樹』も原作者が元銀行員だけあって銀行内部の情報や金融庁との駆け引きなど魅力的な世界が描かれていました。ごちそうさま。


③ヴァイオレット・エヴァーガーデン
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実は去年の1月にオンエアで見始めたんですけど、なぜかあのときは体調でも悪かったのか、少しも面白いと思えなくて見るのをやめたんです。

京アニと縁の深い会社で働いている友人が「面白いからぜひ!」というから見ようとTSUTAYAに行ったら去年の作品なのになぜか在庫がない。というわけでNetflixに入ったんですけど、俺はいったいどこを見ていたのかと思うほど引き込まれた。特に画像を上げた第10話。これしかないという完璧なプロットの運び方。

かつて脚本家の高橋洋さんは、

「まるで弾道のように、こうでしかありえない物語の軌道のことを『プロット』という」

みたいなことを言ってたけど、まさにこの10話はそれ。ただ、主人公とその憧れの存在である大佐(少佐だったか?)のエピソードはあまり好きじゃない。10話とか、何話か忘れたけど同僚の故郷に行って失恋する彼女のために手紙を書く回など、大佐がらみじゃない回のほうがずっと好き。


④逃亡花(のがればな)
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これも去年見始めたんですけど、なぜか5話くらいで録画に失敗しまして、全部見ないと気がすまない私は途中でやめました。そしてつい最近までずっと忘れていた。

TSUTAYAにてレンタル。はまった。二転三転する物語。そして意外な結末。ただ、あの真犯人は前半のうちに出しておかないといけないとは思う。でも、ま、あばたもえくぼ。


⑤響け! ユーフォニアム
⑥響け! ユーフォニアム2

これも京アニ関係の友人のお薦めで見てはまった。劇場版はさほどよくなかったけど(次も見る)このテレビシリーズはたまりませんな。

とか言いながら、やっぱり去年の映画ベストワンに選んだスピンオフ『リズと青い鳥』のほうが好きだったりする。


⑦俺の話は長い
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小池栄子が見たいというだけで見始めたけれど、最後まで次週が楽しみで仕方なかった。

でも、あのラストには納得いかない。あそこまでニートという、世間的にはネガティブにしか受け止められない人間に対して深い愛情をもって描いていたのに、結局ニートを卒業するのが結末というのはつまらなくないですか? 作者は最初からニートの主人公にネガティブな思いを抱いていたってことですよね。鼻白んだ。

周りがニートを卒業せよと言うのはわかる。でも作者までその声に引きずられてどうするんだと。ニートはニートのまま、つまり主人公は成長しないけど家族の関係性に大きな変化が起きる。そういうのが見たかった。ビルドゥングス・ロマンにしてしまってはいけない。


⑧四畳半神話大系
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これもすさまじい作品でしたね。とにかくオープニングクレジットもエンディングクレジットも粋で、そのエンディングクレジットで最終話が始まり、最後はオープニングクレジットで幕を閉じる。どこまでも粋なのでありました。来年の『映像研には手を出すな!』がとても楽しみ。


詐欺の子
沿線地図

この二作については感想を書きました。リンクを貼ってますのでよろしければどうぞ。『沿線地図』もラストに納得できなかったなぁ。

というわけで、来年はもっと新作に質の高いものを切に望みます。


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