前回で「資格をめぐる物語」だとわかった、『HOPE ~期待ゼロの新入社員~』ですが、昨日の第7話でそれがいよいよはっきりした感がありました。

前回までの記事
第1話(初回からボロ泣き!)
第2話(岡目八目がとりもつ自信喪失と自信過剰)
第3話(「善と善」の対立がドラマを豊かにする)
第4話(勝負に出たが勝者はいない)
第5話(瀬戸康史の切ないウソ)
第6話(「資格」をめぐる物語だった!)



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やはり15年前の事件が絡んできて、中島裕翔と同じ契約社員が、同じように企画を出しながら自分の名前では出せず、営業3課の企画として出したらそれが元で責任だけ負わされてクビにされた、と。

遠藤憲一課長は妻に、「俺にまた他人の人生に関わる資格はあるか」と問います。妻は、

「資格があるかなんて偉そうなこと言ってないでやりたいようにやったらいいじゃない」

と言います。

そうなんですよね。資格があるかどうかというのは非常に偉そうなことです。自分にその資格があるかと問うことは、つまるところ「資格」というものがあると思っているということです。

契約社員を正社員にする資格。
部下に大事な仕事を任せる資格。

そんなものは本当はありません。あるという幻想にサラリーマン全員が縛られているだけです。風間杜夫専務以下、すべての社員がその幻想に縛られています。

山本美月の資源2課の課長もそうですよね。桧山主任が山本美月にいろいろ仕事を任せるのが気に障ってしょうがない。課長は俺じゃないか。何で主任にすぎないおまえがあいつに仕事を任せるのか。あいつにはそんな仕事を任せられる資格などない! と。

でも、そのような資格など本当はないのです。あると思い込んでいるだけ。そして部下に対する、解雇や昇任や左遷、これをやらせる、あれはやらせないなどの「上司としての資格」の数、つまり「幻想」の数が地位を表すのが「会社組織」というものだと。会社組織というかタテ社会への絶妙なる批評になっています。

能力がないから認められないなら当たり前です。能力は幻想ではなく「事実」ですから。

前回の日記でもいいましたが、中島裕翔は将来を嘱望される棋士でしたが、ただ22歳未満という資格を失っただけで囲碁界から締め出されました。今度は高卒というただそれだけでせっかく入った会社から締め出されようとしています。能力はあるのに、いや、能力があるがゆえに「高卒のくせに」と白い目で見られる。何という不条理。

専業主婦らしき遠藤課長の妻はそこを見ぬいています。そんな幻想より己の気持ちのほうが大事ではないのか、と。

しかしながら、今回の第7話で気になったのは、山本美月と中村ゆり食品2課長の挿話ですね。


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山本美月は、前の会社でただ尊敬する上司にいろいろ教わろうとべったり貼りついていたら「不倫」だの「女を使ってる」だの噂を立てられて辞める羽目になった。だから今回は人と距離を置こうと。

中村ゆりは、何話か前にシングルマザーのために子どもの送り迎えがあるという伏線がありました。山本美月が代わりに迎えに行ったあの挿話は何のためだったのかと不思議でしたが、ようやく回収される気配です。

しかし妙です。

資格をめぐる物語に、なぜ彼女たち女の挿話が必要なのでしょう? 女にもバリバリ働く資格があるとかそういうことですか? でもそれってハナから女を差別してるみたいでいやですね。これからどういう展開を見せてくれるのか、不安と期待が入り混じります。

それと、この男とマギーがキックバックなど不正に関わっているらしいというのも、今後どう絡んでくるのか。


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宮川一朗太。相変わらずいい味出してますな。
でも、もし彼らの不正によって中島裕翔や人見くんの道が開ける、という展開は避けてもらいたいですね。敵失で得点というのはあまりうれしいものではありませんから。

と、ここまでは実は前置きでして、今回の第7話で一番印象的だったのは、妻に「やりたいようにやりなさい」と言われた遠藤課長が、中島裕翔に電話するシーンですね。


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「○○の仕事だけどな、明日の朝イチでやっとけよ」
「あ、はい」

というやりとりのあと、遠藤課長はちょっと間を置いて「しっかりやれよ」と言うんですが、この「しっかりやれよ」が素晴らしい!!!

しっかりやっても来年にはクビかもしれない。いや、でも俺の力で何とか残してやる。だからしっかりやれ。いや、でもやっぱり無理かもしれない。

そういう、うまく言葉にならない様々な想いがないまぜになった微妙な感情を遠藤憲一さんはうまくセリフに乗せて喋っていました。あの芝居を見ただけでも今日まで見続けてきた甲斐があったとさえ思います。

あの「しっかりやれよ」は、あのシーンがもつ意味とかいろんなことが理解できてないと演じられないと思います。理解できても演じられるとはかぎらない。

そういうめちゃ難しい芝居をどれだけテイクを重ねたかは知りませんが、めちゃくちゃうまくこなしていますね。さすが遠藤憲一! もうあんたが大将!!! 

あの芝居を引き出した監督さんの腕も超一流だと思います。

続き
第8話(結局「善と悪」の対立で終わるのか)
最終話(この物わかりのよさを断固拒否する!)



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