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スピルバーグの新作『レディ・プレイヤー1』を見てきました。直近に見に行ったのが『ペンタゴン・ペーパーズ』なので、同じ監督の新作を続けて見に行ったことになります。どちらかが名画座の旧作とかじゃなくて、どちらも封切。映画を見始めて30年近くたちますが、たぶん生まれて初めてです。

さて、『レディ・プレイヤー1』は、かな~り面白かったですね。『ペンタゴン・ペーパーズ』では落とし穴にはまってしまったスピルバーグも水を得た魚のようにみずみずしい映画を作ってくれました。(『ペンタゴン・ペーパーズ』の私の感想はこちら→「正義は目を曇らせる」

のっけから度肝を抜かれました。できるだけ事前情報を入れないように予告編も目をつむってましたから。ただ、ツイッターで「オタク礼賛映画」とか「ガンダムが出てくる」などの情報を見てしまった。

とはいえ、これはオタク礼賛映画じゃないですよね。最終的にオアシスを受け継いだ主人公が火曜と木曜はオアシスを休みにして恋人との情事に耽るわけですから。「オタクたちよ、現実を取り戻せ!」という強烈なメッセージは逆にオタク批判なのでは? 批判というよりは激励かな。

それはともかく、この『レディ・プレイヤー1』は「スピルバーグにしか作れない映画」だと思いますね。
そう思う理由は3つで、「演出力」と「70を越えた爺さん」で同時に「永遠の子ども」であることでしょうか。

まず演出力。

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そりゃのっけからこんな映像を見せられるのはスピルバーグだけでしょう。史上最高の映画作家かどうかはわかりませんが、その一人であることは間違いありません。

次に「70を越えた爺さん」ですが、この映画、2045年が舞台で、ヴァーチャルゲームにうつつをぬかしてばかりいる若者を主人公にしたSF映画のくせして、めちゃくちゃ「古いタイプの映画」ですよね。いや、「古い」というのはほめ言葉なんですよ。

以前、こんな日記を書きました。町山智浩と白井佳夫への反論(三幕構成と起承転結)

『HANA-BI』を見て「起承転結に則った映画はもう古い」と断じた白井佳夫と、『ダンケルク』について「従来の三幕構成は今後廃れるのではないか」と言った町山智浩はどちらも間違っているのではないかというものですが、スピルバーグは古典的三幕構成で新しい映画を作っちゃいましたね。

憶えているかぎりでこの映画の簡単な構成を書くと、

2045年の世界とオアシスの説明(15分、状況設定)
主人公ウェイドが最初の鍵をゲット(30分、プロットポイントⅠ)
サマンサ(アルテミス)との出逢い(60分、ミッドポイント)
ウェイドの演説によって百万の味方を得、IOIとの全面戦争に突入!(95分、プロットポイントⅡ)
ウェイドがオアシスを継承、サマンサとキス(130分、結末)

どうです。見事までの三幕構成。古典的ハリウッド映画の作法を自家薬籠中のものにしてきたスピルバーグならではの構成ですね。この構成にするためにカットしたシーンやショットも多いのではないでしょうか。

それから、「古い」といえば、この映画ではいろんな昔の映画のタイトルが出てきます。

『シャイニング』
『ブレックファスト・クラブ』
『フェリスはある朝、突然に』
『サタデー・ナイト・フィーバー』
『ザ・フライ』
『アイアン・ジャイアント』

そして映画じゃないけど我らが『機動戦士ガンダム』!!

『アイアン・ジャイアント』以外はすべて80年代の作品ばかり。たぶん、スピルバーグとしては自分が少年だった頃の50~60年代の映画を使いたかったんじゃないかと推察しますが、「自分の映画で育った人たちには80年代の映画こそふさわしい」という判断だったのでしょう。
そして大事なのは、これらの映画を見たことなくてもタイトルを知らなくても物語の理解の妨げにならないこと。当たり前だけどとっても大事。

さて、80年代といえば日本では昭和。ガンダムも79年から80年にかけてだし。しかし、いままで「どのモビルスーツが好きか」という話を幾人としたかわかりませんが、みんなジオン軍のモビルスーツを挙げるのに、なぜ劇中の日本人は「ガンダム」なんでしょう? 地球連邦軍のモビルスーツが好きという人間には会ったことないんですけど。(ちなみに私のお気に入りは「シャア専用ザク」と「ゲルググ」です)

それはさておき、オアシスの創始者ハリデーが好きな女性とデートするもキスして次のステップに踏み出せなかったことがゲームを解く鍵になっていますが、サイモン・ペッグ演じる親友との訣別にはもっと後悔していた、というラストはよかったですね。「あなたこそ『バラのつぼみ』だった」というセリフもいい。

結局この映画は、友だちを大切にする、人を好きになる、それが大事という太古の昔から人間が語ってきたことを繰り返しているだけ。主人公ウェイドの「言葉にすると寒いと言われそうだけど、生きがい、友だち、愛」というセリフ。本当に寒いというか青臭いですよね。

でも青臭いからいいんですよ。70を越えてもいまだ子どもの心をもったスピルバーグだからこそこういうことを臆面もなく言える。結局、世界を変えるのはいつだって青臭いこと言ってる奴ですから。ホリエモンみたいな「金さえあれば何でも買える」なんて言う奴は大嫌い。この映画の悪役はまさにホリエモンみたいな奴でしたよね。

逆に、古臭い価値観が好きになれないという人もいるかもしれませんが、私は古いタイプの人間なのでこういうのは大好き。別に価値観とかそんなのは古風でいい。意匠が新しければそれでいい。



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どうです。この深みのある画面。同じヤヌス・カミンスキーでも『ペンタゴン・ペーパーズ』とはぜんぜん違う。

もちろん、いつもブイブイうるさい私のことだからこの映画にも不満はあります。でも、それはまた今度。(笑)

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