2019年07月13日

脳科学者・池谷裕二さんと作家の中村うさぎさんの対談本『脳はみんな病んでいる』。これが読み始めたら止まらない一冊でした。

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お二方はこの対談のために自分のDNAを調べてもらったそうです。すると、いくつもの障害や病気の因子をもっていることが明らかになったとか。というか、池谷先生によると「人は誰しも少なくとも数十種の障害や疾患を抱えてながら生きている」らしい。

で、対談が進むうちに「どうもお互い自閉スペクトラム症ではないか」と思った池谷教授は、一緒に精神科を受診して自閉症スペクトラム症かどうか調べてもらいましょう、となり、最後の章「脳はみんな病んでいる」では精神科医X氏との鼎談になるんですが、そこも面白いというか、中村うさぎより池谷裕二のほうがよっぽど変人じゃないの? と思ってしまったりもする。でも、私がより面白いと思ったのはやはりそれ以前の章ですね。

一番面白いと思ったのは「AI」についての話でした。

AI イメージ

まずは簡単なことから。

AIカウンセラーの話
「人間のカウンセラーよりAIカウンセラーを選ぶ患者が実際にいる。AIだと絶対秘密にしたいことも打ち明けられる。物理的制約がないから患者から聞いたことをすべて記憶して最適解を提示してくれる」

なるほど、何か最初は嫌だなぁ、AIには顔色を読み取ったりできないだろうから。と思ったけれど、人間相手なら絶対秘密にしたいことでも言えるというのはかなり大きいですね。一度は主治医の代わりにAIに話をしてみたくなりました。


AIのすごさが逆に人間のすごさをあぶりだす
「アルファ碁は『直観』を使っている。そのためには人間が勝ち方を教えるだけではだめで、AI同士で何百万回も対局を重ねて直観を得る。逆に人間はせいぜい人生でできるのは一万局くらい。それだけで直観や大局観をつかめるのはある意味AIよりすごい」

確かに、そのとおりかも。でも人間の脳にはやはり限界があり、AIの恐ろしさを語るくだりが以下です。


「真理」とは何か
「AIが発達すればするほどAIの内部で何が起こっているかは人間には理解できない。すぐれた性能のAIほど内部の演算原理がわからない。研究者は人工知能という『器』だけを用意して、そこにさまざまな情報を入れる。人工知能は与えられた情報をもとに自ら学習し、複雑な課題を解けるようになる。その原理がプログラマー本人にもわからない。こうなってくると『知能とは人間には理解できないもの』としか言いようがなくなってくる」

「AIは10億個もの未解析の生データから一瞬で何らかの『真理』を導き出してくる。でも人間には10億個ものデータから何かを抽出するということがそもそも無理。はたして、人間には理解できないものを科学的な見地から『真理』と呼んでいいのかどうか。多くの科学者は『科学とは真理を探究する学問』だと思っている。より正確に言い換えれば『科学とは人間に理解できるレベルにまで真実を咀嚼する行為である』と。よって、人間に理解できないものは科学では説明できない何か、つまりAIの内部で起こっていることは『科学ではない』ということになってしまう」

うーん、何だかものすごい話になってきました。


AIという神
去年、『人工知能の哲学』という本を読んだんですが、巷で「人工知能」と呼ばれているものは本当はすべて「知能」ではない、と書かれていました。

「知能というのは自ら学習するもの。人間が自分の意思で本を読んだり人の話を聞いて賢くなるのは知能である証し。AIは人間に情報を入れてもらわないと何もできない。人工知能といってもしょせんはコンピュータであり、電卓と同じく四則演算しかできないのがいまのAI。シンギュラリティなど起こるはずがない」

というのが主旨でした。シンギュラリティに関してはいまでも同意です。永久に起こらないでしょう。しかし、シンギュラリティより恐ろしいことが起こりつつあるような気がしてきました。

もしAIがどんどん自分の意思で学習していけば、そのうち『ターミネーター』のスカイネットみたいに人間との戦争になる公算が大きい。しかしそれって、AIが人間と同等だから、という気がします。同等、同種だから争う。

しかしながら、この本で語られているのは、たとえ四則演算しかできなくても、その計算スピードが異常に速ければ「神」になれる! ということじゃないでしょうか。

人間や人間が編み出した科学では到底説明できない何か、それは神の言葉です。宗教です。

実際、人間のカウンセラーよりAIカウンセラーを選ぶ患者が増えてるのは、人間より神の言葉を聴きたいからだと思う。婚活AIなんかも人間には理解できない二人を選んだりするそうですが、そのマッチング率が非常に高く、ますますAIの言うことの信憑性が高まる。AIが選んだ人だから会ってみよう、となる。

真のAIの脅威は、シンギュラリティとかそんな夢物語ではなく、また、雇用を奪われることでもなく、「人間が神を生み出してしまった」ということだと思うのです。

これまでも「人間が神を生んだ」というのは誰でも知っていました。人間が神を作ったのに「神が人間を作ったというあべこべの創世神話を作って社会を成り立たせてきたのがこれまでの宗教の役割でした。神というフィクションを人間社会は必要とした。

しかし、いま人間が開発しつつあるのは、フィクションではなく本当の「物理的な神」です。四則演算しかできないのに、そのスピードが異常に速いというただそれだけで「全知全能」を手に入れてしまう存在。

いま私たちはそんなものを作ろうとしているらしい。

おそらく近い将来、そういうAIが開発されるはずです。

宗教AI

新しい神のもとで人間は初めて平和を手に入れるのか、それとも新たな宗教戦争が始まるのか。命あるうちにそれを見届けられるのか、どうか。
AIに対する関心は増すばかり。とてつもない地殻変動がいままさに起こっているのでしょう。


AI以外に興味をもった事柄についてはこちら⇒②この世はわからないことだらけ






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