アナウンサー長谷川豊さんのブログが炎上してると話題になってますね。
「人工透析患者の8割~9割は自業自得だからそんな人たちは殺してしまえ」という内容。
東京に住んでいた頃、TOKYO MXの『バラ色ダンディ』が好きで親しみをもっていたので、このニュースはとても悲しかったですね。
そう言いたい気持ちはわからなくはないんですよ。医者の言うことを無視して暴飲暴食して挙句の果てに人工透析。そういう人のために大切な健康保険料が使われている。国を滅ぼす元凶だから殺してしまえ。
うん、わからなくはありません。
先天的に腎臓に異常があるとか、自業自得ではない形で人工透析をしている人もいます。私はリアルに一人だけ知っていますが、長谷川豊は別にそういう人まで殺すべきだ、保険を適用すべきでないとは言っていません。
でも、私はこの「自業自得」とか「怠け者」といった表現にどうしても違和感を禁じえないのです。確かに、医者の注意を無視して食べたいだけ食べるのは怠け者(というか愚か者)であり、自業自得でしょう。
でも、人間ってみんな怠け者だったり愚か者だったりしますよね。そうじゃないと言える人っていないでしょ? 人間は「必ず間違いを犯す」というふうにデフォルト設定されている生き物です。『ものぐさ精神分析」の岸田秀の言葉を借りれば「人間は本能が壊れている」から間違いを犯すというふうにデフォルトされてしまったのですね。
他の動物たちは暴飲暴食なんかしません。ライオンだって腹いっぱいなら目の前をシマウマやキリンが通っても知らん顔をします。
でも人間は違います。わかっちゃいるけどやめられない、なんて言葉がありますが、いくら人から言われても自分でこれはよくないとわかっていても、ついつい…となってしまう。
医者の言うことをすべてちゃんと聞けば2か月で数値が改善すると長谷川さんのブログには書いてありました。そういうふうにちゃんとできる、まじめできちっとした人も世の中にはいるのでしょう。
でもね、そういう「できる人」「能力の高い人」に合わせて制度設計するというのはよくないと思うんですよ。政治というのは、わかっちゃいるけどやめられない人を救うものでないといけない。
それに、長谷川さんの主張は現場の医師の主張に寄り添いすぎですよね。そりゃ言うことを無視した人間からすれば「あいつらはただの怠け者」「あんな奴らは死んでしまえばいい」となるのは当たり前です。しかし、それなら正反対に位置する患者の家族とか患者本人の声なども紹介してほしい。
などと思っていたら、思わぬところから長谷川さんに援護射撃がありました。
ブラックマヨネーズの吉田敬。
私は彼をツイッターでフォローしていたので、ニュースになる前にツイートを読み、反論する人たちに対する返信も読みました。
「壁を殴ったら怪我するとわかっている。でも殴って怪我した。そんな奴は自業自得だから…」みたいなことが書いてありました。
今日になってニュースになっており、さらに新しいツイートが投稿されていました。
「俺が医者の言うことを少しも聞かずに暴飲暴食して肝臓が悪くなって救急車で運ばれる。そこに先天的に肝臓の悪い子が運ばれてくる。薬はひとつしかない。ならその薬は俺じゃなくてその子に使うべきなのは当たり前」
みたいな内容だったはずです。
この発言も長谷川さんの主張と同じく、一瞬「その通りかも」と思わされるんですよね。
でもこれは詭弁なのです。問いの立て方が間違っているからです。「無意識の悪意」があるとさえ言えます。
人間は間違いを犯す生き物です。だから自業自得だろうがその人には責任がなかろうが、「同じ患者」のはずです。ブラマヨ吉田は「どちらが本当の患者か」という問いの立て方をしていますが、そこがすでに間違いだと思う。
どちらも患者です。
だから、本当の問いは「薬が足りない状況をなくすためにはどうすればいいか」でなければなりません。薬が足りない特異な状況を普通の状況として設定しているところに、このたとえ話の「無意識の悪意」を感じるのです。
今回の炎上問題で思い出すのは今年の初めからかまびすしかった「芸能人の不倫問題」ですね。
『5時に夢中!』のアンケートでは、「不倫は絶対許されないことだと思いますか?」という問いに対し、確か僅差でイエスが上回っていました。
でも、許されないことだとわかっていても好きなら会ってしまうだろうし、関係ももつだろうし、そりゃしないほうがいいに決まっているけど、不倫芸能人に対するバッシングを見ていると、「間違いを犯さないのが人間のデフォルト設定」で、間違う人間のほうがおかしい、という誤った思想を感じるのです。
いや「誤った」では語弊があります。「傲慢な思想」です。
だって、「自分は決して間違わないすぐれた存在だ」ということを前提しているからです。
「人間は必ず間違う」
そんな当たり前のことをみんなが頭の片隅に入れておくだけで、少しは世の中が住みよくなるんじゃないかと思う初秋の夜です。
「人工透析患者の8割~9割は自業自得だからそんな人たちは殺してしまえ」という内容。
東京に住んでいた頃、TOKYO MXの『バラ色ダンディ』が好きで親しみをもっていたので、このニュースはとても悲しかったですね。
そう言いたい気持ちはわからなくはないんですよ。医者の言うことを無視して暴飲暴食して挙句の果てに人工透析。そういう人のために大切な健康保険料が使われている。国を滅ぼす元凶だから殺してしまえ。
うん、わからなくはありません。
先天的に腎臓に異常があるとか、自業自得ではない形で人工透析をしている人もいます。私はリアルに一人だけ知っていますが、長谷川豊は別にそういう人まで殺すべきだ、保険を適用すべきでないとは言っていません。
でも、私はこの「自業自得」とか「怠け者」といった表現にどうしても違和感を禁じえないのです。確かに、医者の注意を無視して食べたいだけ食べるのは怠け者(というか愚か者)であり、自業自得でしょう。
でも、人間ってみんな怠け者だったり愚か者だったりしますよね。そうじゃないと言える人っていないでしょ? 人間は「必ず間違いを犯す」というふうにデフォルト設定されている生き物です。『ものぐさ精神分析」の岸田秀の言葉を借りれば「人間は本能が壊れている」から間違いを犯すというふうにデフォルトされてしまったのですね。
他の動物たちは暴飲暴食なんかしません。ライオンだって腹いっぱいなら目の前をシマウマやキリンが通っても知らん顔をします。
でも人間は違います。わかっちゃいるけどやめられない、なんて言葉がありますが、いくら人から言われても自分でこれはよくないとわかっていても、ついつい…となってしまう。
医者の言うことをすべてちゃんと聞けば2か月で数値が改善すると長谷川さんのブログには書いてありました。そういうふうにちゃんとできる、まじめできちっとした人も世の中にはいるのでしょう。
でもね、そういう「できる人」「能力の高い人」に合わせて制度設計するというのはよくないと思うんですよ。政治というのは、わかっちゃいるけどやめられない人を救うものでないといけない。
それに、長谷川さんの主張は現場の医師の主張に寄り添いすぎですよね。そりゃ言うことを無視した人間からすれば「あいつらはただの怠け者」「あんな奴らは死んでしまえばいい」となるのは当たり前です。しかし、それなら正反対に位置する患者の家族とか患者本人の声なども紹介してほしい。
などと思っていたら、思わぬところから長谷川さんに援護射撃がありました。
ブラックマヨネーズの吉田敬。
私は彼をツイッターでフォローしていたので、ニュースになる前にツイートを読み、反論する人たちに対する返信も読みました。
「壁を殴ったら怪我するとわかっている。でも殴って怪我した。そんな奴は自業自得だから…」みたいなことが書いてありました。
今日になってニュースになっており、さらに新しいツイートが投稿されていました。
「俺が医者の言うことを少しも聞かずに暴飲暴食して肝臓が悪くなって救急車で運ばれる。そこに先天的に肝臓の悪い子が運ばれてくる。薬はひとつしかない。ならその薬は俺じゃなくてその子に使うべきなのは当たり前」
みたいな内容だったはずです。
この発言も長谷川さんの主張と同じく、一瞬「その通りかも」と思わされるんですよね。
でもこれは詭弁なのです。問いの立て方が間違っているからです。「無意識の悪意」があるとさえ言えます。
人間は間違いを犯す生き物です。だから自業自得だろうがその人には責任がなかろうが、「同じ患者」のはずです。ブラマヨ吉田は「どちらが本当の患者か」という問いの立て方をしていますが、そこがすでに間違いだと思う。
どちらも患者です。
だから、本当の問いは「薬が足りない状況をなくすためにはどうすればいいか」でなければなりません。薬が足りない特異な状況を普通の状況として設定しているところに、このたとえ話の「無意識の悪意」を感じるのです。
今回の炎上問題で思い出すのは今年の初めからかまびすしかった「芸能人の不倫問題」ですね。
『5時に夢中!』のアンケートでは、「不倫は絶対許されないことだと思いますか?」という問いに対し、確か僅差でイエスが上回っていました。
でも、許されないことだとわかっていても好きなら会ってしまうだろうし、関係ももつだろうし、そりゃしないほうがいいに決まっているけど、不倫芸能人に対するバッシングを見ていると、「間違いを犯さないのが人間のデフォルト設定」で、間違う人間のほうがおかしい、という誤った思想を感じるのです。
いや「誤った」では語弊があります。「傲慢な思想」です。
だって、「自分は決して間違わないすぐれた存在だ」ということを前提しているからです。
「人間は必ず間違う」
そんな当たり前のことをみんなが頭の片隅に入れておくだけで、少しは世の中が住みよくなるんじゃないかと思う初秋の夜です。
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