日馬富士が貴ノ岩をビール瓶で殴打し、頭蓋骨骨折などの重傷を負わせた事件はまだまだ記憶に新しいというか、いったい事の真相がどこにあるのか、日を追うごとに混沌としてきました。


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最初は、「ビール瓶で殴ったこと」を否定しなかった日馬富士。「その時点で謝罪会見は引退会見であるべきだった」ということを言う人もいました。私も同意見でした。いくら度が悪いといっても素手で制裁したのならともかく、ビール瓶で殴ったら下手したら死にますよ。ほとんど殺人未遂じゃないですか。別に日馬富士が横綱でなくたって品性の問題が浮上しないとおかしい。


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と思っていたら、貴ノ岩の師匠である貴乃花親方が、殴打事件から3日後に被害届を出しておきながら、協会関係者から電話があったときもそんな事件があったなんておくびにも出さなかったとか、当の貴ノ岩も大怪我を負いながら巡業に参加していたとか、よくわからない。

かと思えば、日馬富士も「ビール瓶で殴っていない」と言い出し、同席していた白鵬も「ビール瓶じゃなかった」と証言する。
しかも、日馬富士はビール瓶をつかもうとしたらすっぽ抜けたとか、貴ノ岩はアイスピックで応戦しようとしたから日馬富士の行為は正当防衛だ、という声も上がっているとか。


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私はまったく知りませんでしたが、この事件が起こった酒席というのが「モンゴル力士会」というものだったんですってね。

当事者二人ともモンゴル人なら同席していた証言者もモンゴル人ばかりということですが、現役時代に八百長を嫌いガチ相撲しか取らなかった貴乃花親方は、いくら同郷でも別の部屋のライバル力士と酒宴を共にするということ自体を嫌いっているとか、その貴乃花に影響を受けた貴ノ岩が同郷の大先輩に反旗を翻したのが原因じゃないかとか、いろいろ言われているようです。

ただ、以上のことはもしかしたら「フェイクニュース」かもしれません。「モンゴル人たちが神聖な日本の国技を汚した」とレイシストたちが火のないところに煙を立てているだけ、という可能性もあります。

この事件でいまのところ事実だと判明しているのは、日馬富士が貴ノ岩を殴打して全治2週間の重傷を負わせたこと、そしてこの二人が「モンゴル人同士」ということだけです。

別に私は日本人が関係していないからいいとか、そんなことを言っているのではありません。仮に「日本人同士」でも同じことを書いていると思います。

つまり、もし、モンゴル人横綱が日本人関取を殴っていたら、または、日本人横綱がモンゴル人関取を殴っていたらどうなっていたか、ということです。

いまだに「横綱の国籍・出自」にこだわる日本人がたくさんいるのですから、もし前者だったら「モンゴル人はやっぱりダメだ。すぐに辞めてしまえ!」と怒号の渦だったと思うんですよね。貴乃花親方の言動に矛盾点があっても、白鵬の証言があっても、そんなのなかったとばかりに世論は「引退せよ」の一点張りだった可能性が高い。


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そして後者の場合、つまりは稀勢の里が加害者側だったら、ということですが、いま以上に「真実はどこにあるのか」という議論だけが沸き起こって、「引退せよ」という声が掻き消されていた可能性が高い、と思うわけです。実際、モンゴルでは「日馬富士を引退させないで」という声が日増しに高まっているそうですし。

モンゴル力士会という特異な場で起きたから真相が藪の中みたいになってるわけですが、モンゴル人同士だったから、ナショナリズムやレイシズムに惑わされず、とりあえずみんなの言うことをちゃんと聞こう、そして真相をはっきりさせてほしいと、すぐ熱くなって我を忘れやすい日本人にしてはまぁまぁ冷静な態度で見つめていられるのではないでしょうか。だから「日本人同士」でも同じだというわけです。

まだまだ真相はわからないし、どういうふうに決着するのかはわかりませんが、ナショナリズムやレイシズムという感情的なものが入ってこないぶん、同国人同士のもめ事だったのは不幸中の幸いだったという思いは禁じえません。



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