2019年12月21日

今年の「週刊文春エンタ!」は来年6月に公開される『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の特集。それといろんなおすすめアニメを教えてくれるこれまたなかなかの良書。

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まだ途中までしか読んでませんが、いまのところ際立って印象的なのは「押井守監督に聞く! 俺的アニメトピック2019」です。

まず、今年のアニメ界最大の事件は京アニ放火事件であり、日常系アニメを得意とするアニメ製作会社がとんでもない非日常的な悲劇に襲われた、これは「テロが日常化した」ということだろうと。

それから、「2020年は映画が映画であることの根拠が失われるのではないか」という提言。これは正直よくわからなかった。

Netflix作品をアカデミー賞から締め出そうとしたスピルバーグはもう時代遅れの人になってしまった、新しい波にのれなくて焦っている印象を受ける、と。なるほど。これはわからんではないけど「映画である根拠が失われる」というのが具体的にどういうことなのかよくわからない。わかるようでわからない。

次に、NetflixやAmazonプライムは潤沢な予算があるうえにクリエイターを尊重してくれると聞いていたので企画書を出したがことごとく通らず、80年代から90年代のオリジナルビデオ・アニメの様相と似てきている、と。

つまり、最初はオリジナルのストーリーを尊重してくれていたのが、次第に人気シリーズの続編やスピンオフなど「鉄板企画」しか通らなくなってしまった。いずれそうなるという危惧はあったが恐るべき早さでそうなってしまった、と。

でも『アイリッシュマン』は原作があるとはいえハリウッドメジャーでも企画が通らなかったものだし、『マリッジ・ストーリー』はオリジナルだし、鉄板企画しか通らないというのは違うのでは? 『全裸監督』だって配信会社だからこそ作れたんだろうし。

その直後、私が刮目した一節が目に飛び込んできて何度も読んだ。

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「一番の問題は、作品を配信したあと反響が聞こえてこないことなんだ。これが作り手に取って最も大きな問題となる。映画やテレビの場合は動員や興行収入、視聴率などが反響になるけど、配信はそれがほとんどない。配信会社がデータを公表してないせいもあって数字がわからない。視聴者は全話見たのか、あるいは途中でやめたのか、それもわからない。つまり観客が作品と向き合うときに抱くであろう待望感や失望感、それらがほとんど伝わってこないんだ。これが1話ごとに値段が設定されていたらまた違うんだろうけど、すべて見放題で月額制だから、ますます待望感や失望感も薄れてしまう」

なるほど! 「数字」が大きな指標になると。いつも「数値信仰」はやめようと言っている私もこの言葉には深くうなずかざるをえなかった。

次の言葉はどうか。

「配信には映画に伴う社会的な行動が存在していない。誰かと一緒に見に行って語り合うこともできなければ袋叩きにすることもできない。個人的にネットに書きこむだけでは社会的な行動とは言えないよ」

これはすごく微妙だな、と。

私はブログやツイッターで映画の感想を書いているし、特に検索から入ってくる人が多い記事の場合、その映画自体が多くの人に見られていると(データではなく実感として)わかるし、逆に自分自身が書いたものが読まれているとそれはそれで「反響」にも感じられる。

でも、それは私個人が感じることであって、私の感想文を作り手のほうは「反響」とは感じていないのでしょう。というか読まれていないでしょう。たまに感想を書いた映画の監督さんや本の著者からコメントをいただいたりフォローされたりということはあるけれど、それもまた私個人の問題であって、先方にとってはただのネット上の戯れ言にすぎないのかも。

確かにネット上に駄文を連ねるのは「社会的な行動」ではない。でも、いまやその社会的とは言えない言動が実社会を動かしている面も否定できない。

スピルバーグを時代遅れと難じながら、押井さん自身も時代遅れになりつつあるのではないか、とも感じました。

でもやっぱり、このインタビューの肝は、配信だと反響が作り手まで届かないということに尽きるかと。

スコセッシはメジャースタジオでは作れなかった『アイリッシュマン』をNetflixという救いの神の助けで作ることができた。だからNetflixなど配信会社は貴重な存在だ、これからは配信の時代だ、と、まるでそれが「新しい時代の波」であるかのように言うのは時期尚早なんじゃないか。

と、押井さんのインタビューを読んで思いました。スコセッシは『アイリッシュマン』の「手応え」をどのように感じているのか。はたまたまったく感じられず苛立ちを覚えているのか。

潤沢な資金があるというだけでは未来はないように思います。少なくともデータを公表したらいいのでは?







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