第1話で素晴らしいロケットスタートを見せてくれた『ウチの夫は仕事ができない』。
どういうふうな深化を見せてくれるのかと思っていたら…

前回の記事
①まっとうで健康的な王道ドラマ!


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主人公のできない男・錦戸亮は相変わらずいい感じの情けない顔を見せてくれていました。

レイモンド・チャンドラーが不朽のキャラクター、フィリップ・マーロウに託したあの有名なセリフ、

「タフでなければ生きていけない。やさしくなければ生きている資格がない」

の後半部分を担ってくれています。

思えば、戦後の日本社会は「タフでなければ生きていけない」ばかりを尊重しすぎてきたきらいがあります。その結果、ブラック企業が跋扈する世の中に…。

だからこのドラマの錦戸亮はそんな世間の風潮に対するカウンターとして「やさしくなければ生きている資格がない」をこそ主張してくれるのだろうと思っていました。

いや、実際主張してるんですけどね。

産まれてくる赤ん坊のために「もう一度頑張らせてください!」とリーダーの佐藤隆太(好演!)に頭を下げるなど、彼はすでに「タフ」です。できない奴できない奴と言われ続けて7年間も辞めずに頑張っていたわけですしね。

だから、第1話でやさしいがゆえにできない奴の烙印を押されてしまう彼が愛おしくてたまらんかったんですが、今回の第2話ではそういう「やさしいがゆえに仕事ができない」という皮肉が何もなかったですよね。

最初、これが非常に残念だったんです。


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代わりに、錦戸の上司・壇蜜のことを男だと妻の松岡茉優が勘違いするという、一見どういう意味があるのかわからない展開もあったりで困惑しました。

でも、見て2日たってやっとわかりました。

この作品は「ジェンダー」もテーマなんですね。

空手をやっていた厳しくてめちゃ仕事のできる先輩と聞いてすぐ「男」と連想する松岡茉優は、「仕事ができる人=男」という固定観念をもっています。

壇蜜にしたところで、日頃のものの言い方とかかなり男勝りな感じですが、あれはもともとああいう人間なのではなく、「男勝りな女」というキャラを演じているのでしょう。

それはつまるところ、女を理由にリーダーを外された壇蜜自身が「仕事ができる人=男」という固定観念をもっていることを示唆しています。

ジェンダー=社会的な性差とは、男社会を否定する概念のはずなのに、女のほうがジェンダーに囚われている。



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錦戸亮は、そんな固定観念を最初からもちあわせてないので、壇蜜のことを心から尊敬しているようですし、仕事ができず叱られたことを平気で笑いながら話します。

松岡茉優はそんな錦戸に対してイライラを募らせますが、

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どうも異常にかわいいこの人こそ、主人公にとっての最大の敵役のような気がしてきました。

彼女が一番、「男は仕事ができなければならない」という宗教にはまっています。だから、夫をできる男にするには、みたいなハウツー本を昼間から寝そべって読んだり呑気なことができるし、生活のことが心配ならパートでもすればいいのに、「きょう派遣会社に電話したけどあんまりいい仕事ないみたい」と言うだけ。

松岡茉優は働く気がないし、自分自身ができない女であってもかまわないと思っているようです。

だからタイトルが『ボクは仕事ができない』ではなく、『ウチの夫は仕事ができない』なのでしょう。

これからどういう展開/転回を見せてくれるのか興味はまだまだ尽きません!

続きの記事
③タフとやさしさ
④主人公を甘やかしてはいけない
⑤堕落していく…
⑥久々のスマッシュヒット!
⑦ジェンダー論のさらなる発展!?
⑧善意で勝利した主人公、そして…