2019年11月11日

2019年の『カメ止め!』と言われるほどの話題作と聞いた『メランコリック』を見てきました。(以下ネタバレあります)

「殺しの場としてやくざに貸し出しされている銭湯」という設定がやたら面白そうでしたが、うーん、『カメ止め!』が面白いという人の感覚はわからなくはないけど、この映画の面白さは少しもわかりませんでした。設定を活かしきれていないというか。


320

カメラマンは何をしていたのか
いまや手持ちカメラばかりでグラグラゆれてばかりという映画はとても多いので、ちゃんと三脚立てろよ! と思うことはあっても驚くことはなくなりました。

しかし、この『メランコリック』のカメラには驚きました。いくら手持ちでもゆれすぎ。

ゆれるうえに、意図的に動かすところでも動かしすぎ。例えば銭湯の店長がやくざの田中の事務所でオムライスを食べる場面。店長の顔や手の動きに合わせてパンダウンしてまたパンアップするんですが、あんなせわしない見せ方をするくらいなら、最初から引いた画にしてフィックスで撮ればいいだけでは? 

この監督やカメラマンはカメラを動かさないと安心できないんでしょうか。ピン送りのショットでもピントがぼけたり、何であんなのにOK出してるんだろう。ありえない。以前、うちの父親が写真スクールに通っていましたが、いくらいい素材、いいアングル、いい光具合で撮っても、ピントが合ってなければその時点でアウトだそうです。映像にとってピントを合わせることは大前提中の大前提。金をとって見せる作品でピントが合ってないなんて話にならない。金返せと言いたい。


彼女の使い方
・「東大卒」という設定がなぜ必要なのかわからない。
・いきなり殺人現場を目撃して大ピンチの主人公を店長は「殺すな」といって掃除を手伝ってもらうことにするが、雇ったばかりの人間をなぜ信用できるのか。
・いくら破格の報酬をもらったとはいえ、死体を燃やしたり、生々しい血を洗い流したりしたあとで安眠できる主人公に共感できるわけがない。
・警察に行こうかどうしようか悩む場面がまったくないので、ただの「変な人」になってしまっているのではないか。
・殺しの仕事をしてきた松本君が、ぜんぜんそんなふうに見えない。逆にそれが「リアル」ということ? しかし殺しの仕事をしている人間を知ってる観客なんかいないんだし、そんなところにリアリティを求められてもこちらには伝わらない。

などなど、いろいろとわからないことやつまらないことがあるんですが、私は「彼女の使い方」が一番の疑問でした。

31JPS08_3

主人公を銭湯のバイトに誘って、殺しの現場として貸し出されていると主人公が知ってからはまったく風呂に入りに来ないから、この女の子は実は店長とグルなのか、もしや田中ともグルなのかと思いましたが、ぜんぜんそんなことはなし。

それなら、彼女が銭湯に来るが「ここの風呂に入っちゃダメ」と主人公が止める。理由を聞いても答えられない。それで彼女もこっそり探って殺しの現場を目撃してしまい、小寺君か松本君に殺される、という展開はどうでしょうか。

主人公は、彼女が自分のせいで死んでしまった、だから田中を殺す! というふうに、松本君に誘われて殺しに行くんじゃなくて、逆に自分から松本君を巻き込んだほうがよっぽどドラマが高まったんじゃないかと思いました。

最後に、彼女が頻繁に銭湯に来ていたのは水、電気、風呂のいずれかが止められていたから、と言いますが、ということは、主人公がやばい仕事に手を染めてからは滞納してなかったから来てなかったってことですよね。でもそれは完全に「作者の都合」です。


やっぱりカメラが……
実家の場面は全部食事シーンで同じアングル、同じ人物配置。違うのは献立だけ。早撮りのためにはいい方法ですが、それなら銭湯や田中の事務所でも同じアングルで撮ってルックを統一してもよかったんじゃないですかね?

限られたアングルだけで淡々と語られるほうが、物語の異常さ、怖さがより伝わったんじゃないでしょうか。

やはりカメラを動かしすぎなんですよ。


関連記事
『カメラを止めるな!』(ただの答え合わせ)







  • このエントリーをはてなブックマークに追加

コメントする

名前
 
  絵文字