BSイレブンで再放送中の『機動戦士ガンダム』、俗にいう『ファーストガンダム』も全43話中、14話が終わりました。

この名作を見るのはおそらく30年ぶりぐらいなので細かいところを忘れていました。へぇー、こんな設定・展開だったっけ、と思うこともしばしば。

地球連邦軍とジオン公国が戦争していて、主人公アムロは連邦軍側の兵士、そして宿敵シャアはジオン軍の兵士でありながらジオンを牛耳るサビ家に対する復讐を狙っている。つまり、アムロもシャアも実は「打倒ザビ家」という同じ目的をもっている。それは生き別れになった兄妹シャアとセイラも同じで、敵と味方に分かれて戦っている者同士が同じ目的をもっているという、大きな枠組みの中心で「ねじれ」が生じている設定、というのはさすがに憶えていました。

しかし、子どもだった私は、どうしても主人公アムロも、最も魅力的なキャラであるシャアも、どちらもザビ家打倒を目論んでいるために、ジオン公国=悪、地球連邦軍=善、だとばかり思い込んでいたんですね。

今回の再見でそれが間違いだったと気づきました。

戦争なんだからどちらが善でどちらが悪とか関係ないと言ってしまえばそれまでですが、もともとジオンは地球連邦の一員というか、地球だけに棲めなくなった人類が宇宙都市をいくつか作って生活していて、アムロはサイド7の人間ですが、ジオンは月の裏側に位置するサイド3だったんですね。(もっと広大な宇宙戦争かと思っていたらご近所同士だったというのも意外)

だからこれはジオンの独立戦争なのです。

普通は、映画とかフィクションってだいたい支配する側の圧政に苦しむ民衆の独立戦争を支持することが多いじゃないですか。それがなぜこの『機動戦士ガンダム』では独立戦争を起こされた側の地球連邦側に主人公を置いているのか。そしてもう一人の主要人物というか、この人物こそ主人公といっても過言ではないシャアをなぜ私怨がもととはいえ独立戦争を仕掛けたジオンと対立する側に置いているのか。

これでは、この作品自体が「帝国主義」だと批判されてもしょうがないのでは? という思いで見てきましたが、どうやらそれは違うぞ、富野由悠季さんが仕掛けた「ファーストガンダムの政治学」はそんな単純なものではないことに気づきました。


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そもそも、私はアムロがガンダムの正式なパイロットではなく偶然そうなってしまったこと、また、ホワイトベースの乗組員たちも正規の乗組員が死傷してしまったために偶然ブライトが指揮を執り、他の少年少女たち(何と驚くべきことにブライトは19歳だとか!)がそれに続いていることを憶えていませんでした。

だから、先日の第14話を見て驚愕したんですよね。

マチルダも美人だからか「いい人」というイメージが強かったんですが、ブライトにものすごいことを言います。

「あなたは本来死刑なのよ」

なぜそんな自分に連邦軍の秘密兵器であるホワイトベースの指揮を任せたのかとブライトが問いただすと、「実験だった」という驚くべき回答が返ってきます。

「素人から学ぶべきことは多い。これまでのホワイトベースの戦いをすべてデータとして収集しコンピュータで解析してこれからの戦いに活用させてもらう」

というのが、マチルダを介した地球連邦軍最高司令官からの言葉でした。

なるほど!

ジオン公国はザビ家の独裁国家という「悪玉」みたいにナレーションで言われているけれど、地球連邦軍もなかなかの狸というか、人を人とも思わぬやり口をしてきたわけですな。だからサイド3の住人たちは彼らの圧政に耐えきれなくなり、独立戦争を仕掛けた、と。

もう完全にジオン=悪、地球連邦=善ではなくなってしまいました。というか、地球連邦のほうがよっぽど悪なのでは? 

だって、ブライトやアムロは嫌気が差したりしますが、ジオンの兵士たちって一枚岩ですもんね。
それに、サイド7から地球までホワイトベースに乗ってきた老人たちが反乱を起こす回がありましたが、彼らは一様に「地球で死にたい。故郷をこの目でもう一度見たい」と言っていました。地球連邦がむりやり彼らを宇宙都市サイド7に連行したのでしょう。連邦軍への不満が鬱積しているため、反乱を起こしたと推察されます。

とにかく、富野由悠季さんたち作者が『機動戦士ガンダム』に仕掛けた政治学はなかなか一筋縄ではいかないものが含まれているようです。

昔は、「地球連邦軍vsジオン軍」の物語だとばかり思い込んでいました。

それがいま見直してみると、確かに大枠はそれで間違いないとしても、興味を惹かれるのは、シャアとザビ家の対立とか、ザビ家の中の派閥争い、連邦軍のお偉方とブライトの対立、そのブライトに反感を抱くアムロといった感じで、ジオンと連邦軍それぞれの「内部の対立」のほうが主眼じゃないのか、とすら思います。

幼かった頃にはまったく気づきもしなかったことにこれからも気づいていくことでしょう。

どんな「新事実」が飛び出してくるのか。毎週日曜日が楽しみでしょうがありません。

続き
②シャアを利用するキシリアの狙いとは
③「戦後」を見据えるシャアの深謀遠慮