昨日のあの試合はいったい何だったんでしょうね。
私はいまだにはらわたが煮えくり返っているので筆を執った次第ですが、ポイントは2つでしょう。

①最終盤の談合試合の是非
②先発を6人入れ替えたことの是非


はたしてあれでよかったのか。
順に見ていきましょう。


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談合試合はそんなに悪いことではない
私は、お互いの利害が一致して最終ラインでボールを回すだけの「談合試合」がそれほど悪いことだとは思いません。
思い出すのは、2004-05シーズンのリーガで、バルサがあと勝ち点1取れば優勝というとき、相手チームと利害が一致して談合試合をしたんです。うろ覚えですが、確かバルサが先制するも相手チームも残留がかかっていて後半途中に同点に追いつく。すると「バルサ相手に勝ち点1なら御の字」と相手チームが考えてまったくボールを奪いに来ない。バルサは勝ち点1で優勝だから攻めに行かない。マドリディスタの私は「こんな形でバルサの優勝を見せられるとは」とビデオを止めて寝ましたが、でも、ああいう状況になったら当然だよね、という思いはありました。

そりゃ、高いチケット代を払った観客は大ブーイングでしたけどね(昨日の比ではなかった)。本田が言うように「サッカーはエンターテイメントでお客さんを喜ばせてナンボ」。それでも優勝したい、勝ち進みたいという気持ちは理解できるから、談合試合そのものを否定する気はありません。

しかしね、おかしいのは、批判されるのはなぜ日本ばかりなんでしょう? 「談合」なんだから双方が合意してのもの。ポーランドだって談合したんだから同じくらい叩かれなきゃいけない。実際ポーランドメディアは日本よりも自国代表を酷評しているようですが、それ以外の国は一様に日本だけを非難する。
そりゃま、日本が勝ち進んだからでしょうが(それもフェアプレーポイントの差で勝ち進んだのに談合試合とは、という)それにしても、談合だけを非難するなら日本だけを責めるのは片手落ちだと声を大にして言いたい。

問題は談合そのものじゃなくて、セネガルがコロンビアと0-1だったということでしょう?

あれが0-5ならいいんですよ。いくらブーイングされようが何されようが決勝トーナメント進出のためにあえてああいう手を取っても。いくら何でも10分、15分で5点差を追いつくのは不可能に近い。
でも1点差ならいつ追いつくかわからないわけで、それで攻めに行かないというのはまったく理解できません。

セネガルが負けてくれたからよかったけれども、あれでもし土壇場で追いつかれてたらいまごろ大バッシングでしょう。それを「西野監督は賭けに勝った」とか「名将」だとか、気持ち悪い。

もしボールを回しているうちにセネガルが追いついたらそこからドイツみたいにキーパーも含めて全員で捨て身の総攻撃を仕掛けるつもりだったんですか? 何か、戦況をまったくきちんと分析せず、神風が吹くことを期待して、尻に火がついたら「一億総玉砕!」と言ってた頃と日本人のメンタリティってまったく変わってないんだな、と思いました。


なぜ1位通過を目指さなかったのか
結果至上主義そのものが悪いとは言いません。私は好きじゃないけど、それでも「過程より結果のほうが大事」というのはサッカーにかぎらず人生のいろんな局面で普通にあります。

でもね、それなら「なぜ先発を6人も入れ替えたのか」という問題が浮上するんですよね。

川島先発はよかったと思います。セネガル戦のパンチングはさすがに「それはないって!」と思ったけれど、コロンビア戦のあのFKは蹴ったほうがうまかっただけでは? 批判にされされても「おまえを信じる」と送り出したのはとてもいいと思いました。実際、川島は意気に感じてスーパーセーブを見せた。

問題は攻撃陣ですよね。大迫も乾も香川もいない。攻撃陣では柴崎のみ同じ。あとはサイドバックの二人くらいか。いくら暑くて疲労が蓄積してるからといっても、まだ突破が決まっていないのに6人も入れ替えたらそりゃ機能不全に陥るでしょう。

セネガル戦でまったくいいところのなかった原口を出さないのは良しとしても、他にも大事な戦力を出さなかった理由はひとつしかありません。「決勝トーナメントを見据えて」。

できるだけ上まで勝ち進みたい。だから主力を休ませた。

しかしそれなら同時に1位通過を目指すべきではなかったでしょうか?

2位通過だと、相手がベルギーであれイングランドであれ、次はたぶんブラジルですよ。そこで勝っても次が、ポルトガル、ウルグアイ、フランス、アルゼンチンがひしめく死の山から勝ち上がってきた猛者と当らないといけない。だから1位通過して、ベルギーがイングランドに勝てば次はスウェーデンかスイスの勝者。それならベスト8どころかベスト4まで視野に入るじゃないですか。あわよくば決勝まで。

でも、あっちの山に入ってしまったらもう終わりです。決勝トーナメントに行きたい、そこで勝ちあがりたい、そのための先発6人入れ替えというのは、だから矛盾してるんですよ。というか、西野監督の狙いは決勝トーナメントに行くことだったのかな、と。ベスト16に入れたらそれで充分というか。何かそんな匂いを感じます。

だって、本当に結果至上主義なら何が何でも1位通過を目指さないとおかしいですもん。H組という最後の組に入るのは、あとのほうで始まるから日程的にきつい難点がある反面、決勝トーナメントの顔ぶれがほとんど決まったうえで最終節を戦えるという利点があるわけでね。それを活かさなかったのはまったく理解できません。


本当の現実主義とは
もう一度、談合試合に話を戻すと、日本が1-0、セネガルが2-2だったとします。その時点なら日本が首位ですが、そこでポーランドに追いつかれた。すると総得点の差でセネガルが首位ですよね。1位通過するためには何とかもう1点ほしいけれど、カウンターを食らって失点したら敗退に追い込まれる。それであのパス回しなら納得できます。

1位か3位かという危険な選択をするよりは2位を目指すのは理にかなっている。セネガルとコロンビアが何点取ろうが同点のままなら2位ですから。それなら納得できた。

まず1位通過を目指すという理想を追求して、そのうえで理想を追い求めすぎると敗退してしまう、そのときにこのままでいいと計算するのが本当の「現実主義」というんだと思います。
西野ジャパンは理想を追求することを怠り、ただ現実的に行くことだけを考えた。そこが本当に腹が立つ。

私にも愛国心のかけらがあるから応援はしますけどね、でもこの国を愛すればこそ、ベルギーに惨敗して世界から嘲笑されることを期待する気持ちもあります。複雑です。


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