2019年07月14日

(承前)①AIが神になる⁉

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池谷裕二さんと中村うさぎさんの対談本『脳はみんな病んでいる』の感想第二弾。

昨日の第一弾で扱ったAIのこと以外で気になった話題をつらつらと。


脳は光そのものを見ていない
「人間は光そのものを見ているのではなく、光の信号を網膜が0と1のデジタル信号に変換した単なる電気パルスを『見え』として判断しているだけ」

ということは……?

「高齢者は結構な割合で幻覚を見ている。赤ん坊も見ている」

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幻覚とはその電気パルスに過ぎないわけですね。赤ちゃんが突然誰もいないほうを見て笑い声をあげるのは幻覚を見ている可能性が高いとか。

「現実と幻覚を分けて考えられるのが『大人』ということらしいが、経年によって脳のタガがはずれる。脳は実は経年と共に活動レベルが上がっていく。そのせいで幻覚を見る

うちの両親を見ているかぎりではまったくそんなふうには見えず、むしろ逆に見えますが、それは単に私の脳がそう思い込んでいるだけなのでしょうか? 
いや! 幻覚は見てなさそうだけど、幻聴はあるみたい。何も言ってないのに「何?」と言ってくることがあるから。なるほど、あれは脳の活動レベルが上がっているからなのか。目から鱗。


この世はわからないことばかり
「試験管の中で遺伝子を化学合成しているうちに、遺伝情報が極端に少ない『世界で最もシンプルな生物』生物ができてしまった。でも、その生物がなぜ生存できているかは作った人間にもほとんど理解ができない」

これは前回のAIの内部原理がわからないというのと似たようなものですね。
ここで話題になっているのは実際に生きている生物ですが、もう25年くらい前、まだコンピュータ技術もそれほど発達していなかった頃のことですが、新聞に「人工生命」の話が載っていました。

パソコンの中でしか生きられない人工生命を作り出すとき「30個以上の情報がないと生命として活動できない」とあらかじめ定義づける。で、人工生命同士で交配を繰り返すうち、何と30個未満の情報しかないのに普通に活動している人工生命が現れたと。30個以上の情報という生命の定義をものともしないものがなぜパソコン内のみとはいえ活動可能なのか、まったくわからないが生命とはそういうものなのかもしれないと結ばれていました。

そういえば、本書でもまったく別のところで、「飛行機がなぜ飛ぶのかいまだにその原理がわかっていない」と池谷教授が言っていました。これは私もちょっと前に知って驚愕したんですが、こういうふうに設計して作れば飛ぶことはわかっている。でも、なぜそう作れば飛ぶのかはわかっていないと。こんなことを知ってしまったら飛行機に乗れなくなってしまいそうですが。

人間にはわからないことだらけですな。科学の本に対して抽象的なことをもちだすのはどうかと思うけど、「美とは何か」とか「面白いとはどういうことか」ということも人間にはわからない。

抽象といえば……


動物にも抽象概念がわかる
「ネズミに正方形と長方形の図形を見せて、長方形を選んだときだけ餌をあげる。そのネズミは長方形が好きになる。次に、同じ長方形ともっと横長の長方形を見せると、横長のほうを選ぶ。『横長』がデフォルメされたものが『長方形っぽさ=長方形性』という抽象概念が理解できている」


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そういえば、うちの犬は幼い頃はテレビをじっと見ていることがありました。よく犬や猫に二次元は理解できないと言いますが、うちの犬はわかっていたらしい。二次元というのは犬にとっては抽象概念ですよね? 本当は三次元のものを二次元に移し替えているわけだし(違うか?)

ともかく、幼い頃の犬にははっきり人間や動物が映っているとわかっていた。わかっていたということは「見えていた」ということ。それが大人になるとまったくわからなくなるというのは、もしかすると「あれは幻覚だったのだ」と犬なりに解釈しているということなんでしょうか?


医療経済の悪辣
ここからはほとんど引用のみです。

「『医療経済』という言い方があって、新薬が開発されるとその社会的効果が計算されます。その薬によって何人の人がどれぐらい得をするのか。社会保障費の増額はいくらか。病人が救済されることによる社会的利益はどのくらいか。薬の副作用による社会的損失はどれくらいか。人の命や障害、生活の質を金額に換算する計算式まである。だから難病向け新薬がなかなか開発されない。たとえ効果があっても患者数が少ないとペイしない」

「日本政府は患者数が少ない疾患の良薬を開発した企業に損失が出ないように、希少疾患の薬に高値をつける特別システムを設置した。そして希少疾患の新薬開発ブームが起こった。そのために副作用も起こった。希少疾患の創薬は未開拓の領域のため競合相手が少なく、公的な制度で保護されているからめちゃくちゃ儲かる。過去5年間に承認された新薬の40%までもが希少疾患の薬。製薬企業の力点がそちらに移ったために他の分野の創薬が手薄になった。アルツハイマー病やパーキンソン病などの疾患の新薬はわずか3%。患者数が多いうえにまだ治す薬のない疾患であるにもかかわらず」

「しかも、希少疾患治療薬の優遇制度を狡猾に利用した例も出てきている。本当は広範な疾患に有効な薬なのに、まず患者の少ない疾患に適用することで高価な薬価を国に確約させ、その後、一気に適用疾患を拡大する。薬価は見直されて下がるが、見直しまでの時間差を利用してぼろ儲けする手口」

いやはや、医は算術の時代と言いますが、許せませんね。


雑学あれやこれや
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「人間以外の動物にとって、目は他の動物を威嚇するもの。目の誕生によって、他の動物から狙われる可能性を常に気にする必要が生まれた。生物がこれほど多様になった原動力のひとつは、目による攻撃と防御という軍拡競争の側面が強い」

「認知症の人が『人格が変わってしまった』と思われることがある。『人格が変わったから記憶障害が出てきた』と思うのは逆で、記憶障害が起きてある特定の記憶が失われると、残った情報で辻褄を合わせようと別の人を演じようとする。その場その場で辻褄を合わせながら人格Aと人格Bを演じ分けたりする」

「細菌はなぜ宿主を殺すか。宿主を殺すのは細菌にとっても危険を伴う。宿主と共存し続ければ安泰だけれど爆発的に子孫を増やすことはできない。宿主を殺さない程度にしか栄養を奪えないから。しかし宿主を操作して天敵の前で鈍い動きしかできないようにしてしまえば、宿主が食べられても死んだ宿主の肉体をすべて消化して自分たちの栄養源にできる。より大きな宿主に移動できたら爆発的に子孫を増やせる。そうやって宿主からより大きな宿主に引っ越しをするのが種の繁栄にとって有利という考え方」

「病気の遺伝子はわざわざ病気を発現させるために残存しているとは考えにくい。本当は有益な何かのためにあるのではないか。統合失調症の危険遺伝子を生まれつきもっている人は意外と多い。そういう人たちは芸術家や小説家、俳優や研究者など創造力が要求される職業がとても多い。でも何かの拍子にネジが緩むと病気として発現してしまう」

「地球上の生物で脳をもっている生き物は全生物の0.13%。つまり、脳が地球を支配しているのではなく、脳をもっていない生き物によって地球は支配されている。燃費の悪い脳のエネルギーを確保するために脳をもった動物はひたすら食べないといけない。植物やバクテリアからすると哀れな生き物。脳をもってしまったために居住エリアが限られるなど不利な条件を強いられている。承認欲求や自己実現欲求など、脳をもってしまったために幸せになるためのハードルが高くなってしまった」

「なぜ我々は脳なんてものをもったのか、研究すればするほどわからなくなってくる」

脳科学者が言うからこそこの言葉は重く、また切ないですね。

本書は実は第2巻らしく、前著の『脳はこんなに悩ましい』を読みたいと思います。







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