聳え立つ地平線

ありえないものを発見すること、それを写し撮ること、そしてきちんと見せること。

『龍三と七人の子分たち』(昭和と平成の対決!)

北野武監督最新作『龍三と七人の子分たち』がやたらめったら面白かったです。

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この映画はやはり「世代間抗争」ですよね。悪い奴らが悪い奴らを懲らしめるわけだから勧善懲悪ではないし、昔気質のヤクザがいま自分がヤクザだという自覚もなしに弱い者いじめしている新興ヤクザを懲らしめる。

昔はよかった、なんてよく言いますし私自身もそう思いますけど、北野監督はもっとそういう思いが強いんじゃないでしょうか。

この映画に出てくる悪役たち(しかし主人公も悪人のはずですが、さて「悪」とは何でしょうか)の悪辣さは自分たちが悪人だと自覚してないところにあります。

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ま、龍三たちにも自覚がないと言えばないんですけどね。「俺は殺しが5つで傷害が2つで~」とか気楽に言い合う場面では、およそ自分たちが悪いことをしたという自覚などないように見えます。

しかしながら、彼らは同じヤクザを殺してたんですよね。堅気の人間を傷つけたわけではなかった。ところが、新興ヤクザどもは拳銃はもってるわ、平気で人殺すわ、弱い者たちから金巻き上げるわ、まさにやりたい放題。なのに、「俺たちはヤクザじゃない。ちゃんとした堅気の会社です」と堂々と言えてしまう面の皮の厚さがどこまでも憎々しい。

結局、この映画は、かつての東映任侠映画と同じ構図なんですよね。「義理だの人情だのそんなものは過去の遺物だ」とばかりにやりたい放題する同業者を鶴田浩二や高倉健がぶった斬る!!! 愉快痛快。

だから、この映画は勧善懲悪ではないなんて言いましたけど、やっぱり勧善懲悪なんですね。その「善」なる者もまた悪人にすぎないというところが肝でして。クリント・イーストウッドの『許されざる者』も同じでしょう。己を許されざる者だと自覚しているイーストウッドと、自覚せずに正義の執行者と自認しているジーン・ハックマンの対決。悪が悪を成敗する。そこにはかつての東映任侠映画と同様、徒労と虚しさしか残りません。

しかし、この『龍三と七人の子分たち』は同じ図式で同じことを語りながら、それを喜劇として提示したところが素晴らしいと思います。

ラスト、新興ヤクザどもをやっつけた組長・藤竜也に若頭・近藤正臣が「次は俺が組長だな」と言うと、「バカ野郎、出てくるころにはみんな死んでるよ!」という愉快痛快なセリフが実に新しい。笑いですべてを締めくくりながら、映画館が明るくなり帰途につくころには、「嗚呼、あの素敵な人たちはもうすぐ死ぬんでしまうんだ。弱い者から金を巻き上げる悪人どもを懲らしめてくれる人たちがいなくなるんだ」という妙な哀しさに包まれる。

東映任侠映画では主人公が感じていた徒労と虚しさを、この映画では主人公たちが感じずに観客にだけ感じさせるんですね。そこが同じ悪が悪を成敗するヤクザ映画でありながら喜劇として提示した『龍三と七人の子分たち』の新しさだと思います。

昭和と平成の対決。
それは当初、龍三たちと新興ヤクザの対決であったかのように見えて、実は新興ヤクザもほとんどは昭和生まれ。

真の昭和と平成の対決は、60年代東映任侠映画と21世紀たけし映画とのガチバトルだったのだな、と気づいたところで、カット、カット!



『海街diary』(現代映画を象徴するビニール傘)

是枝裕和監督の最新作にして、綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずが姉妹を演じる話題作『海街diary』を見てきました。


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いい映画でした。正直申しまして、是枝監督の映画っていままで1本たりとも好きになったことがなかったんで寝ちゃうんじゃないかと思いましたが、素晴らしかったですね。

女にだらしない父親をもった四姉妹が、父親が「ダメだけどやさしい人」だったのか、それとも「やさしいけどダメな人」だったのか、どちらだったのか考え、結論に至る物語なんですが、女優がみな素晴らしいですね。もともといい女優さんたちなんですけど、是枝監督の演技指導がいいのか、それぞれこれまでのキャリア最高といえる芝居を見せてくれます。

しかし、そういうことは私にとってはどうでもいいことです。この映画の素晴らしさについて語るくらいなら、四の五の言わずにもう一度見ればよろしい。私がこだわりたいのはもっと別の細部なのです。

後半の中盤くらいでしょうか、綾瀬はるかが母親役の風吹ジュンと家の近くの墓地まで一緒に歩いていく場面があります。雨が降っていて傘を差していくのですが、ここで綾瀬はるかはビニール傘を差すんですね。このビニール傘に私は徹底的にこだわりたい。

「雨が降るから傘を差すのではない。傘を撮りたいから雨を降らせるのだ」

とは蓮實重彦氏の名言ですが、この場面での雨は見事です。というか、人工的に降らせてるというより実際に降ってるときに撮ったんじゃないでしょうか。いい感じに降ってるけれど、あそこまで小さな雨粒は人工的に作ることは不可能ではないかと。
だから、是枝監督が「傘を撮りたいから雨を降らせた」のではないとは思います。

しかし、ここでなぜ主役の綾瀬はるかは安物のビニール傘を差すのでしょうか。
(↓こういうコンビニなんかで売ってるやつです)
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風吹ジュンはきれいな水色の折り畳み傘を差します。彼女は母親とはいえ同居しているわけではないので、雨模様だからと鞄に入れておいた傘なのでしょう。よそ行きのきれいな傘です。対して綾瀬はるかはその家の住人だから、しかも一緒に行く相手が母親という身近な人だから、さらに目的地がすぐ近くだから安物のビニール傘を選んだ、という物語的必然としては理解できるのですが、作り手である是枝監督がなぜあの場面で綾瀬はるかにビニール傘をもたせたのか、私は理解できかねるのです。

蓮實氏の傘についての至言は、ヒッチコックの名作『海外特派員』を指して言われたものでした。


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『海外特派員』のあの有名な傘の場面。
ここで、ヒッチコックはまさに傘を撮るために雨を降らせているのですが、見事なまでにすべて真っ黒な傘です。モノクロだから全部黒に見えるだけかもしれませんが、現場でどういう色かは問題ではなかったはずです。観客の目に「すべて真っ黒な傘」が見える必要があった。白い傘や柄物や薄い黒は一切なく、すべて等しく真っ黒に映る傘である必要があった。

物語的には、この場面では老若男女いろんな人がいるはずだから白い傘や柄物などいろんな傘があっていいはずです。しかし究極の審美主義者ヒッチコックはそれを許さなかった。リアリズムなどくそくらえ! すべて真っ黒な傘が蠢くほうがよっぽど美しいではないか、と。

『海街diary』では、そういう審美性がないのですね。ないからダメだと言っているのではないのです。いまという時代は、ヒッチコック全盛の時代なら嗤われたであろう、「くそリアリズム」の時代なのだと痛感するだけなのです。

ヒッチコック全盛期とは映画全盛期のことです。あの頃なら、主役の役者に安物のビニール傘などもたせなかったでしょう。あそこで高価な傘をもっていくのもちょっと不自然ですが、ただ、周りの景色や綾瀬はるかの美しさとビニール傘はどうしても釣り合わないのです。だからごく普通の美の基準から考えてかつての映画界なら主役にあんな傘はもたせなかったでしょう。

でも、是枝監督はもたせたのですね。それは、上述したように、綾瀬はるかが演じる女性の「内面」を考えた場合、あの傘が「自然」であろうという考え方だったのでしょう。

昔なら、外面からくる「不自然だけど美しい」を選んだはずが、いまは、内面からくる「美しくないけど自然」を選ぶ時代なのだなと、クラシック映画が大好きな私はため息をつかざるをえないというだけのことなのです。

それは裏返せば、「美しいけど不自然」を嫌う風潮でもあるのかなとも思います。

「不自然だけど美しい」か「美しいけど不自然」かの間で揺れるこの映画が、「やさしいけどダメな父親」か「ダメだけどやさしい父親」かをめぐる物語を語っていることを考えると、複雑だけれど何だか楽しくなってくるのも、また事実なのでした。



リーガ第13節 エイバル0-2レアル(復調の兆し?…いやいや)

クラシコで大敗したレアル・マドリードが格下とはいえ勝ち点差4のエイバルのホームに乗り込んでやっとこさ勝ってきました。

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モドリッチのショートコーナーをハメスが戻してそこからダイレクトで上げたクロスにベイルがヘディングで見事に決めた直後の場面です。

何か「やったぜ!!」というより、「あー、ホッとしたよ…」みたいな表情ですね、みんな。

そりゃ、まだ1部でプレーするのが今季で2季目というクラブを相手に、前半終了間際まで得点できなかったんですからね。

クラシコで大敗したので、直後のシャフタール戦からトリプルボランチに戻したようですが、どうもそこがぎこちない。エイバルのまずい攻撃に助けられました。あれがもっと強いチームだったら負けてましたよ。

救いは、PKとはいえクリスティアーノ・ロナウドに久々のゴールが生まれたことですかね。しかしそれまでミスしすぎ。でも得点したからここから復調してくれるのでは?

わからないのは、典型的10番のハメスをウイングのポジションで使っていること。少しも持ち味が活かされてないじゃないですか。やっぱり彼はトップ下。同じメンバーでやるとしても、4-3-3じゃなくて4-3-1-2でやるべきではないかな。

ベンゼマは大変なことになってるみたいですが、どうなんでしょう。かぎりなく黒に近いみたい。もし実刑なら選手生命終わりでしょうね。

しかし、今日の試合で調整のために終盤に投入するくらいならクラシコでそれをやってほしかった。私もベンゼマ先発を希望してましたけど、あんなに絶不調とは思わなかったんでね。一番そばにいる監督がなぜ気づかなかったのか。

モドリッチは最後までよく走りましたよね。見ててもかなり疲れてる感じでしたが。しかしそれならルカス・バスケス投入時にハメスじゃなくてモドリッチと替えてあげてほしかったな。それじゃ守備が崩れる? じゃあ先にカゼミーロを入れてからにすればいいのでは? 何か采配にいちいちムカついてしまうんですよ。

とにもかくにも勝ち点3。とりあえず追撃態勢に入れる感じでしょうか。

巷では、CL決勝はバルサとバイエルン、とか盛り上がってるようですけど、そんな簡単にいくかな。レアルだって去年のいまごろはそう言われてたんですよ。史上初の連覇か、とかって。それが年明けから失速。ピークがあまりに早く来すぎたのでした。

いまのバルサもそうじゃないとは誰にも言えないでしょう。



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