昨日のアカデミー賞授賞式。元録音部の私には非常に興味をそそられる話題が出ました。
それは……
録音賞と音響編集賞の違い
日本側スタジオで解説をしていた映画評論家の町山智浩さんがこんなことを言っていました。
ツイッターから引きましょう。
これだから現場を知らない人間は……と思ってしまいます。
トーキーになって最初の頃、録音賞は「サウンド・レコーディング」というカテゴリーでした。それが50年代に単に「サウンド」になって2004年から「サウンド・ミキシング」になったのです。
つまり、
「サウンド・レコーディング⇒サウンド・ミキシング」なのであって、
「サウンド・レコーディング⇒サウンド・エディティング」ではありません。
サウンド・レコーディング(録音)とは何か
町山さんは『ミッドナイトクロス』でジョン・トラボルタがやっていた、いろんな音を加工して「効果音」を作るのがサウンド・エディティングだといいます。私はハリウッドで働いたことがないから詳しくは知りませんが、アメリカに住んでいる町山さんがそういうのだから、その通りなんでしょう。いろんなサイトで調べてもそう書いてあるし。
しかし、だからといって「音響編集賞」と訳すのが間違い、「録音賞」とすべし、というのはいただけません。
だって、音を録るだけじゃなくてそれを加工するんだから「音の編集」でしょう? 私も爆破音やスタンガンの音などさまざまな効果音を作ったことがありますが、再生スピードを速くしたり遅くしたり、周波数を変えたり、そしてさらにそうやって加工した音をミックスして作るんです。それを「音響編集」と呼んで何がいけないのか。
それに、上記の通り、効果音を作る過程でも「ミキシング」があります。「エディティング」の中に「ミキシング」も含まれているんです。ミックスして作るんだから。
ただ、それじゃどちらが「サウンド・ミキシング」なのかわからないから、全体の音の調整を「サウンド・ミキシング」、個々の効果音の工程を「サウンド・エディティング」にしているだけ。
サウンド・ミキシングとは何か
町山さんはサウンド・ミキシングを画像のようなダビングルームでの「最終的な音の調整」と認識しているようです。
それ自体は間違いではありません。が、2番目に引用したツイートに看過できない発言があります。
「ミキシングは録音された音源をミックスする作業で~~」
というところ。これもこれ自体は間違いじゃないですが、町山さんは「録音された音源」を効果音だけと考えているのが間違いというか元録音助手としては不快きわまりないのです。
映画にとって一番重要な「音」とは何でしょうか?
これは誰にでもわかります。
そう、セリフです。
現場の同時録音もサウンド・ミキシング
ここに録音技師は映っていませんが、だいたいカメラから離れたところに陣取っています。現場の録音技師もサウンド・ミキシングを行います。
私が付いていた録音技師もチーフもワイヤレスマイクが嫌いだったので(芯のある音が録れないから、と)ほとんど私とチーフが振る2本のマイクで録音していました。それだってサウンド・ミキシングですよね。
いまはワイヤレスが主流みたいで、20チャンネル(⇐うろ憶え)ぐらいの音を同時録音でミキシングするそうです。
映画の音において一番重要なのは現場でのセリフと状況音の録音です。それはかつて「サウンド・レコーディング」と呼ばれたものであり、いまは「サウンド・ミキシング」と呼ばれています。
そうやって録られた音源に、サウンド・エディティングで作られた効果音と音楽の3つをミキシングする。それもまた「サウンド・ミキシング」と呼ばれます。
つまり「サウンド・ミキシング」には現場でのミキシングとダビングでのミキシングと二段階あるわけです。そのうち、より大事な現場でのミキシングをまったく度外視しているのが許せないのです。現場でいい音が録れていてこそ最終的な調整が活きてくるのですから。
ただ、ダビングにおけるミキシングは3つの音を編集するのだから「音響編集」と訳すべき、という意見もあながち間違いではありません。
しかしながら、ここで大事なことは、
それは……
録音賞と音響編集賞の違い
日本側スタジオで解説をしていた映画評論家の町山智浩さんがこんなことを言っていました。
ツイッターから引きましょう。
町山智浩@TomoMachiサウンド・ミキシングは録音されたさまざまな音をミキシングして劇場用の立体音響を作る仕事です。ですからサウンド・エディティングはどちらかといえば録音賞、サウンド・ミキシングは音響編集賞と訳すほうが正確です。
2020/02/10 12:14:47
町山智浩@TomoMachiつまり、サウンド・ミキシングを録音賞、サウンド・エディティングを音響編集賞とするのは間違いなんです。ミキシングは録音された音源をミックスする作業で、サウンド・エディティングは録音を含む効果音の作成ですから。
2020/02/10 12:37:37
これだから現場を知らない人間は……と思ってしまいます。
トーキーになって最初の頃、録音賞は「サウンド・レコーディング」というカテゴリーでした。それが50年代に単に「サウンド」になって2004年から「サウンド・ミキシング」になったのです。
つまり、
「サウンド・レコーディング⇒サウンド・ミキシング」なのであって、
「サウンド・レコーディング⇒サウンド・エディティング」ではありません。
サウンド・レコーディング(録音)とは何か
町山さんは『ミッドナイトクロス』でジョン・トラボルタがやっていた、いろんな音を加工して「効果音」を作るのがサウンド・エディティングだといいます。私はハリウッドで働いたことがないから詳しくは知りませんが、アメリカに住んでいる町山さんがそういうのだから、その通りなんでしょう。いろんなサイトで調べてもそう書いてあるし。
しかし、だからといって「音響編集賞」と訳すのが間違い、「録音賞」とすべし、というのはいただけません。
だって、音を録るだけじゃなくてそれを加工するんだから「音の編集」でしょう? 私も爆破音やスタンガンの音などさまざまな効果音を作ったことがありますが、再生スピードを速くしたり遅くしたり、周波数を変えたり、そしてさらにそうやって加工した音をミックスして作るんです。それを「音響編集」と呼んで何がいけないのか。
それに、上記の通り、効果音を作る過程でも「ミキシング」があります。「エディティング」の中に「ミキシング」も含まれているんです。ミックスして作るんだから。
ただ、それじゃどちらが「サウンド・ミキシング」なのかわからないから、全体の音の調整を「サウンド・ミキシング」、個々の効果音の工程を「サウンド・エディティング」にしているだけ。
サウンド・ミキシングとは何か
町山さんはサウンド・ミキシングを画像のようなダビングルームでの「最終的な音の調整」と認識しているようです。
それ自体は間違いではありません。が、2番目に引用したツイートに看過できない発言があります。
「ミキシングは録音された音源をミックスする作業で~~」
というところ。これもこれ自体は間違いじゃないですが、町山さんは「録音された音源」を効果音だけと考えているのが間違いというか元録音助手としては不快きわまりないのです。
映画にとって一番重要な「音」とは何でしょうか?
これは誰にでもわかります。
そう、セリフです。
現場の同時録音もサウンド・ミキシング
ここに録音技師は映っていませんが、だいたいカメラから離れたところに陣取っています。現場の録音技師もサウンド・ミキシングを行います。
私が付いていた録音技師もチーフもワイヤレスマイクが嫌いだったので(芯のある音が録れないから、と)ほとんど私とチーフが振る2本のマイクで録音していました。それだってサウンド・ミキシングですよね。
いまはワイヤレスが主流みたいで、20チャンネル(⇐うろ憶え)ぐらいの音を同時録音でミキシングするそうです。
映画の音において一番重要なのは現場でのセリフと状況音の録音です。それはかつて「サウンド・レコーディング」と呼ばれたものであり、いまは「サウンド・ミキシング」と呼ばれています。
そうやって録られた音源に、サウンド・エディティングで作られた効果音と音楽の3つをミキシングする。それもまた「サウンド・ミキシング」と呼ばれます。
つまり「サウンド・ミキシング」には現場でのミキシングとダビングでのミキシングと二段階あるわけです。そのうち、より大事な現場でのミキシングをまったく度外視しているのが許せないのです。現場でいい音が録れていてこそ最終的な調整が活きてくるのですから。
ただ、ダビングにおけるミキシングは3つの音を編集するのだから「音響編集」と訳すべき、という意見もあながち間違いではありません。
しかしながら、ここで大事なことは、
サウンド・ミキシングもサウンド・エディティングも「録音」と「編集」の二つから成っているということです。
生放送のとき、町山さんは「元の言葉で言えばいいと思います」と言っていました。サウンド・ミキシング賞とサウンド・エディティング賞というふうに。
私はそれには異を唱えるつもりはありません。と思ったら、ツイッターでまた「サウンド・ミキシングが音響編集賞、サウンド・エディティングが録音賞」などと頓珍漢なことを言っているのでこれは看過できないと筆を執った次第です。
サウンド・ミキシング賞やサウンド・エディティング賞では「よけい違いがわからない」という人もいるだろうから、ちょっと前の言い方、つまりサウンド・ミキシングを「音響賞」にして、サウンド・エディティングは「効果音賞」にでもすればいいんじゃないでしょうか。
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ようこそ映画音響の世界へ(現場アフレコという手法)
生放送のとき、町山さんは「元の言葉で言えばいいと思います」と言っていました。サウンド・ミキシング賞とサウンド・エディティング賞というふうに。
私はそれには異を唱えるつもりはありません。と思ったら、ツイッターでまた「サウンド・ミキシングが音響編集賞、サウンド・エディティングが録音賞」などと頓珍漢なことを言っているのでこれは看過できないと筆を執った次第です。
サウンド・ミキシング賞やサウンド・エディティング賞では「よけい違いがわからない」という人もいるだろうから、ちょっと前の言い方、つまりサウンド・ミキシングを「音響賞」にして、サウンド・エディティングは「効果音賞」にでもすればいいんじゃないでしょうか。
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