2019年08月12日

脳研究家の池谷裕二さんと作家の中村うさぎさんの対談本『脳はこんなに悩ましい』。

続編の『脳はみんな病んでいる』を先に読んだのですが(感想はこちら⇒「①AIが神になる⁉」「②この世はわからないことだらけ 」)今回は前編を読んでみました。

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もう7年も前に出ているので、いまの脳科学では否定されていることもあるのかも、と思って読みましたが、なかなかどうして、とても面白い。


Googleのせいで、ではなく、おかげで
一番印象的だったのは「Googleのせいで人々の記憶力や思考力が低下している」という俗説について池谷教授が否定的なところでした。

「人は文字を学ぶことで記憶力が減退してしまった」と古代ギリシアの哲人プラトンが嘆いたという逸話が紹介され、さらに、文字がなかったころは教典や神話、伝説の類はすべて口述で次世代に伝えられてきた、だから文字発明以前の人間の記憶力はそれ以降の人間の記憶力とでは比べ物にならない、と。確かに文字という新しいツールのせいで記憶する力は減退した。

しかし文字を使うようになったおかげで文明が発達し、さまざまな文化が花開いた。だから「ワープロを使うから漢字を憶えなくていい」「わからないことがあればググればいい」というのを「退化」と呼ぶのは時期尚早だろう、と池谷教授は言います。

パソコンやGoogleを使うようになったおかげでいままで使ってこなかった新しい能力が開発されている可能性もあると。Googleやパソコン、スマホなどによって人間は新しい進化をし、文明や文化を生み出すかもしれない。なるほど。蒙を啓かれました。

次に仰天したのが、


メールを送る間隔も「べき則」
何を美しいと思うか、という問題について黄金比率というものがありますが、それらをひっくるめて「べき則」というらしい。地震や雪崩もその原則に従っているとか。すべての自然現象はべき則にしたがっていて、べき則に従っているものを「美しい」と感じるらしい。龍安寺の石庭も完璧なべき則とか。

そして、ここからが仰天ポイント。
実はメールを送る間隔もべき則に従っているそうです。何通も連続して送るときもあれば、かなり間隔を置いて送るときもある。用事で忙しいとか、ちょっとここは相手をじらせようとか。しかし、人間がどう考えようと、すべては自然法則の「べき則」に従うことになるんだとか。

ということは「自由意思」というものが非常に揺らいでくる。自由に行動しているつもりでもすべては自然の法則に縛られているのか……?

次は、実際に私が実験してみたこと。


5円玉が動く⁉
5円玉の穴に紐を通して吊るす。そのまま手を動かさず5円玉がぐるぐる動いているイメージを頭の中に描くと……あら不思議。5円玉が動いてしまう。

実際にやってみました。ほんとだ! 動く!!! イメージしただけで。

これはもちろんテレパシーとかではなく、強く念じたイメージに合わせて体が動いてしまうらしい。ぐるぐるとは回りませんよ。でも静止していた5円玉がゆらゆら動き始めたときは……恐くなってすぐやめました。

実験といえば、科学とは実験によって再現可能なものを言うとか。だから進化論は科学じゃないという意見があるそうです。なぜなら、過去は一回こっきりで再現不可能だから。ニュートンのリンゴのように実験可能なものを科学と言い、そうでないものは科学ではないと言い切る科学者がとても多いそうです。

実験はできないけど、数式で表せるかどうかも重要らしく、いま4割もの小学生が天動説を信じているという驚くべき統計が示されます。しかし池谷教授によると、天動説も地動説と同様、数式で記述できる。数式化できるからには「天動説は間違っている」とは科学的には言えないそうな。へぇ~。


自分にも「心」があると気づいてしまった人間
進化的に考えると、動物は自分よりまず「他者」に心があることを察知する能力を獲得したそうです。

例えばジャングルの茂みでガサゴソと音がしたら、その相手が敵か味方かをすぐに判別しないと死ぬ可能性がある。つまり相手に「意図」があることを仮定し、その「心」を正しく読んで対応することが必要だった。

が、動物はここまで。人間は「他者に心があるならひょっとすると自分にも心があるのでは」と気づいてしまった。

犬にも心はある。それはうちの飼い犬を見ていればよくわかります。が、彼らは飼い主たちの「心」の動向には過敏すぎるほど気にしているけれど、自分の中にも「心」なるものがあるとは思っていないよう。

一方ヒトは「自分には他者とは異なる心がある」と知ってしまった。「あなたと私は個別な存在である」と。この「私の発見」が心の進化にとって大きなステップだった。次のステップでは、自分の「心」を相手の「心」に読まれないように隠す、つまり嘘をつくようになった。動物は嘘をつかない。


男性が必要ない時代
いま、生命科学的には男性が必要ない時代を迎えつつあるそうです。なぜなら、クローン技術が急速に発達しているから。女性が自分の細胞を複製して自分の子宮で育てて我が子を産むことは既に可能。

しかし本当に「男はいらない」となって女性しかいない世界になったとき、男の目がなくてもやはり女は化粧したりするのだろうか。恋愛感情は生まれるのだろうか、と中村うさぎは問います。

女子校出身のうさぎ女史によると「女しかいなくても恋愛感情は生まれる」らしい。あの子の体に触りたい」という欲求は自然に芽生えるとか。では「恋愛感情は生殖活動のための口実にすぎない」という池谷教授の説は否定されるのか……?


天才中村うさぎ
『脳はみんな病んでいる』でも思ったことですが、中村うさぎという人はほとんど天才ですね。

他の人だったら池谷教授からこんなにいろんな話を引き出せなかったでしょう。

「セックスのときに声が出るから、逆にオナニーのときも声を出したらもっといいのかと大声出してみたら、もう超興奮!」

「薬物中毒者で自分が鳥だと思い込んでいる人がビルから飛び降りた場合と、そんなこと思っていない普通の人が飛び降りた場合、飛距離に差は出るのか?」

などなど、とんでもなくアホな、いやいや、面白い質問が飛び出します。常人には思いつかない。

中村うさぎは相槌うってるだけじゃないか、とか言う人もいそうですが、私はうさぎ女史あってのこの本だと思いますよ。






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