聳え立つ地平線

ありえないものを発見すること、それを写し撮ること、そしてきちんと見せること。

連続ドラマ

『刑事ゼロ』1話(大逆転! しかし……)

昨日から始まった沢村一樹主演の『刑事ゼロ』
記憶喪失で20年間の記憶を失った刑事が活躍するというので面白そうだと思って見始めたんですが……


keijiZERO

苦手な本格ミステリ
はっきり言って途中で見るのやめようかと思いました。

何しろ私は本格ミステリというのが苦手でして。昨日の1話でも「源氏香図」というのはまったく知らなかったので雑学としての面白さはあったものの、それに沿って殺人を犯していくという見立て殺人というのがぜんぜん乗れない。あんなふうに人を殺す人なんていないでしょ、と、たまに本格ミステリを読むといつも思ってしまうんです。

でも、『刑事ゼロ』で扱われる事件がすべてそういうものかどうかはわからないし、と思って見ていましたが、しかし、この物語の一番の勘所は犯人が誰かとかトリックは何かとかそういうことじゃなくて、主人公が記憶喪失だということですよね。


なぜ刑事を続けるのか
沢村一樹がなぜ刑事を続けようとするのかわからなかったんです。必死で記憶喪失を隠して刑事を続けようとし、部下の瀧本美織にばれて監察に言うと言われ、それでも続けると。20年前は交番勤務だったようで刑事に対する憧れはあるんでしょうけど、それだけで記憶喪失なのに続けるだろうか、と。

瀧本美織を必死で説得する場面で少しは納得できましたけど、まだ何かわだかまりがある。

と思っていたら……


大逆転!
もともとおかしいと思っていたんですよね。看護婦と言わずに看護師と言っていたのは気づきませんでしたが、スマホの操作の仕方をなぜ知ってるんだろうとは思ってました。叔父の医師・武田鉄矢に、

「実は20年間の記憶をすべて失っているわけではない。刑事に関することだけを忘れている。忘れているというより、記憶はあるがそれを思い出そうとすると無意識が拒否する。刑事であることにかなりのストレスがあったようだ」

みたいな意味のことを言いますが、これで俄然興味が湧き、来週も見ようと思いました。

『仁義なき戦い』の脚本家・笠原和夫は、「枷は主人公の心のあり方にこそ求めるもの」という教えを遺していますが、このドラマはまさにそれですよね。

主人公の無意識は刑事を辞めたがっている、でも警察官を志した彼の正義感はそれよりも強い。交番警察官だったころの純朴な主人公が、名刑事と謳われた心の中のもう一人の自分との闘い。面白そう。

ただ、それと事件の謎解きがリンクしていないのが気掛かりです。昨日の見立て殺人の謎解きはそれとは関係なく、ただ沢村一樹が刑事の嗅覚を失っていないことを瀧本美織に思い知らせるためのものだけだったような……? 

来週からの事件は記憶喪失とのリンクがあるのでしょうか。記憶の秘密が明らかになると、彼が必死で刑事を続けようとした動機にも納得がいくのでしょうか。

これからどういう展開を見せてくれるのか、とても楽しみです。



2018テレビドラマベスト5!

いつもは映画のベストテンしか選ばないんですけど、珍しくテレビドラマのベストでも選んでみようかと思い。ただの気まぐれ。

といっても、私の場合、見始めるのは結構な数なんですが、この先面白くなりそうにないと直感で思ったら容赦なく途中で見るのやめるので、最後まで見たのはほんのわずか。単発ドラマもそれほど見ないので10本にはどうしても到達しないのでベスト5ということに。

では、その5本は以下の通り。(放送当時に感想を書いたものにはリンクを貼っています)


①弟の夫
dele/ディーリー
③フェイクニュース
④リーガルV ~元弁護士・小鳥遊翔子~
義母と娘のブルース



1本ずつコメントすると……

①弟の夫(脚本:戸田幸宏)
otoutonootto

今年はもうこれですよね。連ドラ(といっても3話しかないけど)をほとんど間をおかずに2回も見たなんて『王様のレストラン』以来かも。
弟とその夫を毛嫌いしていた佐藤隆太が変化する様子を丹念に描いて素晴らしい。しかしいくら変化して弟のことを理解できても、もう彼はこの世にいない。
「俺には弟がいた。リョウジが大好きだった」というモノローグが哀しく響く。


②dele/ディーリー(脚本:本多孝好、渡辺雄介、青島武、瀧本智行、金城一紀、徳永富彦)
dele

これも素晴らしかった。山田孝之の素晴らしさはもちろんのこと、菅田将暉がいいと思ったのは出世作『35歳の高校生』以来かも。
どの回が一番好きか、と訊かれたら……うーん、全部好きと答えたいけど、あえて高橋源一郎&余貴美子の3話と橋本愛&柴咲コウの5話かな。
どっしりした山田とちゃらんぽらんの菅田。いいコンビでした。


③フェイクニュース(脚本:野木亜紀子)
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『獣になれない私たち』にはついていけなくて2話でリタイアしましたが、これはキタって感じでしたね。フェイクニュースを追及していた主人公自身がフェイクニュースに踊らされていたというどんでん返しはかなり意外というか、見た人はみんな足元をすくわれたのでは? だからフェイクニュースは怖い。
「人間の目には自分の見たいものしか見えない」というアリストテレスの言葉が思い出されます。


④『リーガルV ~元弁護士・小鳥遊翔子~』(脚本:橋本裕志)
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これはちょっとシナリオに難ありかな、と思います。だって、結局、敵であったはずの向井理の裏切りによって勝つわけでしょ? 敵失で勝利というのは痛快ではあるけどつまらない。ではなぜここに挙げているかというと、なにより画像の6人が素晴らしいから。適材適所のキャスティング。役者で魅せる正攻法。
米倉涼子は『ドクターX』とどこが違うのかという批判もあるようですが、それを言ったら『35歳の高校生』も同じような芝居だった。別にいいんじゃないですか。ジョン・ウェインだってイーストウッドだってどの映画でも同じなんだし。そんなの批判の理由にならない。
ただ、私は米倉より林遣都こそ、この『リーガルV』の世界を根底から支えていた功労者だと信じていますが。


⑤義母と娘のブルース(脚本:森下佳子)
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リンク先の感想を見てもらえばわかりますが、私はこの作品を買っておりません。どうしても竹野内豊が死んでからがつまらないので。
ただ、彼が死ぬ5話までは破格の美しさでした。もし6話以降もあの味わいが続けば断トツのトップだったでしょう。
とにかく綾瀬はるかが素晴らしい。彼女でなければ出せない味でした。


というわけで、これが私の今年の5本。次点には中村アンの『ラブリラン』を。

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弟の夫 [DVD]
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2018-07-27






『王様のレストラン』オーディオコメンタリーが面白い!

三谷幸喜の不滅の大傑作『王様のレストラン』DVDのオーディオコメンタリーを聴いたんですが、これがやたら面白かった。



登場人物名の由来
まず驚いたのが、この物語は「弁慶と牛若丸」がベースなんですってね。千石さんが弁慶で禄郎が牛若丸。だから平安時代から鎌倉時代の人の名前をもじっているとか。

千石武の武は武蔵坊の武で、禄郎は「九郎義経」から来ているとか。三条政子は北条政子から(最初の台本では「南条政子」だったとか)。ディレクトールの水原範朝は禄朗の兄だから源頼朝から。「源」はサンズイに原なので「水原」にしたとか。へぇ~~~。

とはいえ、11話全部で作者の三谷幸喜がホスト役を務めるということで、作劇に関する秘術など伝授してもらえるのかと思ったらぜんぜん違いましたね。だいたいは俳優さん同士で遊びに行った話とか、お互いの芝居を見に行ったとか、あのシーンは誰それのアドリブとか、そんな話ばかりで。

でも、不満だったわけではありません。すごく面白かったです。

とはいえ、あくまでもこのブログでは、例えばデュヴィヴィエ役のジャッケー・ローロンがフランスで映画監督になったとか、梶原善は誰に対しても失礼だったけど誰とも仲がよかったとか、死んでしまった伊藤俊人がやたらマニアックなエッチビデオを共演者仲間に貸しまくっていたとか、そういう話には触れません。

やはり私にとって興味深いのは、作劇術は語らなかったけど三谷幸喜のプロ根性とか、松本幸四郎の「エッチビデオから古典芸能まで」とか、そういう話。


自分の作品は見ない
三谷幸喜が毎回ゲストに訊いていたことのひとつが、

「自分が出演した作品を見るかどうか」

ということでした。

見る人もいれば山口智子みたいに「究極の飽き性」で新しいことを吸収することばかり考えてるから見ないという人もいる。
でも、見るという人も「このドラマだけ特別」という感じで、普通は見ない人が多かった印象。

それよりも、三谷幸喜の「自分の作品を見るのがいや」という言葉が興味深い。

「僕にしかわからないミスというか、もっとこうすればよかった、こういうセリフにすべきだったとか、反省することばかりだから基本的に見ません」

とのこと。自分の作品を「会心の出来だ!」とかいって読んでほくそえんでいる私とはそういうところが違うんだなぁ、と。

でもオンエアでは必ず見るそうで、というか、オンエアでしか見ないそうです。もちろん録画じゃなくて生で。山口智子は「日本中のいろんな人がいま同じものを見てると思うとすごくいやになるからオンエアでは絶対に見ない」と言っていたのとは好対照。

三谷幸喜がなぜオンエアで見るかというと、裏番組のチェックをしたいから、とのこと。CMになったらすぐ裏番組を見て面白そうだったら「やばいな」とか、いろいろ考えるそうです。

この人がCMを入れるタイミングも脚本に書いてることは知ってましたが(『今夜、宇宙の片隅で』のシナリオ集にはっきり書かれていました)出演俳優がスポンサーのCMに出ている場合は、その俳優のアップで終わらないように書くんだとか。そこまで考えて!? すげー!


松本幸四郎の「総合芸術論」
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エッチビデオから古典芸能まで上手下手というものがある。と力説する千石さんこと松本幸四郎。あまりにエッチビデオを語るのでやっぱりこの人はすごく面白いんだなぁと思いましたが(あとダジャレが大好き!)もっと印象に残ったのは「総合芸術論」でした。

「芝居や映画は総合芸術と言われますが、いま、それを履き違えている人が多いんじゃないか」

「脚本家、俳優、演出家、カメラ、美術、小道具、音声など、自分の役目だけを極めた人が集まってそれぞれの技を総合するのが総合芸術だと思われている節がある」

「本来の総合芸術とは、俳優も芝居だけでなくホンのことも演出のこともカメラのこともわかっている、カメラマンもカメラ以外のことがわかっている、一人一人がすべてのことをわかったうえで自分の専門分野の技を出す、ということだと思うんです」

うーん、深い! さすが数十年も舞台に立ってきた人の言葉だな、と。

とにかくめったやたらに面白かったです。


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