トッド・ヘインズ監督の新作『ワンダーストラック』を見てきました。
これがどうも「人生で初めての映画」となったようです。そんなたいそうな話ではありません。以下は感想でも何でもなくただの日記と思って読んでください。
監督がトッド・ヘインズというだけで見に行ったので、どういう内容かはまったく知りませんでした。
すると、いきなりデビッド・ボウイの『スペース・オデッセイ』がかかったりするので、やはりこの監督のセンスの良さを感じずにはいられませんでした。が、肝心の内容が……
二つの時代を行ったり来たりするんですね。それがわかった時点で急激に熱が冷めました。私は時間軸をいじくる映画が好きじゃないんですよ。橋本忍脚本の名作の誉れ高い『切腹』も好きじゃないし。クリストファー・ノーランの『メメント』なんて言語道断だと思ってるし。そういえば『ダンケルク』も時間軸をいじってたっけ。
ああいう映画ってこちらの「頭脳」しか刺激してこないでしょ。たとえば『ゴッドファーザー』とか『仁義なき戦い』を見て頭脳が刺激されますか? ああいう真の名作は観客の「腹」を撃ちぬいてくるんですよ。それが最近は頭脳に来る映画が氾濫している。
監督とは旧知の仲のエド・ラックマンが撮っているとは思えない雑な映像にも興味がもてないというか、ああいう70年代B級映画風の画がほしいなら別のカメラマンと組めばいいのに。とか、ぜんぜん気持ちが映画に入っていかない。
時計を見るとまだ30分ちょっとしかたっていない。ここで決意しました。「出よう」と。
私は「もうこの映画から得るものは何もない」と確信できたら躊躇なく途中退出する人間です。「もったいない」とよく言われますが、私に言わせれば時間のほうがもったいない。料金は前金で払っていていつ出ようが変わらないんだし。
というわけで、ペットボトルを鞄に入れて出ようとしたんですが、そのとき、主役の少年が財布を盗まれたんですよね。
お、これはちょっとどうなるの? と、あとほんの少しだけ見てみようと思って座り直したのでした。
直後のシーンで探していた書店が見つかるも移転していて、移転先を黒人少年が教えてくれる。主人公は耳が聞こえないから黒人少年が何と言ったかわからず彼の後をつける。
この二人の出逢い方がよかったというか、ごく平凡な出逢い方なのに、なぜか死ぬまでこの二人は親友同士でいるんじゃないだろうかと思わせる出逢い方に惚れ惚れとしてしまったのでした。
「映画とはつまるところ、人と人が出逢うことだ」
とは蓮實重彦の至言ですが、いっぺんにこの映画が好きになってしまいました。
というわけで、結局最後まで見てしまい、「もう出る」と決意したにもかかわらず最後まで見た初めての映画となった、というわけです。
しかしながら、少年と少女の関係とか何の変哲もないものだったし、最後まで見た甲斐は少なかったのであのときの直感は正しかったのかも。
でも、少年の母親がすでに死んでいると知った黒人少年の戸惑いを捉えたショット。あの画のアングル、サイズ、影の落とし方はさすがエド・ラックマンと思いましたぞ。
これがどうも「人生で初めての映画」となったようです。そんなたいそうな話ではありません。以下は感想でも何でもなくただの日記と思って読んでください。
監督がトッド・ヘインズというだけで見に行ったので、どういう内容かはまったく知りませんでした。
すると、いきなりデビッド・ボウイの『スペース・オデッセイ』がかかったりするので、やはりこの監督のセンスの良さを感じずにはいられませんでした。が、肝心の内容が……
二つの時代を行ったり来たりするんですね。それがわかった時点で急激に熱が冷めました。私は時間軸をいじくる映画が好きじゃないんですよ。橋本忍脚本の名作の誉れ高い『切腹』も好きじゃないし。クリストファー・ノーランの『メメント』なんて言語道断だと思ってるし。そういえば『ダンケルク』も時間軸をいじってたっけ。
ああいう映画ってこちらの「頭脳」しか刺激してこないでしょ。たとえば『ゴッドファーザー』とか『仁義なき戦い』を見て頭脳が刺激されますか? ああいう真の名作は観客の「腹」を撃ちぬいてくるんですよ。それが最近は頭脳に来る映画が氾濫している。
監督とは旧知の仲のエド・ラックマンが撮っているとは思えない雑な映像にも興味がもてないというか、ああいう70年代B級映画風の画がほしいなら別のカメラマンと組めばいいのに。とか、ぜんぜん気持ちが映画に入っていかない。
時計を見るとまだ30分ちょっとしかたっていない。ここで決意しました。「出よう」と。
私は「もうこの映画から得るものは何もない」と確信できたら躊躇なく途中退出する人間です。「もったいない」とよく言われますが、私に言わせれば時間のほうがもったいない。料金は前金で払っていていつ出ようが変わらないんだし。
というわけで、ペットボトルを鞄に入れて出ようとしたんですが、そのとき、主役の少年が財布を盗まれたんですよね。
お、これはちょっとどうなるの? と、あとほんの少しだけ見てみようと思って座り直したのでした。
直後のシーンで探していた書店が見つかるも移転していて、移転先を黒人少年が教えてくれる。主人公は耳が聞こえないから黒人少年が何と言ったかわからず彼の後をつける。
この二人の出逢い方がよかったというか、ごく平凡な出逢い方なのに、なぜか死ぬまでこの二人は親友同士でいるんじゃないだろうかと思わせる出逢い方に惚れ惚れとしてしまったのでした。
「映画とはつまるところ、人と人が出逢うことだ」
とは蓮實重彦の至言ですが、いっぺんにこの映画が好きになってしまいました。
というわけで、結局最後まで見てしまい、「もう出る」と決意したにもかかわらず最後まで見た初めての映画となった、というわけです。
しかしながら、少年と少女の関係とか何の変哲もないものだったし、最後まで見た甲斐は少なかったのであのときの直感は正しかったのかも。
でも、少年の母親がすでに死んでいると知った黒人少年の戸惑いを捉えたショット。あの画のアングル、サイズ、影の落とし方はさすがエド・ラックマンと思いましたぞ。
コメント
コメント一覧 (3)
まず、過去パートがそれなりの長さがあるから、というのがひとつ目の理由でしょうか。『ワンダーストラック』はほんとに「行ったり来たり」って感じなので。
ただ、あのシリーズに関しては私はⅠだけで充分だと思います。「父と子の対比」はⅠですでに描かれてますから。Ⅱでもし「ヴィトーの最初の殺人」が描かれなかったらまったくの蛇足だったと思います。あれがあるからⅡは名作なんだと思いますね。
いくら何でも10分で見限ることはないです。20~30分くらいで「もうこの映画には何もなさそうだ」と思ったら、あまりにひどければその時点で出ますが、ちょっとでも引っ掛かりがあればもう20~30分待ちます。だから40~60分ぐらいが目安じゃないでしょうか。全体の3分の1から2分の1ですかね。
でもほんと私の場合、途中から面白くなった映画はまったくありません。今回も途中退出していても何の後悔もありませんでしたね。
私なんかは合わなさそうな映画でも最後まで観てしまうこともありますけどね。中盤以降で巻き返してくる作品ってのもありますから。まあでも肌に合わない作品に120分拘束されるのが辛いという気持ちもわかります。
ただ時間軸云々でいったらゴッドファーザー2はどうなるんですか?あれってマイケルの時代とヴィトの時代を行ったり来たりしていますが。
個人的にGF2はヴィト時代がなんだかあっさりしすぎていたなと思いました。
リトルイタリーのチンピラ親分一人殺して次に再びヴィト時代が描かれたときにはすでにもう地元の名士みたいになっていましたからね、成り上がるまでにもうワンクッションおいて欲しかった。
逆にあんまり人気がない3は好きです。というか3の低評価には納得がいきませんね。
私はあのラストがあって初めて完結した映画だと思うんですがどう思いますか?
って、なんか記事の話題から話がそれてしまいましたが、合わない映画は大体どのへんで切りますか?脚本の世界だと最初の10分は掴みとしてもっとも重要だそうですが実際は最初の10分じゃ判断不能な作品も多いと思います。
ゴッドファーザーだったら馬の生首シーンにすらたどりつけませんよね(笑)
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。