2019年11月02日

ドイツ文学者・池内紀さんの『ヒトラーの時代』を読みました。教えられるところ多でした。


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テーマは、サブタイトルにもあるように「ドイツ国民はなぜ独裁者に熱狂したのか」。

ヒトラーは「民主的に選ばれた政治家」であることはよく言われます。民主政と独裁政は親和性が高いとは内田樹先生もよく言うこと。

ただ、ナチスが取った戦略は大事なことはすべて国民投票で信を問う。のだけど、反対票を投じられないような仕組みになっているとか、ある日突然共産主義思想が違法になり共産党の議席が全部なくなるとか、ほとんどめちゃくちゃ。でも宣伝相ゲッベルスのやり口が巧みでナチス支持の輪を広げていく。

とはいえ、ナチスのやり方はおかしいと思っていたドイツ国民も多くいて、ある地方ではナチスがいくら勢力を伸ばしても中央党というリベラルな政党が常に一定数の票を集めていた、というなかなか驚くべき記述もありました。

しかし著者の本当に言いたいことは、

「なぜこんな凡庸きわまりない男が史上最悪の独裁者になれたのか。とんでもない手法を取ったとはいえ、多数派でありさえすれば安心できる大衆にこそ真の原因がある」

ということでしょう。

続けてこんなマンガを読みました。橋本ナオキという人の『会社員でぶどり』


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社畜を自認する鶏のでぶどりと、後輩で意識高い系のヒヨコのひよ君の物語。

でぶどりは意味のない会議や、とにかく会社にいることが大事だという部長に心の中で文句を言いながらも毎日終電まで残業し、俺はほんと社畜だなぁなどと自嘲しています。

それに対してひよ君は、さっさと仕事を終わらせて「もう帰るのか」という部長の命令を無視して毎日定時で帰ります。そして先輩のでぶどりに、

「被害者ヅラしてるだけじゃ何も変わりませんよ。いくら命令されたとはいえ残業したのは先輩の意思でしょ。いやな会社でこの先もずっと疲弊するつもりですか。僕は辞めますよ」

といってほんとに辞めてしまう。著者も東京のIT会社を1年半ほどで辞めたそうですが、でぶどりとひよ君は著者自身の心の中の葛藤だったのでしょう。辞めたいけど辞めていいのかと悩みながらも、まず辞めないことには前に進めないというもう一人の自分。

『会社員でぶどり』の一番のキーワードはひよ君が何度も言う「被害者ヅラ」

悪いのは会社である。何かあったら会社のせいにすればいい。

と思って従っているうちに自分を社畜だと笑う人間(鳥?)になってしまった。そうなる前に辞めた著者は偉いと思います。ひよ君のロジックには一点の曇りもないし。


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だから、ヒトラーをあそこまでのさばらせてしまったのは、会社が悪いと言いながら従っていたでぶどりのような大衆なのでしょう。加えて、でぶどりは「会社を辞めたら周りが何と言うか。親に何と言われるか」と自分の気持ちよりどう思われるかを優先している。それは多数派でいたいということ。少数派であることをおそれず自らの意思を貫いたひよ君はやはり偉い。


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この男をこれ以上のさばらせないためにも、ひよ君のように勇気ある行動を取らねばならない。実際にやっているのが山本太郎ですね。私は一票を投じて少額の寄付をしただけ。他に何かできることはないか。

そういえば、最近、瀬戸内寂聴の『97歳の人生相談』という本も読んだんですが、寂聴さんが何度も言うのが、

「青春は恋と革命です」

というフレーズ。世の中の不正と闘って変えていかねばというメッセージ。

大いに知恵と勇気をもらった最近の読書でした。(『でぶどり』はすでに第2巻が出ているらしいので、早く読みたい)



会社員でぶどり
橋本 ナオキ
産業編集センター
2019-03-13





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2019年10月31日

ガラタサライ戦はまだDAZNと契約してないので見れてませんが、内容よりも結果のほうがよっぽど重要だったので勝ててよかった。

そして、クラシコ延期を経た最下位レガネスとのホーム戦。サンティアゴ・ベルナベウのサポーターとは昨季から関係悪化の一途をたどっていて、今日も空席が目立っていたので心が痛みましたが、結果的に5-0の快勝。久しぶりの大拍手で終わって安堵、安堵の一戦でした。


ベンゼマ!
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やはりマン・オブ・ザ・マッチはベンゼマですよね。先制点もロドリゴからのパスを巧みなトラップでキープしてアザールにパス。アザールとマルセロがパス交換してる間にファーサイドまで逃げていってロドリゴの今季2点目をアシスト。

2点目もクロースへの絶妙なタイミングでのクロス。カウンターのチャンスでも後ろから上がってきたバルベルデにヘディングで軽く落としてビッグチャンスにつなげたり、守備でも奔走してたし、キレっキレ。

バルサが「メッシ依存症が悪化している」と言われていますが、レアルもベンゼマ依存症に陥っているのかもしれない。

と思ってましたが、今日の試合でそれも改善されるかもしれません。


ロドリゴ
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先制点はベンゼマが折り返してくると感じてすぐに前へ出て合わせるなど、ゴールへの嗅覚が素晴らしい。他にも右サイドをえぐって何度もクロスを上げるなど大活躍。消えてた時間もあったけど充分でしょう。

デビュー戦で90秒ほどでファインゴールを決めてホームのサポーターから絶大な支持を集めましたが、次の試合は招集外。

私はやっぱりあれがよかったと思います。「おまえはまだまだ何者でもない」というジダンからのメッセージというか、たぶんジダンはロドリゴがどれぐらい真面目に取り組む人間か見極めようとしたんじゃないでしょうか。あのとき2部の試合でゴールを決めたんでしょ。もし腐ってさんざんな出来だったら将来がないとか、あったとしても成長が遅いと思われていたかも。ジダンは「大事に育てていきたい」と言っていたけど、もう現時点でレギュラー。謙虚な姿勢が認められたようです。

逆に、昨季、彼と同じく華々しくデビューしながらすぐ重用されたヴィニシウスはいまだにシュートとクロスで悩んでいる。もう完全に立場逆転ですが、ヴィニシウスだって素質は素晴らしいのだから、ここから伸びていってほしいと切に願います。

終盤、セルヒオ・ラモスがボールを奪って最前線まで上がったシーンで、野口は「ロドリゴがあそこでラモスまでパスを通せたら……」って言ったましたが、ちょっと要求しすぎでは? まだ18歳なんだし、キャプテンが上がってファーサイドでフリーになってることが見えてるだけで充分だと思う。


アザール
アザールについては解説の野口が何度も「いまは打ってもいいのに」「消極的」と批判していましたが、まだまだチームに完全に馴染めてないし、少しでも勝利に貢献するためにバランにラストパスした気持ちはわかります。ドリブルのキレは戻りつつあるので、そのうちトップフォームに戻るんじゃないかと見ています。

トップフォームといえば……


ヨビッチ
開幕からずっと悩み続けていたヨビッチにもゴールが生まれてウハウハですね。

先発したマジョルカ戦では「いったいどこにいたの?」と言いたいくらい消えまくってましたが、今日はゴールの他にもオフサイドになった場面や、惜しくもポスト横に外れたシュートなど、体のキレが上がってきてるし、何よりチームメイトから信頼されパスが来るようになってる。何が原因かわかりませんが、うれしいですね。

もともとうまいヘディングシュートがバーに嫌われたり運がなかったですが、やっと決められたことでこれからベンゼマの代役として期待できるんじゃないでしょうか。


カゼミーロ
野口も驚いてましたが、イスコを入れるときに下げたのがカゼミーロじゃなかったのはちょっと理解不能。少しは休ませないと壊れてしまう。

次のベティス戦で休ませるつもりなのかな。まさかガラタサライ戦では休ませられないし。

今日もナイスタックルが何度もあって、2点目は彼のタックルが起点でした。休ませるときはバルベルデがアンカーなんですかね。モドリッチでもいいと思うけど。というか何でマルコス・ジョレンテ出しちゃったの?


PKのルール変更
3点目はセルヒオ・ラモスがのPKでしたが、最初は止められました。ただ「少なくとも片足はゴールライン上に載せてないといけない」というルール変更のおかげでやり直し。

野口が言っていたように、ルール自体がどうかという感じですが、あれでイエローというのはいくら何でもやりすぎ。キッカーにも制限を設けるべきという意見には大賛成。でも、やっぱりルールで縛るのはあまりよくないですね。いままでのほうがいい。

VARだってそうでしょ。明らかな誤審を検証するために導入されたはずなのに、センチメートル単位のオフサイドにまだこだわるようになってしまった。そりゃ少しでも出てたらオフサイドというのがルールですけど、そこまで厳格にしたらゲームの面白さが殺されてしまう。

ところで、2回目のPKはベンゼマに蹴らせてくれてよかったですが、1回目はアザールに蹴らせてあげてほしかったな。もしあそこで1点取っていたら、終盤のシュートチャンスで積極的に打てていたかもしれない。

とにかく、勝って兜の緒を締めよ。気を引き締めてガラタサライとの第2戦に臨んでほしいと思います。




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2019年10月28日

MBSの映像’19『えん罪漂流記 ~元看護助手が失った16年~』をとても興味深く見ました。といっても批判的にね。番組では「検察が悪い」と主張していましたが、私はそうは思いません。というか、この番組スタッフは検察と同じ体質だと思いました。


事件の経緯
2003年5月に滋賀県近江市の病院である男性が死亡。人工呼吸器が外れており、警察はアラーム音が鳴ったのに看護師の誰も気づかず死なせてしまった業務上過失致死で捜査を始めました。

そこで参考人として聴取された西山美香さんが人工呼吸器を外したと「自白」をしてしまいます。優秀な兄を二人もち、自身は発達障害を抱えている。強烈なコンプレックスをもって生きてきたためにやさしい言葉に弱い。取り調べの若い刑事がそういう境涯に理解を示してくれたので西山さんは彼に恋をしてしまう。そして彼の望むとおりに「ストーリー」を作り上げてしまった。


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ここはどうしようもなく哀しいですね。発達障害の人は急な環境の変化にも弱いらしく、突然取り調べというストレス過多な状況に置かれたことも影響したであろうと医師の推測。

とはいえ、警察が自白を強要したわけではないし、逮捕前の自白。しかも業務上過失致死として捜査していたのに突然「殺人の自白」を得たためにその線で捜査するようになったのはごく普通の流れのように思います。

アラーム音を聞いた人がいないために二転三転する西山さんの証言に合うように、アラーム音を1分間だけ消すボタンの存在を無理やり探し出し、おそらく「それを押したんだろう」と誘導尋問的に問いただしたのでしょう。西山さんは気に入られたい一心で肯定してしまった。


検察の取り調べは?
よくわからないのは、検察の取り調べがどのようなものだったのか少しも伝えてくれないことですね。西山さんは警察には自分からウソの自白をし、裁判ではウソだったと主張したとはいうけれど、番組が「悪の本丸」だと断定する検察の取り調べがどういうものだったか、西山さんがそこで何をしゃべったかを少しも伝えてくれません。


検察が負けを認める
しかもですよ、放送直前の今月23日に、それまで「有罪立証をしてみせる」と息巻いていた検察がそれを断念する、さらに1回だけの公判で結審してほしいと弁護団に通知したそうで、今年度中にも大津地裁で開かれる再審で無罪確定することになったとか。よかった。

よかったけれど、検察が自ら非を認めたにもかかわらず、元東京地検特捜部の弁護士・若狭勝さんまで出して検察の非をあげつらうのは納得いかない。そりゃ放送日までに取材し直す時間がないのはわかります。でも、最終的に検察が自分から非を認めたのに番組全体の主張が「検察が悪い」というのはいかがなものか。


本当に悪いのは……
若狭さんが言っていたように、検察が当初は有罪立証すると息巻いていたのは「最高裁で確定した判決がころころ変わるようではいけないと考えている」のでしょう。でも、そのこと自体が悪いことだとは思えません。最終的に判決が変わることを容認したわけだし。

やっぱり、本当に悪いのは責任逃れのために「人工呼吸器が外れていた」と証言し、最終的に「外れていたかどうかわからない」とウソをつきとおした「A看護師」じゃないんですか? 1時間おきに痰吸入せねばならないのにそれを怠った。死亡を確認したあと人工呼吸器を外したのはどう考えてもAさんですよね? ならAさんに取材しないといけないのでは? 取材をお願いしてもたぶん拒絶されたんでしょうけど、Y刑事なる人物の取材拒否の場面は映すのにA看護師に拒否されたことは伝えない。


裁判所も
AS20171008002542_commL

それと裁判所も悪いですよね。

逮捕前と逮捕前日、そしてその後と、アラーム音に関する西山さんの供述がころころ変わっているのにそこに何の疑問も抱かなかった。

さらに、発達障害の西山さんは数をカウントすることが難しい。頭の中で60数えてアラーム音を消すボタンを押していたというのはかなり怪しいと簡単にわかるはず。

さらに、死んだ人のカリウム(でしたよね)の量が不自然で、自然死であることが濃厚。そういうことも裁判では証言があったはずなのに、自白だけを信用した罪は重い。


先入観と固定観念
A看護師と裁判官への取材がない、取材拒否の映像やナレーションすらないのは非常に不満です。

この番組は「冤罪事件ではいつでも検察が悪い」という先入観と固定観念に惑わされすぎていると思う。

それは西山さんのウソの自白に沿って「ストーリー」を捏造した警察と検察、さらにそれを信用した裁判所と何が違うというのでしょうか。

検察が負けを認めたのに「検察は判決がころころ変わることを嫌う」そういう体質が悪いという主旨の番組を放送する。放送日程が決まっているから。もともとそういう企画意図(ストーリー)だったから。

同じ穴のムジナじゃないですか。





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