2018年12月09日

昨日放送されたETV特集『キャメラマンMIYAGAWAの奇跡』。
宮川一夫の助手を長年務め、いまは『雨月物語』などの修復作業をしている宮島正弘さんの顔を久しぶりに見ました。はっきり言って私はこの人に恨みがあります。


ETV-MIYAGAWA1
(右側が宮島さん)

「遊びすぎ」と非難され
専門学校での卒業製作で、私が編集を務めた作品に対してえらく文句を言ってましてね。いや別に編集に難癖をつけられたわけじゃないんですがね。カメラマンだから撮影のことと、あとは全体的な物語とかテーマについて。

私が原案を出したものだったんですが、みんなで何か月もかけて話し合って作った脚本と、それをもとに撮った映画に対し、事務局で「ダメだあんなのは。ふざけすぎ」とか言ってたんです。隣の教室にいた私たちは苦々しく聞いていましたが、監督の友人はわざと聞こえるような声で「そんなんやから一流になられへんのや!」と毒づいていました。

そりゃそうでしょう。だって、私たちは「あえてふざけて」あの映画を作ったのだから。

アホみたいな内容の話を大真面目に見せる、というのがコンセプトだったんですけど、それを編集でグチャグチャにしてやろうと。

私にとって「映画編集ベスト3」はいまも昔も変わらず、

ゴダール『勝手にしやがれ』
トリュフォー『突然炎のごとく』
スコセッシ『グッドフェローズ』

なんですけど、彼らのように「映画作りにルールなんかない」ということを証明してやろう、くらいの気持ちでやっていました。はっきり言って「むちゃくちゃやろうよ」と。

大映の末期を支えた編集マン、谷口登司夫先生は「荒削りなアマチュアらしさがあってとてもいい。うまくなってはいけない」と私の編集が一番好きだと絶賛してくれました。

また、照明の中岡源権先生も「なかなかよく遊んでる」とほめてくれたし、名前は忘れたけど撮影所の所長さんも「すごく面白かった」と、上のほうの人ほどほめてくれたんですよ。

その作品を宮島さんは「遊びすぎ」だという。


宮川一夫の遊び心
『羅生門』で太陽に向けてレンズを向けるという黒澤の大胆不敵な思いつき。たぶん宮島さんだったら頭から否定していたと思う。でも宮川一夫は黒澤の「ルール無視」「既成概念破壊」を大いに楽しんだ。

『無法松の一生』のあの有名な重ね撮りのディゾルブも、『おとうと』の銀残しも、『浮草』で降らせた土砂降りの雨も、小津作品には珍しい、人物の顔に照明を当てない撮り方も、すべては「遊び心」があったからこそ。

『浮草』(の特に俯瞰)については「やりすぎたか」と後悔していたみたいですが、でもそれぐらいのことをやらないとね。

そういえば、宮島さんは番組内ではっきり自分のことを「技術屋」だと言っていました。

宮川一夫は自分のことを「技術屋」とは思っていなかったでしょう。溝口から「芝居は監督の私がつけるから、その芝居をちゃんとつかんで撮れ」と言われて、「そのほうがやりやすい」と言ってましたもんね。技術屋の宮島さんに溝口の片腕が務まったとはとても思えません。

カメラマンは確かに技術屋の側面もあるだろうけど、同時に「創作家」「芸術家」でもあると思う。

それを可能にするのが「遊び心」。映画作りにルールなんかない。





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