2016年11月13日

内田樹先生と社民党党首・福島みずほの対談本『意地悪化する日本』を読んでいたら、松田優作が飛び出してきました。




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脳裏にふっとこの顔が浮かんだんですよね。

松田優作が死んですぐぐらいに出版された『優作トーク』というインタビュー本があるんですが、ずっと忘れていたその一節を思い出したんです。

「女がいないと生きていけない。それはセックスとかそういうことじゃなくて、女から言われないと学べないことがあるから。やっぱり異性からの一言ってのはきつい」

みたいなことを言ってたんですね。

で、今回読んだ本でも…


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これは別に女がどうだとかいう本じゃなくて、日本に行く末を案じるというか、要は安倍某をいかに退陣に追い込むかということが語られています。

この中で、珍しく内田樹先生が離婚したときのことを話していて、奥さんにこう言われたそうです。

「あなたはとっても立派な人だと思う。でも、男としてはもう飽きた」

内田樹といえば、「昨日の自分と今日の自分は別の人間」ということをいろんな本で書いていて、昔からそういう思想の人なんだと思ってましたが、実はこの離婚のときまで「人間たる者、常に首尾一貫していなければならない」という観念に取りつかれていたらしいんですね。ウソみたいですが。

で、この奥さんの一言で、「あ、首尾一貫なんかしてるから男としてつまんないんだ」と、それまでの首尾一貫妄想でがんじがらめになっていた自分自身を解放したと。

つまりは松田優作も内田樹も「女から学んだ」というお話。


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女から学ぶといえば、先日WOWOWで増村保造特集があり、数年ぶりに『妻は告白する』を見ました。

めちゃくちゃ簡単に要約すると、愛する男のために人殺しに手を染めた女と、その女の気持ちが理解できず彼女を自殺に追い込んでしまう男の葛藤の物語です。

男は他の女から言われます。

「あの人はあなたのことが好きだったのよ。だから殺したのよ。それをわかってあげられずに…。あの人が人殺しならあなたも人殺しだわ」

私は男だからずっと男のほうに感情移入して見てるわけですが、いつもこのラストで足元をすくわれるんですね。あ、女ってそうなんだ、と。

でも、この映画は原作者も脚本家も監督もみんな男なんです。
じゃあ、これは女の真実じゃなくて「女はわからない」という恐怖からくる「男の妄想」にすぎないのでしょうか。

女性の皆さんのご意見を伺いたいです。 


妻は告白する
若尾文子
2015-09-21


 

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2016年11月11日

おととしの秋に公開されながら見逃していた『小野寺の弟・小野寺の姉』をWOWOWで見て、その素晴らしさにというか、そのあまりのグロテスクさに胸が熱くなりました。


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原作小説は未読ですが、映画化の前に舞台化されてまして、ある劇作家さんが激賞してらっしゃったのでとても気になっていたんです。でも、2年前のいまごろは映画断ちをしていたもんでね。行きたくても行けないというか書きまくってましたから。

今回やっと見ることができまして(ビデオですけど)いやぁ~、やはり西田征史さんはいい映画をお作りになるなぁと感激しました。

何!? 西田征史を知らない?? 

あの号泣必至の『ガチ☆ボーイ』を書いた人ですよ。傑作というほかない『半分の月がのぼる空』を書いた人ですよ。えー、ほんとに知らないの?

まぁ、私もさして知らんのですが、それはともかく、33歳の弟と40歳の姉の同居生活を描くこの映画がまた実に素晴らしいのです。

何だか「たいしていい映画とは思えない」とか「ごくフツーの出来栄え」とか「たわいもない話」とかって言ってる人がいるようですが、


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ファック!!!!
まったくわかっちゃいない!!!

何が素晴らしいといって、まずヒロインの絵本作家・山本美月が素晴らしい。


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 調香師の弟に質問するために待ち伏せしてる。昌ちゃん帽がかわいい。

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 できあがった絵本を読んでもらって見せる笑顔がかわいい。

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 弟とデートする楽しげな笑顔がかわいい。

って、おまえは山本美月が好きなだけなのか!! ってお叱りを受けそうですが、さにあらず! ここからが本題なのです。

何故に両親がいないのかわかりませんが、一軒家で二人暮らしの小野寺姉弟のウロウロを描くこの映画を駆動させているのは、姉が弟を思いやり、弟が姉を思いやる、互いが互いを思いやっているという、普通に考えたら何も葛藤が生まれなそうな状況なのですね。

しかし、それこそが大いなる葛藤を生じさせてしまうというところがこの映画の非凡なところというか、これはもうギリシア悲劇の世界ですよね。

「良かれと思って取った行動が最悪の事態を生む」のを悲劇の最良の形とアリストテレスは看破しましたが、44年前にそれを見事に映画でやってのけたのが『ゴッドファーザー』でした。

いやいや、いくら何でもこの『小野寺の弟・小野寺の姉』が『ゴッドファーザー』ほどの格調を具えているとは言えないでしょう、という声が聞こえてきそうですが、はたしてそうでしょうか。

最近、WOWOW製作の『コールドケース』というドラマを見ました。うんざりしました。カルト教団とか虐待とかそういうので話を組むのって安易な手法だと思うんです。悪の設定が簡単だから。と、これはある高名な脚本家が言っていたことですがね。というか叱られたのです。「おまえはそういうのなしで話を組めないのか」と。

だからこの『小野寺の弟・小野寺の姉』には、してやられたというか、あぁ自分はこういうのが書けなかったからダメだったんだなと打ちのめされるというか、とにかく…感動したわけです。

弟は、美人の恋人(麻生久美子)がいたんですが、「姉をおいて自分だけ幸せになっていいのか」と躊躇してるうちに別れる羽目になった。姉はそんな弟を見かねてたまたま出会った山本美月とくっつけようと奮闘する。でも弟はまた同じことの繰り返しになるんじゃないかと及び腰。でも、これではいけないと思いきって告白したら「もう遅い」と泣きながら断られるんですね。

これだけならまぁ「よくある話」で片づけてもいいんですけど、やはりこの『小野寺の弟・小野寺の姉』が何ともグロテスクなのは片桐はいりのキャスティングというか、いやそうではなくて、片桐はいりという女優が必要なほど「姉の顔があまりに醜い」という設定にあるんですよね。弟のせいで前歯が一本黒くなってしまって、それでよけいに「姉をおいて自分だけ幸せになっていいのか」という気持ちに拍車がかかるとはいえ、根底には姉が女として何の魅力もない、というところにある。

これはもう神様のいたずらとしか言えないというか、どうしようもありません。努力してどうなるもんでもなし。弟の恋路はもうちょっと早く告白していたらよかったと言えるし、基本的にイケメンだからこれからまた素敵な出逢いもあるでしょう。そして次は今回の教訓を生かしてうまくいきそうです。しかし姉のほうは…

ほのぼのとしたテイストですが、かなりグロテスクだと思います。


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だって、山本美月と片桐はいりが同じ種の同じ性の生き物とは思えませんもの。

いや冗談ではなく、本当に。

人は親を選ぶことはできません。同様に顔を選ぶこともできません。

あ、そうか。この映画は根底に「顔」という枷を設定しているからホームドラマなのに親が出てこないんですね。なるほど。

しかし、その顔がねぇ。。。

さっき、弟のほうは幸せになるチャンスが充分あるみたいなこと書きましたが、姉の顔があれでは、しかも、歯を怪我させた責任が弟にあるとなっては、この姉弟はもしかしたら二人とも一生幸せになれないかもしれません。

その理由が「顔」。
本人には何の責任もありません。誰が悪いわけでもありません。誰も責められない。誰かを責めても自分がみじめになるだけです。

そういうほとんど暴力としか言いようのない理不尽に耐える姉とその弟を描いたこの映画を、その理不尽さゆえにこそ傑作と言いたい。

虐待や殺人なしでも「暴力」を描くことができる。
ことさらな設定を用いなくとも「運命」を描くことができる。

脱帽です。


小野寺の弟・小野寺の姉 通常版 [Blu-ray]
向井理
ポニーキャニオン
2015-02-27


 

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2016年11月08日

よく、「政治的に正しい正論よりも、政治的に正しくない極論のほうが好ましい」とかいう言い方があるじゃないですか。

私もまったく同感で、できるだけ正論よりも極論を心掛けてこのブログを書いてるんですが、先月からBSジャパンで始まった『スパイ大作戦』の再放送を見ていて、そうはいっても政治的に正しい=ポリティカル・コレクトネスが大事なこともあるんだな、と思ったんです。



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『スパイ大作戦』に出てくるメインキャラクターで唯一黒人のバーニー。
彼はコンピュータやメカに以上に強い「知力」の人なんですね。

では、体力というか「腕力」は誰かというと、


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白人のウィリー。

この二人の人種がもし逆だったら、つまり、知性あふれる白人と腕力の黒人だったら……『スパイ大作戦』という娯楽活劇の面白さは少しも揺るぎませんが、果たして製作から50年たったいまでも再放送されていただろうか、と考えてしまったんですね。

最近CSで見た『不知火検校』を見て、 さらにその思いを強くしました。


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『不知火検校』は、勝新太郎が最大の当たり役・座頭市を演じる前に出演した映画で、同じ盲目の男が主人公です。

この男はかなり悪辣なんですね。めくらゆえに蔑まれ虐げられる。そこを逆手にとってかなり悪辣なことをしてのし上がっていくわけです。そこらへんはなかなかのピカレスク・ロマンというか、私はこういうの大好きなんですが、あまり当時の(そしていまでも)一般大衆の支持は得られなかったようです。

いや、結構ヒットしたそうですよ。評価も上々だったようです。

でも、同じ永田雅一製作、犬塚稔脚本で、ほんの2年後に『座頭市物語』が作られたのはなぜなのか。

同じ盲目だし座頭市も結構悪辣な奴ではありますが、不知火検校ほどじゃないし、義理人情に篤い男として描かれています。

やはり、ポリティカリー・コレクトネスに欠けるとの判断だったんじゃないでしょうか。『不知火検校』は確かにヒットもしたし評価も上々だったが、ああいうのは長く続かない。ここはやはりもっと大衆受けする役柄に替えたほうがいいんじゃないか、という判断が働いたであろうことは想像に難くありません。実際、『座頭市』シリーズは大映のドル箱になりました。

だから、『スパイ大作戦』ももし白人と黒人が逆だったら「差別的だ」ということになって歴史から葬り去られていた可能性があります。 

政治的に正しいことが功を奏することもあるのか、と。(というか、世の中ってそういうもんなんですかね、やっぱり。世間はきれいごとが大好きですから)

極論ばかりが能じゃない。
たまには青臭い正論も語ろうじゃないか。と思った次第です。 


不知火檢校 [DVD]
勝新太郎
角川エンタテインメント
2009-09-25


 

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