聳え立つ地平線

ありえないものを発見すること、それを写し撮ること、そしてきちんと見せること。

経済・政治・国際

『人工知能は資本主義を終焉させるか』(齊藤元章の大きな誤り)

人工知能と経済学の関係を研究する経済学者の井上智洋さんと、スパコン・人工知能エンジン開発者の齊藤元章さんの対談本『人工知能は資本主義を終焉させるか 経済的特異点と社会的特異点』(PHP新書)を読みました。


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齊藤さんは何でもつい最近、東京地検特捜部に詐欺容疑で逮捕されたらしく(逮捕されたせいで『プロフェッショナル 仕事の流儀』が放送見送りになったのはこの人だったのかと初めて知りました)これはもしかすると齊藤さんの思想が原因の国策捜査なのかな、という気もします。

ことの真偽はまったくわかりませんが、この本は非常に面白いところとあまりにアホすぎるところの差が激しい珍本でした。

面白いと思ったところは、

・『21世紀の資本』のトマ・ピケティの「R>G」という不等式について
・安土桃山時代の日本の軍事力は世界最強だったこと
・累進課税と言いながら、超高額所得者は逆に税率が低くなる
・ベーシックインカムとヘリコプターマネー
・「人類補完計画」

人類補完計画は齊藤さんの計画ですが(『新世紀エヴァンゲリオン』のラストシーンみたいなのを本当にやろうとしているようです。それも地球規模ではなく宇宙規模で)他はすべて井上さんが喋り手で齊藤さんが聞き手になっているときの話ばかり。

だから、井上さんの話は傾聴に値するのですが、齊藤さんの話には納得できませんでした。

人類補完計画だって、ブレイン・ブレイン・インターフェースといって、人間の脳と脳を直接つなぐことによって、すべての人類、宇宙に棲息するすべての知的生命体をひとつにつなぐことなんですが、そのことで私たちが得られる幸福度がどの程度のものかは知る由もありません。

脳と脳を直接つなぐことによって、うつ病の人がどれだけしんどい思いをしているか、ガンで苦しむ人がどれほどの痛みに耐えているか、歩けない人がどれほどの不自由を強いられているかを直接体感できるため他者への共感度が増す、というのはその通りでしょう。

しかし、脳と脳を直接つなぐのだから自分が考えていることが相手に筒抜けなわけですよね。それは嫌です。ほとんどすべての人が嫌なんじゃないですか。

だから、地球人すべての脳をひとつにつなぐよりも、隣の人の脳と自分の脳をつなぐことがまず難しいですよね。不可能では? 

スパコンと量子ニューラル・ネットワークというものを接続すれば、現在のスパコンが計算終了まで100億年かかる問題も瞬時に解決できてしまうという話があって、それ自体は面白い話ですが、人間は機械じゃないので「脳と脳を接続する」ことを嫌がる人のことを少しも考慮していないのはいかがなものでしょうか。

さらに、齊藤さんの夢は「地産地消・個産個消」らしく、地産地消はわかります。こういうのですよね。↓


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近代以前は自給自足の生活でしたが、それはたとえば100人の村があったらその100人ですべてを賄うやり方です。その100人はおそらく分業制だったはずで、絵のように刈り入れは女性がやって、男たちはその間に狩りに行くとか。

しかし、齊藤さんの提唱する「個産個消」というのは、まさに一個人ですべてを賄うやり方なんです。

「個産個消が可能になれば、誰にも頼る必要がなくなり、金銭も不要になるから犯罪も減るし、何より個性と創造性の爆発が期待できる」

うーん、、、本当に犯罪は減るのでしょうか。誰にも頼らなくて済むのでしょうか。

齊藤さんが忘れているのは、「隣の柿は赤く見える」ということです。

「自分に必要なものは自分ですべて賄えるのだから」と齊藤さんは言いますが、人間は必要じゃないものもほしがる生き物なんですよね。

「有名人のサイン」がいい例です。

あれは単なる「直筆の名前」にすぎません。何でそんなものがほしいの? と訊いてちゃんとした答えが返ってきた試しがありません。みんな「他人がほしがっているから、世間が価値があると言っているから」というただそれだけの理由で「自分もほしがっている」と勘違いしてしまうのです。

このようなことはコンピュータの世界に当てはめれば「バグ」に相当するんでしょうが、齊藤さんは「人間は常にバグを生み出し続ける生き物である」ということをすっかり失念しています。

お金のない世界はユートピアであるという主張には同意します。

しかし、そう主張していた人が詐欺を働いていたとして逮捕されました。

もし本当なら齊藤さん自身がバグだったわけだし、国策捜査としてハメられたのだとしたら、東京地検が、もっといえば日本という国家がバグです。

いずれにしても、「バグ」を生み出し続けるのが人の世であることは間違いなく、だから、やっぱり「人類補完計画」なんてアニメの中の夢物語にすぎないと思います。


投票しなかった人間に政治を語る資格はないのか

ツイッターで、「いままでほとんど投票に行ったことがない」という小林よしのりに対して「投票しないのなら政治を語る資格などない」と言ってる人がいました。フォロワーさんのなかにも、「投票したからこれで政治を語る資格を得た」みたいなことを言ってた人がいました。

本当に「投票しないと政治を語る資格はない」んでしょうか?

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例えば、ある映画を見ていないのにあーだこーだと難癖をつけるのはダメでしょう。批判したいのなら見なきゃダメ。ある店の料理を云々したいのであれば、その店の料理を食べてから。これは当然の真理でしょう。

で、これらを敷衍して「投票しない(選挙に参加しない)人は政治を語る資格はない」ということになる、と人々は思っているわけですね。

これははたして真理なのでしょうか?

映画や料理は商品ですが、では、政治における商品とは何でしょうか。「商品」と言って悪ければ「政治活動によって生じた産物」としましょう。選挙は立法府の代表を選ぶのだから、選ばれた人たちによって作られる「法律」が政治的産物でしょう。

投票しなければ、悪法が作られ、施行されても文句を言う資格がないと。

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なるほど、確かにそう思えてしまいますが、私は違うと思います。

だって、法律を作るのは「当選した議員」だけですよ。ならば、落選した候補者に投票した人には政治を語る資格はないことになってしまいます。

いやいや、そういうことじゃなくて、投票というのは大事な政治活動なわけで国民の大切な権利、それを放棄したのであれば政治を語る資格はない。という人もいそうですが、これも私には疑問です。

じゃあ、大病を患い、頼れる人もいない独居老人は投票に行けなかったばかりに何も言えないんですか? 行けなかったと行かなかったは違う? それをどうやって区別するんでしょう。

革命を起こそうという人は、きちんと投票してから武装蜂起しなくちゃいけないんですか? そんなバカな。もしそれが正当な言説であれば、これまで世界中で起こった政治闘争はすべて不当になってしまいます。

言論の自由や結社・集会の自由というのは、誰にでも等しく認められているものであって、それは憲法に明記されているじゃないですか。「投票した者にだけ自由を与える」なんて少しも書かれていない。投票を呼び掛けた人の大半はアンチ安倍で護憲論者が大勢でしたが、こんな基本的な憲法の精神も理解できていないことに驚きます。特にこないだの衆議院選挙は憲法をめぐる選挙でもあったはずなのに。

投票しなかったら罰金とか言い出す人もいて、みんなどうしちゃったの、と。そんなの「投票ファッショ」以外の何物でもないのでは?

投票による政治参加をしなかった者は、政治について語る資格がない。どれだけひどい生活を強いられても、それは自己責任である。

暴飲暴食によって透析が必要になった人間は、自業自得だから健康保険を受けられないようにせよ。病状が悪化しようが死のうが自己責任である。


後者はもちろん、あの長谷川豊の言葉ですが、この二つがどう違うのか私にはまったくわからないのです。

麻生太郎はなぜ謝罪したのか(戦争の動機は常に「正義」では?)

麻生太郎がヒトラー云々の発言がもとで謝罪したのがおととい。もう旧聞に属することでしょうが、おとといは体調が悪かったので書けなかったのです。


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それより、これはゆゆしき事態ですね。
いや、麻生がこういう発言をしたことより、みんなが謝罪にまで追い込んだというのが。

だって、戦争の動機っていつだって「正義」じゃないですか。
自分たちはあの国にこんなにも苦しめられている、だからもう宣戦布告するしかない、と戦争するわけでしょ。

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ヒトラーだって「ユダヤ人が、共産主義者たちが我々の国を乗っ取ろうとしている」という危機感に駆られて戦争したわけでしょう? その危機感を共有する国民がいたわけでしょう? でなかったら、こんなに熱狂するわけがない。


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ちょいと前から問題になっているネトウヨたちだって、「日本は中国にこんなに苦しめられている。日本人は在日朝鮮人のためにこんなに割を食っている。だから…」ということじゃないですか。

ヒトラーだって、トランプだって、ネトウヨたちだって、動機は純粋な正義ですよ。

小池都知事が声明を出すのをやめたとかの、関東大震災での「三国人虐殺事件」。あれだって、「三国人が井戸に毒を入れた」とか何とかのデマが集団ヒステリーを呼んで起こったんでしたよね。集団ヒステリーって「自分たちは100%被害者」という信憑がなかったら生じない現象ですよ。

ヒトラーだって「ドイツ国民はユダヤ人と共産主義者、はては身体障碍者たちに被害を受けている」ということで大量虐殺しちゃったわけでしょう? あの頃のドイツ国民も大日本帝国臣民も集団ヒステリーに冒されていました。

その結果が悪いことは麻生だって認めてるじゃないですか。その結果からさかのぼって動機を客観的に評価するというのがどうにも解せない。

だって、当人たちが本気で「これが正義だ」と信じている以上、その正義の帰結としてどういう結果が生まれるかを見てみないとその動機の正邪は判定できないですよね。

これはもう「後出しジャンケン」です。

結果から動機をうんぬんするのは後出しジャンケン。逆にいえば、後出しジャンケンでないと、つまり不当なやり方でないと、動機の正邪を判定するのは不可能ということです。

私だって、麻生の「ナチスを見習うべきだ」という発言については許し難いと思うし、あの発言の主がいまだに副総理の椅子に座っているというのが不思議でしょうがないんですけど、今回の「ヒトラー発言」にかぎっていえば、謝罪するまで叩きまくったメディアや国民のほうに問題あり、と思います。




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地獄への道は正義によって舗装されている。

というのは誰の言葉だったか忘れましたが、麻生に謝罪させた国民だって自分たちのことを「正義」だと思っていたんでしょう? だから集団ヒステリーに冒されたかのように謝罪に追い込んだんでしょう?

こういうことを書いている私だって「正義感」に駆られて書いているわけですよ。みんな「正義」の旗印のもとに行動している。自分は邪悪だ、と認識して邪悪なことする奴なんかいますかね?

このようなことがまかり通るということは、日本は地獄への道を突き進んでいる、ということでは?




「50人の偉大な黒人選手」に物申す!

白人至上主義の暴動に対してトランプが「どっちもどっち」的発言をして非難され、一方でオバマが誰でも言えるようなツイートをしてツイッター史上最多のいいねを獲得したとか。

そういう国内事情を踏まえてなのか、アメリカで「50人の偉大な黒人スポーツ選手」なるものが載ったウェブサイトが公開されたそうです。

上位3人はこの人たち

1位 マイケル・ジョーダン

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2位 ジャッキー・ロビンソン

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3位 モハメド・アリ

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人種の壁に立ち向かったロビンソンやアリよりもジョーダンが上というのに納得がいかない人が多いとか。

また、50人の中にはタイガー・ウッズが入っていないらしく、いくらいろいろ問題を起こしたとはいえ、歴史的な選手なのだから入っていないのはおかしい、という意見もあるそうです。

まぁ、こういうのは映画のベストテンと同じで人それぞれ意見が違って当たり前なので、私は何とも思いません。

思うのは、こういう黒人に特化したランキングは「差別」だということです。

黒人を称揚しようと思ってのことなのは重々承知していますが、でもやはり、「黒人」と十把一絡げにするのは差別でしょう。

「女」とか「ユダヤ人」とか「障碍者」とか、一人一人または全体を見ずにカテゴライズすることが差別の本質なのだから。

こういう記事に対して「いや、あの選手が入っていないのはおかしい」と反論するほうが「筋違い」だと思うんです。





ネイマール移籍に関するスペインプロリーグ協会の政治的悪辣さについて



本当かなとちょっとは疑っていたネイマールのパリ・サンジェルマンへの移籍が実現してしまいましたね。

この問題では、
スペインプロリーグ協会(LFP)の悪辣さが最も際立っていると思うんですよね。


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(ネイマールとLFPのハビエル・テバス会長)


どういうことかというと、LFPの言い分は、2億2200万ユーロもの移籍金はUEFAの規定「ファイナンシャル・フェアプレー」に違反する「ファイナンシャル・ドーピング」だとして移籍金の受け取りを拒否すると言っているんですね。
私は、移籍金つまり契約解除金というものはPSGからネイマールを経由してバルサにわたるだけかと思ってましたが、LFPにいったん預けないといけないんだとか。

ファイナンシャル・フェアプレーに違反するのかどうかはともかく、LFPのハビエル・テバス会長の言い分はこうです。

「パリ・サンジェルマンはクラブと国による“ファイナンシャルドーピング”を行っていることは明らかだ。彼らの商業収入はレアル・マドリードとマンチェスター・Uの収入を足したものより多い。これはつまり彼らの商業的価値はこの2つのクラブの合計より高いということだが、こんなことは不可能だ」

「UEFA、EU、スイスのスポーツ仲裁裁判所に不服申し立てをする準備を完了している。これは基本的にリーガ・エスパニョーラが、一般クラブが国からの投資を受ける国営クラブと競わなくてはならない不公平を非難するものである」

というもので、合理的に感じられる言い分ですが、何かちょっと変ですよね。

だって、PSGが2億2200万ユーロの移籍金を用意したのは、バルサが同額の契約解除金を設定したからですよ。なぜその時点で注意しなかったのか。

PSGやチェルシーなら払えるでしょう。(レアルも払えるでしょうが、いかんせん、バルサから直接獲得したらフィーゴのときみたいな狂乱が起こるし、何よりネイマールの命が危ない)

つまり、昨季移籍金の最高額を更新したポグバのそれの2倍以上となる、とんでもない契約解除金を払えるクラブがこの世に存在することは誰の目にも明らかであり、10億ユーロだったらいくら何でもファイナンシャル・フェアプレーに違反する可能性はかなり濃厚になりますが、2億くらいだとPSGなら違反にならない可能性が高い。

それがわかっていたはずなのに、実際に払うとなってから受け取りを拒否するのは解せません。

まず考えられるのは、このテバス会長がレアルファンだから、というのがあるのかもしれません。レアルは払えるが払えない。だからこの一件には最初から無関係。もし「禁断の移籍」という問題がなかったら、つまりレアルが払う可能性があったら、テバス会長はバルサが契約解除金を設定した時点で「それはファイナンシャル・フェアプレーに違反する行為を生む」と痛烈に非難していたでしょう。ライバルを非難するのは小気味いいことですからね。

しかし払えるクラブは自国のリーグにはない。払うのはおそらくPSGだ。だから注意しなかった可能性が高いと私は思います。

仮に、バルサがネイマールの契約解除金を設定した時点で是正を促していたらどうなっていたか。

例えば、
解除金の上限は1億ユーロ、もしそれだけでは納得できなければ誰か好きな選手を少なくとも1人要求できるようにするとかにルールを変える。でも、それをやったら、ヴェラッティがバルサへ行ってしまう、それは避けたい。

何しろ、相手はPSGではないか。カタールではないか。彼らを悪者にしてしまおう。
ということで、PSGが払うことが明確になった時点でファイナンシャル・ドーピングだと非難し始めたんだと思います。

おそらくLFPは最終的には受け取るでしょう。だってネイマールがバルサを去ってくれるのはレアルファンのテバス会長にとってはうれしいことだろうし。でもただでは行かせないよ。少しでもこの事態を混乱させてバルサの新戦力獲得にブレーキをかけたいという思惑も読み取れます。

「フェアプレー」に違反しているのはPSGでもバルサでもなく、テバス会長です。騙されてはいけません。




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