本職は美術評論家らしいS・S・ヴァン・ダインの『僧正殺人事件』を読みました。
すごい名作、あの乱歩も大絶賛したと聞いていたので、かなり期待して読んだんですが…


51tFwX462nL__SY344_BO1,204,203,200_



















うーん、これのどこが名作なんでしょうか。

確かに、マザー・グースの童謡の内容をなぞって連続殺人が起こる「見立て殺人」というアイデアは面白いと思うんですけど、犯人がこういう遊び心満載の殺人に手を染めた動機に無理があると思うのは私だけでしょうか?

アイデアは面白いけれど、そのアイデアを活かそうとするあまり、人物の内面というか心理描写が疎かになってる気がします。登場人物のうち誰一人として好きになれなかったし。

ここ十数年で読んだ本のうち最もつまらなかった小説は、『金融腐蝕列島』とその続編『金融腐蝕列島 呪縛』なんですけど、あれも銀行業界や財界の内幕情報としての面白さはあったものの、肝腎要の人物描写がものすごくおざなりで、読んでて疲れるだけでした。

事件の謎を解く探偵ヴァンスが読む本として、数学や物理や哲学の本のタイトルがたくさん出てきますが、これはやはり作者ヴァン・ダインの好きな本なんでしょうか。それはいいんですけど、ああいう本ばかり読んでいたら人間の心理に疎くなるんじゃないのかなぁ、とこれは邪推ですかね。

実は、推理小説ってあんまり読んだことないんです。最後の最後だけに興味が集中する読書というのがどうも性に合わなくて。

逆に、犯人の側から描く、いわゆる倒叙型のミステリなんかは好きなんですが。もっと言えば、犯罪者たちの悪戦苦闘を描く犯罪小説は好きなんですよ。ジム・トンプスンとか、パトリシア・ハイスミスとか、ハドリー・チェイスとか。

ヴァン・ダイン。この『僧正殺人事件』が面白いと踏んで他のも2冊買っちゃってるんですが、もう読む気がなくなってしまいました。だってこんなつまらないのが一番の代表作らしいですから。

他に買ってある推理物は、ディクスン・カー(カーター・ディクスン)のが2冊。これにはまだ期待したいです。

しかし、ほんとこれのどこが名作なんだか…



このエントリーをはてなブックマークに追加