聳え立つ地平線

ありえないものを発見すること、それを写し撮ること、そしてきちんと見せること。

『男たちの旅路』①-③「猟銃」(デウス・エクス・マキーナのうまい使い方)

山田太一脚本、鶴田浩二主演による『男たちの旅路』第1部第3話「猟銃」。


o0259019514150396029

デウス・エクス・マキーナ
鶴田浩二がまた若者の胸を痛打する爽快な一編ですが、これ、デウス・エクス・マキーナを使ってるんですね。

デウス・エクス・マキーナというのは、ギリシア悲劇で非難の的だった「機械仕掛けの神」のこと。いろんな難題がある物語を、最後に突然現れた神様の一言で解決して終幕させる手法。これから派生して最後に突然現れた悪人を退治して一件落着というのもデウス・エクス・マキーナと言われます。いわばご都合主義の手法ですね。

『男たちの旅路』全体では、鶴田浩二演じる吉岡司令補という、若者が嫌いな主人公が変化する過程を描いています。
特にこの第1部ではそれがメインの葛藤を織り成している。第1話「非常階段」では甘ったれた自殺未遂者・桃井かおりを叱責し、第2話「路面電車」では万引き犯に肩入れすることがやさしさだと勘違いする水谷豊らを叱責して退職に追いやります。
第2部以降は若者にも理があり、大人たちや老人にも問題があるという主題になって鶴田浩二の変化のほうが主題になりますが、ここではまだ鶴田浩二が若者たちを変化させるのが主眼。

だから、ここでのデウス・エクス・マキーナは、水谷豊、森田健作、桃井かおりという若者たち3人を鶴田浩二が変化させるために終盤突然現れた猟銃強盗犯のことです。

彼ら強盗犯は、第2話で辞めてしまった若者たちをもう一度鶴田浩二のもとへ帰らせる役目を担っています。デウス・エクス・マキーナというのは、第1部全体を通してのことです。第1部を一気に収束させるための手。これが実にうまいというか、いままで何度も見てるのに、あれがデウス・エクス・マキーナとは気づきませんでした。


ファーストシーンで暗示にかける
冒頭で猟銃をぶっ放すシーンがあるからでしょうね。あくまでも「猟銃」一編だけに限れば、デウス・エクス・マキーナではない。でもシリーズ全体を見るとデウス・エクス・マキーナである。なるほど、禁じてと言われる手法もこういうふうにすればうまい手法に変わるのかと勉強になりました。

この第3話の眼目は、鶴田浩二と久我美子の30年間の恋愛ですよね。それを猟銃をぶっ放すシーンから始める。これはセオリーではない。鶴田浩二と久我美子の物語に関連する場面をファーストシーンにもってくるのがセオリー。たとえば、猟銃発砲の次の場面、久我美子が息子の森田健作の家を訪ねるところをファーストシーンにもってくるとか。もしこの話単独ならばそうしないといけない。

しかし、山田太一さんは猟銃をファーストシーンにもってきた。これはおそらく強盗犯がデウス・エクス・マキーナであることを悟られたくなかったからでしょう。この話はあくまでも強盗犯を捕まえる話なんですよ、と視聴者を暗示にかけるためのいわば詐術です。タイトルを「猟銃」にしていることからも明らかです。どう見ても鶴田浩二と久我美子の話なのに。それを通して若者たちの内面を激変させる話なのに、猟銃を最初から意識させておけば両方がうまく絡まった話に見えるだろうという計算。すべての詐術がダメなわけではない。使ったほうがいい詐術もある。嘘も方便。


山田太一さんのあの手この手
とはいえ、強盗犯が「おまえらどうせカネなんだろ? カネで動く奴が俺は好きだ。正義だ何だとかいう奴は嫌いでね」という場面はちょっと白けますよね。水谷豊たちと同じことを言うもんだから、鶴田浩二が彼らを倒すことで若者たちが改心することがわかってしまう。

しかし山田太一さんは工夫を怠らない。鶴田浩二が突っかかっていって撃たれ、それを見た他の警備士が「私にも吉岡さんと同じ誇りがある!」と言い、最終的に若者3人が強盗犯を捕まえる。
若者たちの無意識の発露に任せる。鶴田浩二はきっかけを作るだけ。


吉岡司令補の意地
「じゃあ、おまえはどういうのがほんとだと言うんだ。カネのためならほんとだと言い、人のためなら偽善だと言う。人間はそんな単純なものじゃない。そういうふうに高をくくっちゃいかん」

素晴らしいセリフですが、ここで問題なのは、鶴田浩二は水谷豊たちにこのセリフを言ったから、それを実践するために強盗犯に立ち向かっていったのか、ということです。

冒頭の猟銃乱射事件のあと、現場を見に来た鶴田浩二が若い警備士たちに言いますよね。

「我々は丸腰だ。犯人を見つけたからといって無理に立ち向かわないことだ」

これは警備員としての一般論であるのは明らかですが、とすると、やっぱり我らが吉岡司令補は水谷豊たちとのあれこれがなくても丸腰で立ち向かっていったんでしょうか。

私の解釈は否、です。だって、自分が立ち向かっていくことで他の者も全員殺されるかもしれないんだから行かないでしょう。彼一人なら立ち向かっていったかもしれませんが、7人もの命がかかっているときにあの吉岡司令補がそんな無茶なことをするはずがない。

突っかかっていくときの鶴田浩二は冷静さを完全に失っています。やはり久我美子との30年に及ぶプラトニックラブを否定されたことでかなり感情的になっていたのでしょう。常に冷静沈着だった吉岡司令補が初めて人間的な一面を見せる。警備員としての責任とか本分とかでなく、一人の男としての「意地」。

だから、犯人がデウス・エクス・マキーナであることは確かですが、機械仕掛けの神がメインプロットを解決する代わりに、メインプロットで生み出された激烈なエモーションが機械仕掛けの神を成敗してどちらも首尾よく解決される、という仕組みにもなっている。

実にうまい。完全に脱帽ですわ。




両親が心配な件3

次兄にできるだけ実家に帰ってやってほしいと言われたので、正月から2週間でまた実家にいます。

さて、今回はぎりぎり認知症とは診断されなかった父のことではなく、母のことです。

まず、父のリハビリがこれまでは同じ施設に週2回行っていたのを、別の施設に週1回ずつに変更になったことから。

昨日、帰ってくると、いつもならテレビの前に座っている父がいない。お試しで別のデイサービス施設に行っていると。これまでのところは午前中だけの半日プログラムでしたが、夕方までの全日らしく、大丈夫だろうかと思いながら犬の散歩に行き、帰ってきたら帰宅していました。

かなり疲れたというのは想定内ですが、左目の白目の部分が真っ赤。どうしたのかと聞いても要領をえない。母に聞いても知らないという。疲れたから充血しているだけかと思っていました。

それが昨日だいぶ早く寝て疲れが取れたはずなのに真っ赤な目は変わらない。ちょっと心配だということで昼から夫婦そろって眼科に出かけました。

帰ってきて、どうだったかと母に訊くと「それがよくわからないらしいの」と。え、医者でもわからない奇病!? と思ったら、わからないの主語は父らしい。「でもお母さんも一緒に医者の話聞いたんでしょ」というと、「私は待合で待ってた」と。

うーん、こないだ私と次兄がわざわざ神経内科に付き添ったのは何のためと思っているのでしょう。というか、私がついていけばよかったんですよね。たかだか眼科と思ったのが迂闊じゃった。とりあえず、もらってきた薬には「角膜の炎症、目の乾きを抑える」とある。

たぶん目はたいした病気ではないんでしょうが、問題は薬の効能を書いた紙ですよ。私がどういう薬か知りたいといっても「どこにもない」と。捨てたのと訊くと「捨てるわけがない」。でもゴミ箱をあさるとびりびりに破かれた効能書きが出てきました。

医者の言葉も聞かず、効能書きも捨てたのでは、いったい何のために点眼薬をさすのかわからないじゃないですか。それでは好くなったかどうかもわからない。

しかも、そもそも今日は神経内科の予約が入っていたらしく、完全に失念していたと。

自分のことなのにすべて母が悪いと言い募る父もどうかと思うけれども、母さえしっかりしてくれていたらとりあえず問題ないのに、最近はかなり判断力や記憶力が衰えているようで心配です。

父の目下の悩みは便秘。母は食べる量が少ないからだ、と言いますが、どうなんでしょう。下剤を飲んでいるようです。あまり薬には頼らないほうがいいと思いますが、昔から便秘とはまったく縁遠い生活だったので、ちょっと出ないだけで憂鬱きわまりないとか。まぁこれは健全ですね。

食はますます細くなり、酒の量が増えています。



欧陽菲菲「恋の追跡<ラブ・チェイス>」

欧陽菲菲を初めて聴いたのはもう20年ぐらい前でしょうか。

「雨の御堂筋」「ラヴ・イズ・オーヴァー」などが有名ですが、私が代表曲を選ぶなら断然「恋の追跡<ラブ・チェイス>」なんですね~。曲がノリノリなうえに歌詞もよく、歌い方がこれまたいい。

これを友人の結婚式の二次会で歌ってえらく盛り上がったことがまるで昨日のことのように思い出されます。




「恋の追跡<ラブ・チェイス>」
作詞:橋本淳 作曲:筒美京平

逃げるあなたを止めて
恋の終わりを止めて
何があなたを変えた
いまは捨てないで アアッ!

他の誰かに
よそ見しないで
恋は渡せないのよ

急ぐあなたを止めて
募る想いを止めて
私以外の人に
いまは生きないで アアッ!

恋のしずくを止めて
濡れたまつげを拭いて
誰があなたを変えた
ひざまずきたいわ アアッ!

望みどおりに
変えてほしいの
すべてあなたのものよ

つれないことはやめて
捨てたふりならやめて
憎めないのよ、いまは
すがりつきたいの アアッ!

他の誰かに
よそ見しないで
恋は渡せないのよ

急ぐあなたを止めて
募る想いを止めて
私以外の人に
いまは生きないで アアッ!


どうでしょう、この狂った歌。狂おしいほど愛してるという感じでしょうか。
何度も繰り返される「アアッ!」がいいんですよね。カラオケで歌うとここで異常にウケます。

一度試してみては?


エッセンシャル・ベスト 1200 欧陽菲菲
欧陽菲菲
ユニバーサル ミュージック
2018-03-21



ギャラリー
  • 宇宙開発と飢餓問題(両方大事の哲学)
  • 『メリー・ポピンズ・リターンズ』(ダンスシーンをもっとちゃんと見せて!)
  • 『幻の湖』(橋本忍が好きになった傑作!)
  • 『幻の湖』(橋本忍が好きになった傑作!)
  • 『幻の湖』(橋本忍が好きになった傑作!)
  • 『幻の湖』(橋本忍が好きになった傑作!)
最新コメント
お問い合わせ
お問い合わせは、こちらまでお願いします。
LINE読者登録QRコード
LINE読者登録QRコード