『カイジ』の福本伸行さん原作、『沈黙の艦隊』のかわぐちかいじさん作画による『告白<コンフェッション>』(講談社文庫)を読みました。(以下、ネタバレあります)

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「聞いてしまったあいつが悪いのだ…!!」

という不気味なモノローグで始まるこの物語は、登場人物が二人だけ、そしてまったく同じモノローグで幕を閉じます。

ここで問題なのは、「あいつ」とは誰で、この言葉の主は誰かということなんですが、最後のフレーズにおける「あいつ」が誰で発語している主が誰かは明白なんですが、最初のフレーズのほうは結末まで読んだいまでも、あいつが誰で主語が誰なのかははっきりとわかりませんね。
おそらく、最後とは真逆なんでしょうけど、もしかしたら最後と同じなのかもしれない。読む人の数だけ答えがあるように思います。

物語は、遭難した二人の男のうち大怪我をしたほうが、大学時代に同級生の女を殺したという告白をするのが発端なのですね。もう一人の元気なほうは驚愕しながらも見捨てることなどできるはずもなく、どうしようかと途方に暮れる。

ここで、私は「ははぁ、この話は殺人者の友人を見捨てるか否かという話なのだな」と予想したんですが、見事に裏切られました。

何と霧が晴れるとすぐ目の前に山荘がある! そこで暖を取りながら救助を待つことになります。

しかし、殺人者の男は、もう死ぬ直前だと思ったから告白したのであり、死なないとなるとさっきの告白はかなり不都合なことになってくる。聞いてしまったあいつが悪いのだ、死んでもらおう、殺してやる!

と、もう一人が心の中で推測するのですね。

ここからしばらく、推測の悪魔に憑りつかれます。俺を殺そうとしているのか、いや、そうではないのか、奴の心の中はどうなっているのかと。

ちょうど中盤で、読者にも「殺意」が明らかになり、今度はどうやって逃げるかが物語の主眼となります。

ここからの追う者と追われる者との腹の探り合いは『カイジ』の作者らしい、ロジカルな推測がベースになっていて読ませてくれます。

結局、追う者の罠にかかった追われる者があと一撃で殺されそうになる。ここで新たな「告白」が行われるのです。

実は、あの女を本当に殺したのは俺なのだと。おまえが首を絞めたあと、息を吹き返したあの女を俺が石で殴って殺したのだ、と。(なぜ殺したのかは、『アメリカの悲劇』というかそれを映画化した「陽のあたる場所』と同じと思ってもらえばいいです。あれをパクった『青春の蹉跌』でもいいですが)

というわけで、立場が逆転。

俺は殺してなかった! と偽殺人者が歓喜のあまり陶酔しているところを本当の殺人者が口封じのために殺してしまうという結末。お見事!

強烈なシチュエーションとまったく矛盾のない展開。物語の結構は堅牢で、少しの穴もないんですが、穴がないがゆえに、ちょっとした不満もあるんですよね。

何というか、もう二度と読む気が起こらないだろうな、というか。面白かったんですけど、あまりに完璧すぎてすべて憶えてしまったんですよね。

憶えたんならいいじゃないかと言われそうですけど、私はあまり好きじゃないんです。面白かったのは憶えてるけど細かい内容はあまり憶えてない、というほうが二度三度鑑賞するにはもってこいじゃないですか。

一度で憶えてしまって二度目以降を楽しめない作品の代表が『インファナル・アフェア』ですかね。あれも物語の結構が完璧すぎるほど完璧な映画でした。

楽しませてもらったのにこの程度のことで不満を言うのは筋違いかもしれませんが、私的にはそこがちょっと残念だったなぁ、と思いましたです。